陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵

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第二章

第21話 人前でキスは恥ずかしいよ

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「葉山君、おはよー」
「蓮君、今日も格好良い!」
「こっち向いて、葉山くん!」

 教室に入れば、いつものようにアイドルばりな挨拶をされる蓮。蓮も爽やかな笑顔で返す。

 俺は、いつもついで。あまり顔も見てもらえないのだが……。

「佐倉君もおは……よ?」
「誰?」
「転校生、こんな顔だったっけ?」

 クラスメイトらが、蓮ではなく俺に注目し始めた。前髪フィルターがないので、その光景に圧倒されて声が出ない。

 蓮の後ろに隠れれば、蓮が困った顔で皆に向けて言った。

「僕の彼氏を困らせないでくれるかな?」

 その一言で、皆が一瞬固まった。
 そして、全員が一斉に声をあげた。

「「「「「えー!」」」」」
「え、本当にあの佐倉君?」
「マジで?」
「うわ、イケメン!」
「格好良いっていうか、可愛い系だよね」
「うんうん、あたしより可愛い」
「羨ましいな、このヤロー」

 教室内を飛び交う言葉が、全て悪口に聞こえる。非難されているような気分に陥る。

 逃げ出したい気持ちになっていると、担任の先生が海斗を引き連れ、教室内に入ってきた。

「皆、席着けー。出欠とるぞ」

 そう言って、先生が教壇の前に立った。

「転入生のはら 海斗かいと君だ。みんな仲良くするように」
「宜しゅう頼んます。気軽に海斗君って呼んでかまへんで」

 海斗がウィンクをサービスすれば、女子達が色めき立った。

「えーと、席は後ろに準備して……」
「あ、先生。おれ、晴翔の横がええんやけど」
「晴翔?」

 苗字じゃないので、先生もすぐにピンと来なかったらしい。暫し考えた後に、分かったようだ。

「ああ、佐倉か。お前ら修学旅行で知り合ってたんだったな。じゃあ、佐倉の隣……」

 先生が俺を二度見した。

「佐倉……?」

 驚いた様子の先生を直視出来なくて、俯き加減に小さく返事した。

「はい」

 先生は、驚いたまま隣の男子生徒に指示を出した。

「あー、そこ席変わってあげてくれないか?」
「えー、ぼく佐倉君の横が良い」
「は?」

(お前、俺の横になった時、『マジハズレ引いたんだけど。誰か変わってよ』って言ってなかったか?)

