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第一章
第2話 隣人さんの家に居候する。
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そして、来てしまった。
三笠さんの部屋!
僕だって、行くつもりはなかった。やはり色々とおかしい気がして、こっそりアパートから出ようとしたのだ。
しかし、隣の部屋の前を通り過ぎようとしたその時——。
『玄関、こっちだよ』
さっきの窓から、三笠さんに呼び止められた。
気の弱い僕は、流されるまま部屋に入った——。
けれど、入って後悔だ。
部屋の中は、ザ・ゴミの山!
「へへ。俺、片付け苦手でさ」
「いや、これ片付けのレベルじゃないですよ……どこをどう歩くんですか」
足の踏み場もないとは、こういうことを言うのだろう。
ぱっと見の外見は清潔そうに見えるのに、意外だ。そして、その着ている服や身体は綺麗なのだろうか。聞きたいが、初対面なので我慢我慢。
「部屋貸したげるからさ、片付けお願い」
「いやぁ……」
「行くところ無いんでしょ?」
「そうですけど」
非常に悩ましい。僕が毎日ここを掃除しなければならないのかと思うと、野宿の方がマシな気もする。
答えに渋っていると、琥太郎が思い出したように言った。
「あ、ご飯作ってあるよ」
「ご飯……ですか?」
こんなグチャグチャな部屋でご飯。料理も心配でしょうがない。
三笠さんが、小さな机の上にあるビールの空き缶の山を手で払い退けた。同時に、空き缶の山は全て畳の上に散らかった。
それを避けながら、三笠さんは机の上に二人分の大きな皿とスプーンを置いた。
「どうぞ」
「いやぁ、僕は……」
見た目は普通のチャーハン。しかし、周りの環境がそれを食べたらダメだと物語っている。出来れば遠慮願いたいところだ。
渋っていたら、三笠さんは何やら勘違いし始めた。
「ごめんごめん。飲み物が無かったね」
「いや、そうじゃなくて」
「お水で良い?」
「は、はい」
冷蔵庫からペットボトルの水を出してきた三笠さん。期待の眼差しで見つめてきた。食べろということだろう。
「い、頂きます」
「どうぞ」
腹痛覚悟で、僕はチャーハンを一口食べた。
「ん……ウマッ!」
「でしょ? 俺、母子家庭だったからさ。ご飯だけは自信あるんだよね」
「片付けが出来れば、完璧ですね。あ……」
つい、本音が出てしまった。
しかし、隣人さんは気にした様子もなく平然と言った。
「そうなんだよね。だから、このアパートにしたんだ」
「アパート選びと、何か関係が?」
「綺麗な部屋を借りたらさ、後から使う人が可哀想でしょ? シミだらけにしそうだし」
「なるほど」
気を遣うところが違う気もするが、確かにこの後に住みたいとは思わない。しかし、このオンボロアパートなら良いのか、と突っ込んで良いだろうか。
「どう? 三食飯付き」
「うーん……」
確かにこのクオリティのご飯が毎日食べられるなら嬉しい。家賃もかからないし。衛生面は僕が何とかすれば良いだけ。
「分かりました。宜しくお願いします」
「やった」
素直に喜ぶ三笠さんが可愛い。
そして、自分が名乗っていないことに気付き、慌てて名乗る。
「あ、僕。桐原 智って言います」
「うん、知ってる」
「え?」
「同じ大学でしょ? 俺、三年だから」
「そうだったんですね。全然知りませんでした」
同じ大学だから声をかけてくれたのか。納得したら、妙にホッとした。
「気軽に琥太郎って呼んで良いからね」
「それは畏れ多いですよ。三笠先輩」
気軽に名前を呼んで良いなんて言われても、上級生相手に呼べるはずもない。
「まあ良いや。食べよ」
「は、はい」
促されるまま食べ進める。
「ちなみに、このお皿……洗ってますよね?」
「どうだったかなぁ」
「……え」
「冗談冗談。さっき洗ったから大丈夫」
「さっきですか……」
その前はいつ? と聞くのは、やめておこう。
何はともあれ、こうして僕は、日々この部屋を片付けることを条件に、三笠先輩の部屋に居候させてもらうことが決定した。
三笠さんの部屋!
