陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵

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第二章

第25話 恋人のフリがややこしいことに。

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※晴翔視点に戻ります※

 何だかんだ月日は流れ、文化祭当日。

 俺のクラスは劇なので、昼過ぎまでは出番はない。つまりは、自由時間。

「蓮、どこから行く?」
「うーん。食べるのは、もうちょっと後が良いよね。展示でも見る?」

 デート感覚で蓮と行き先を決めていたら、どこからともなく海斗の声が聞こえてきた。

「はぁぁぁぁるぅぅぅぅとぉぉぉお!!」

 その声量に驚いていたら、海斗に腕を掴まれ、そのまま引っ張られるようにして俺は連れて行かれた。

「え、何々!?」
「お前、晴翔を何処へ……」

 人が多いこともあって、蓮と俺は離れ離れ。まぁ、学校内なのですぐに見つかるだろうけど。相手は、学校一の有名人の蓮だし。

 そして、俺は海斗に連れられ、トイレの中へ。しかも個室。中の鍵もしっかりと閉められた。

「えっと、海斗君?」

 すごい剣幕で見下ろしてくる海斗に圧倒される。

「さすがにトイレに二人は、色々とヤバいんじゃ……?」

 身の危険を感じつつ、鍵をそっと開けようと手を伸ばせば、海斗に両手をガシッと掴まれた。ビクッと肩が震える。

「おれは、何てアホやったんや」
「え?」
「全然気付かんと、かんにんな」
「何が?」

 話が全く見えない。
 俺は宥めるように海斗に言った。

「せめて外で話そ。ね?」
「外はヤバいやろ」
「いや、ここの方がヤバいかと」
「だって、みんなには内緒なんやろ?」
「内緒?」

 俺に秘密ごとなんて無いと思うのだが……。

「アイツと付き合ってるの“フリ”なんやろ? 三崎らから聞いてん」
「あー」

 三崎と山田に本当の事を伝えるのを忘れていた。

「あの、それなんだけど……」
「ゲイなのは本当なん?」
「うーん……」

 改めて聞かれたら、蓮以外の人間を恋愛対象として見たことがないので分からない。でも、蓮が男なのだから、俺は男が好きなのだろう。

「うん。そうかな」
「良かった」

 良いことなのか……?

 疑問に思いながらも、海斗は話しを続ける。

「せやから、おれの告白受けられへんかってんな。けど、もう大丈夫やで! 付き合ってるフリしながらでエエから、おれと仲ようしよや」
「いや、最初はフリだったけど……」
「ええねん、ええねん。おれの事好いてくれとんねやったら問題ないって。それにしても、演技とは思えへんかったわ。特にアイツの嫉妬っぷりは、エゲツないな」
「ははは……」

 って、苦笑してる場合じゃない。

「海斗君、ちゃんと話聞いて!」
「聞いてんで。おれの事好きなんやろ?」
「海斗君の事は好きだけど、それは……」
「ほら、両想いや。それでエエやん。おれが晴翔を一生幸せにしたるからな」

 ダメだ。全然話を聞いてくれない。

 そして、海斗の顔が近付いてきているのは気のせいか?

「晴翔、好きやで」

 色っぽい声で言われ、非常に焦る。ある意味ドキドキが止まらない。

 誤解は後から解くにして、とにかく、この場から逃げ出さなければ。こんなところに二人でいるのを誰かに見られたら一大事だ。しかも、蓮以外とキスなんて……。

 幸い、このトイレは、文化祭中は使用禁止になっている。中々人は入って来ない。それでも切羽詰まった人は来るので、早いに越したことはない。

 ただ、外に出ようにも鍵の前に海斗がいる。俺の力じゃ海斗を押し退けるなんて無理な話だ。とにかく鍵さえ開けられれば——。

 俺は海斗に抱きついた。

「晴翔」

 感動している海斗には悪いが、この隙に鍵を……。

(よし、開いた!)