 チラリと彼の方を見れば、頬を赤く染めてウィンクされた。背筋がゾッとした。

「ほらほら、転入生には優しくしなきゃだろ? 変わってやれ」

 先生がもう一度言えば、隣の彼は、渋々一番後ろの席に移動した。

「はぁい」
「堪忍な」

 海斗も笑顔で軽く謝罪してから、俺の横の席に座った。

「改めて宜しゅうな。てか、ここ来た途端、めっちゃ殺気感じんねやけど。気のせいやろか?」
「殺気? 海斗君、そんなの分かるの?」

 俺も飛行機の中で感じたが、あれから分からないので気のせいだったのだろう。

 海斗は身震いしながら言った。

「なんか、背中がゾクゾクってすんねん」
「背中?」

 海斗の後ろを見れば、後ろの席で蓮がアルカイックスマイルを浮かべていた。

 いや、普通に怖いんだけど。

「はい。じゃあ、このまま授業始めるぞ」
 
 先生が言えば、皆が教科書とノートを取り出した。

◇◇◇◇

 昼休憩。

 いつものように、三崎と山田とお弁当を食べようとすれば、これまたいつものように蓮も混じってきた。そして、今日は海斗も。

 三崎が、落ち着かない様子で言った。

「晴翔。お前、オレ達とつるんでて大丈夫?」
「え?」
「だって……なぁ、山田?」
「うん。だって、晴翔。どう見てもそっちのグループだろ」
「そっち?」

 山田が手で見えない線を描いた。

 俺と蓮、海斗。三崎と山田の二つに分かれた為、俺も見えない線を描きながら言った。

「いやいやいや、どう見てもこうだろ」

 蓮と海斗の前に見えない線を引く。

「まぁ、晴翔が良いなら良いけど」

 三崎が言えば、山田も後ろを一瞥して言った。

「てか、見た? アイツらの悔しそうな顔」
「見た見た。蓮だけじゃなくて、海斗君にもランチ断られて、間抜け面だったよな」

 いつも俺達三人を小馬鹿にしてくる陽キャメンバー。俺もその顔を見てスッキリだ。

 そう思って言えば、山田が呆れたように言った。

「いやいや、一番は晴翔。お前だと思うよ」
「俺?」
「お前。ただでさえゲイだと思われてんのに、その顔だぜ? 狙われんだろ」
「え、晴翔ってゲイなん?」

 海斗が興味津々に聞いてきた。それに対し、蓮がドヤ顔で言った。

「僕と付き合ってるんだよ。ね、晴翔」
「マジで?」
「う、うん」

 照れながら返事をすれば、海斗が残念そうに言った。

「なんや。相手おるんかいな。おれが貰おう思うたのにな」
「え!?」
「冗談やって。別れたら、おれんとこいや。めっちゃ可愛がったんで」

 それは、冗談なのだろうか。
 そして、蓮が敵対心を燃やし始めた。

「安心して。僕らが別れることは一生ないから」

 普通に嬉しい。“一生”だなんて、言われてみたかった。

 感極まっている中、二人はまだ話を続けている。

「そんなん分からんやん。お前、愛重そうやし。束縛酷かったら嫌われんで」
「ご心配、どうもありがとう」
「あ、せや。演劇、おれも参加することになってん」

 急に話が変わって、一瞬蓮の額に薄っすら青筋が浮かんだ。

「そうなんだ。もう役は埋まってるから裏方かな?」
 
 蓮が嫌味っぽい言い方をしたが、気にした素振りもなく、海斗は言った。

「隣の国の王子様や」
「「「隣の国の王子様?」」」

 はて、隣の国のお姫様に王子様が取られるのは知っているが、隣の国の王子様なんて出てきただろうか?

「王子様が隣の国のお姫様と結婚して、人魚姫は泡になって消えるんやろ? メリーバッドエンド、可哀想やん」
「まぁ、可哀想だけど……隣の国の王子様なんて出てきたっけ?」
「せやから、クズな王子様に変わって、おれが幸せにしたろかなって」
「クズ……」

 蓮の額に完全に青筋が浮かんでいる。

「脚本担当の女の子に頼んで、原作をちょちょいっと変えさせてもろうてん」
「そ、そうなんだ」

 休憩時間の度に、海斗は女子らに声をかけられていたので、その時だろうか。転校初日に凄い行動力だと感心していたら、海斗は嬉しそうに言った。

「ついでに、最後キスシーンもあんねん」
「「は?」」
「ま、フリやけどな」

 それを聞いてホッとする。たとえ演技と言えど、蓮以外の男子とキスをする気にはなれない。

「フリでも嫌だ。僕、ちょっと抗議してくる」

 蓮が立ち上がれば、海斗が呆れたように言った。

「心の狭いやっちゃなぁ。演技くらいで何嫉妬しとんねん。せやから嫌われんねやで」
「か、海斗君。俺、嫌ってなんて……」

 蓮は、再び椅子に座り直した。

「まぁ、たかが演劇だからね。晴翔、帰ったら沢山チューしようね」
「蓮……」

 恥ずかし過ぎる。人前でチューなんて。

「晴翔、またアイス一緒に食べよな。間接キッスや」
「海斗君まで……」
「晴翔、ディープなのしようね。アイスよりもとろとろにしてあげるよ」

 もう俺の顔は、ゆでだこのように真っ赤だ。

 三崎と山田は、俺達の関係自体まだ演技だと思っているので、蓮の言動にポカンとしている。そろそろ本当の事を言った方が良いかもしれない。

 そんなこんなで、昼休憩は、蓮と海斗が張り合って終わった。
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