僕だって、行くつもりはなかった。やはり色々とおかしい気がして、こっそりアパートから出ようとしたのだ。
しかし、隣の部屋の前を通り過ぎようとしたその時——。
『玄関、こっちだよ』
さっきの窓から、三笠さんに呼び止められた。
気の弱い僕は、流されるまま部屋に入った——。
けれど、入って後悔だ。
部屋の中は、ザ・ゴミの山!
「へへ。俺、片付け苦手でさ」
「いや、これ片付けのレベルじゃないですよ……どこをどう歩くんですか」
足の踏み場もないとは、こういうことを言うのだろう。
ぱっと見の外見は清潔そうに見えるのに、意外だ。そして、その着ている服や身体は綺麗なのだろうか。聞きたいが、初対面なので我慢我慢。
「部屋貸したげるからさ、片付けお願い」
「いやぁ……」
「行くところ無いんでしょ?」
「そうですけど」
非常に悩ましい。僕が毎日ここを掃除しなければならないのかと思うと、野宿の方がマシな気もする。
答えに渋っていると、琥太郎が思い出したように言った。
「あ、ご飯作ってあるよ」
「ご飯……ですか?」
こんなグチャグチャな部屋でご飯。料理も心配でしょうがない。
三笠さんが、小さな机の上にあるビールの空き缶の山を手で払い退けた。同時に、空き缶の山は全て畳の上に散らかった。
それを避けながら、三笠さんは机の上に二人分の大きな皿とスプーンを置いた。
「どうぞ」
「いやぁ、僕は……」
見た目は普通のチャーハン。しかし、周りの環境がそれを食べたらダメだと物語っている。出来れば遠慮願いたいところだ。
渋っていたら、三笠さんは何やら勘違いし始めた。
「ごめんごめん。飲み物が無かったね」
「いや、そうじゃなくて」
「お水で良い?」
「は、はい」
冷蔵庫からペットボトルの水を出してきた三笠さん。期待の眼差しで見つめてきた。食べろということだろう。
「い、頂きます」
「どうぞ」
腹痛覚悟で、僕はチャーハンを一口食べた。
「ん……ウマッ!」
「でしょ? 俺、母子家庭だったからさ。ご飯だけは自信あるんだよね」
「片付けが出来れば、完璧ですね。あ……」
つい、本音が出てしまった。
しかし、隣人さんは気にした様子もなく平然と言った。
「そうなんだよね。だから、このアパートにしたんだ」
「アパート選びと、何か関係が?」
「綺麗な部屋を借りたらさ、後から使う人が可哀想でしょ? シミだらけにしそうだし」
「なるほど」
気を遣うところが違う気もするが、確かにこの後に住みたいとは思わない。しかし、このオンボロアパートなら良いのか、と突っ込んで良いだろうか。
「どう? 三食飯付き」
「うーん……」
確かにこのクオリティのご飯が毎日食べられるなら嬉しい。家賃もかからないし。衛生面は僕が何とかすれば良いだけ。
「分かりました。宜しくお願いします」
「やった」
素直に喜ぶ三笠さんが可愛い。
そして、自分が名乗っていないことに気付き、慌てて名乗る。
「あ、僕。桐原 智って言います」
「うん、知ってる」
「え?」
「同じ大学でしょ? 俺、三年だから」
「そうだったんですね。全然知りませんでした」
同じ大学だから声をかけてくれたのか。納得したら、妙にホッとした。
「気軽に琥太郎って呼んで良いからね」
「それは畏れ多いですよ。三笠先輩」
気軽に名前を呼んで良いなんて言われても、上級生相手に呼べるはずもない。
「まあ良いや。食べよ」
「は、はい」
促されるまま食べ進める。
「ちなみに、このお皿……洗ってますよね?」
「どうだったかなぁ」
「……え」
「冗談冗談。さっき洗ったから大丈夫」
「さっきですか……」
その前はいつ? と聞くのは、やめておこう。
何はともあれ、こうして僕は、日々この部屋を片付けることを条件に、三笠先輩の部屋に居候させてもらうことが決定した。
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