 そのまま更に海斗に重心を寄せた。

「わッ、何で鍵開いてんねん」

 バランスを崩した海斗は、そのまま扉の向こうへと尻もちを付いた。もちろん海斗に抱きついている俺も一緒に。

「晴翔、大丈夫か? 怪我ない?」
「う、うん。ごめんね」

 俺を一身に抱き留めた海斗に謝りつつも、そっと離れた。

「海斗君、本当にごめんなさい。俺、蓮を裏切れないから!」

 それだけ言って、俺は足早に男子トイレから出て行った——。

「律儀なやっちゃな。フリやから浮気とかにならんのに……」

◇◇◇◇

 蓮を探して歩いていたら、先に三崎と山田に出会った。

「よお、晴翔。もうここ回った?」
「あれ? 蓮は?」

 呑気な二人に憤りを感じる。

 海斗に誤った情報……ではないけれど、とにかく俺と蓮が“付き合っているフリ”のやや古い情報を与えてしまったから。だから、トイレに連れ込まれてややこしいことに……。

 二人共、全く悪くはないのだけれど。

「二人共、ちょっと来て」
「「……?」」

 真剣に言えば、二人は目を見合わせてから、俺についてきた——。

「ここでいっか」

 俺は、出店が並ぶ裏手に、ちょこんとしゃがみ込んだ。手招きすれば、二人も真似してしゃがみ込み、三人で額を突き合わせた。

「実はさ……」
「「実は?」」
「本当に付き合うことになったんだよ。俺ら」

 言ってしまった。とうとう友人にゲイだとバレた。馬鹿にされるだろうか。馬鹿にされるんだろうな。

 すると、三崎は驚き、山田は悔しそうに言った。

「え、マジ? もう?」
「晴翔、そっちもいけたんだ。ならオレと抜き合いしても良かったじゃん!」
「いや、山田は無理かな」
「何でだよ」

 悔しがる山田の肩をポンッと三崎が叩きながら言った。

「やっぱ顔じゃね? 海斗と山田じゃ雲泥の差があるもんな。な、晴翔」
「うんうん……って、何で海斗君?」
「だって海斗と付き合い始めたんだろ?」

 それを聞いて、話が噛み合っていなかったことに気が付いた。

「違う違う。俺が付き合ってんのは、蓮だって」
「だから、それはフリだろ?」

 俺が静かに首を横に振ると、三崎と山田の顔が青ざめた。

「「マジで?」」
「マジ」
「いつから? 最初はフリだったんだろ?」
「うん。修学旅行で正式に告られた」
「え、修学旅行……」

 三崎が固まった。そして、俺の肩を掴んで、焦ったように言った。

「てことはさ、オレが晴翔の浴衣脱がせてた時は、既に付き合ってたのか?」
「実は……うん」
「マジかぁ、それなら納得かも」
 
 山田も、顔を青くさせながら言った。

「てかさ、オレ……海斗に余計なこと言ったんじゃ」
「山田か。犯人は」
「だって、海斗の奴、本気でお前のこと好きそうだったし。それに、お前ゲイじゃないと思ってたから、大丈夫かなって」
「全然大丈夫じゃねーよ。海斗君の中で、多分俺ら両想いになってるし」

 山田が責任を感じたのか、一番に立ち上がった。

「オレ、本当のこと、海斗に伝えてくる!」

 三崎も立ち上がって言った。

「あれが演技じゃないなら、最悪オレら殺されるって。てか、晴翔が一番危ない!」
「殺されはしないだろうけど、ちょっと怖いとこあるよな。そこまで怒んなくてもって思うけど、それがまた嬉しかったりするし」

 軽く愚痴のようなノロケのようなことを言っていると、背後から声がした。

「何が怖いの?」
「だから、嫉妬した時の顔。いつものようにニコニコしてるんだけど、目が笑ってないって言うか……それに」
「「晴翔、晴翔」」

 三崎と山田が小声で俺を呼んだ。

「ん?」

 背後の気配に気付き、そっと後ろを振り向いた。

「はは、蓮。いたんだ」
「うん。今のってさ、僕の……」

 蓮が言い切る前に、俺は近くにあったポスターを指さして言った。

「お化け屋敷、三組のお化け屋敷がめっちゃ怖いんだって。な、三崎?」
「お、おう。そうなんだよ。さっきからみんなが言ってて……な、山田?」
「え、オレ?」

 元はと言えばお前だろ。と、目で訴えれば、山田は苦笑しながら言った。

「はは、そうそう。あー、オレ。海斗探して一緒に行って来よっかなぁ」
「じゃあ、オレも」

 山田と三崎は、逃げるように海斗を探しに行った。と、思う。そうであって欲しい。

「晴翔、アイツ何だって?」
「アイツ?」

 分かっているが、惚けてみる。

「原 海斗。また告白でもされた?」
「まさか」

 嘘を吐けば、蓮に顔を覗かれた。

「本当に?」
「本当に」

 前髪フィルターが欲しい。

 冷や汗が止まらない。

「そうだ、蓮。お化け屋敷行こう」
「晴翔、怖いの苦手でしょ?」
「蓮となら行きたい」

 それに、暗がりなら一旦冷静になれそうな気がする。冷や汗もお化け屋敷のせいに出来そうだ。
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