異世界にきた俺はガス欠(魔力切れ)ステータスだった

のだ!

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異世界との遭遇

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俺-ザイアス.オルフェウス-は、今、突如眼前に広がる見知らぬ草原に佇んでていた。

「これは、参ったなぁ」

シルク製の気持ちのいいベッドで、僕である美女と寝ていたはずだが、朝起きたら地面の上に転がっていた。
ベッドで寝ていたのだから、当然、寝間着姿で武器や道具なんぞいっさい持ちあわせていない。

空間転移テレポーテイション

自分の居宅へ転移する魔法を唱える。しかし、何も起こらない。起こらないということは、いくつかの事が考えられる。
一つは、空間転移を妨げる魔法が俺にかけられている。もうひとつは、現実の世界でなく夢の世界、いや精神世界にいるために現実に事象影響がおこってない。
しかし、地面を踏む感触や草の匂いがリアルであることを告げている。上位幻想系魔法であれば、同じ事を実現可能ではあるが、そもそも絶対魔法無効化フィールドを常時自動展開している俺には、その程度の魔法が効くはずもないし、自動探索記録魔法にも魔法侵入の形跡が見当たらない。

「どういうことだ? 周囲検索サーチ

探索系魔法を展開する。
周囲には森林が広がっているが、小動物らしい気配は何匹かひっかかったが、他には気配はない。北の方角に道らしきものが感じられる。

まあ、取りあえずは森を抜けることが先決だな

空中浮遊レビュテーション

取りあえず裸足のまま、北に向かって浮遊し進み始める。

1時間後。

なんとか街道らしきところにたどり着いた。しかし、何だかこう精神的な疲労感が襲ってくる。
今まで感じたことがない感覚だ。
空中浮遊を止め、辺りを見回す。

「アルテイシア、声が聴こえるか?」

精神パス(通信)を僕に送るが返事がない。世界中どこにいようとも、俺とのパスは切れることはありえないはずなのだが、パスが繋がっている感じもしない。

う~ん、よくわからんな。風景も初めてみる植物ばかりだし、訳がわからん

衣服創造クリエイトフォーム

寝間着姿のままだと恰好がつかないので、魔法で変換する。
靴は流石に何もない状態から作り出すのは面倒くさいのが、素足のままだと落ち着かないので、サンダルも生成した。

ん!?

突然、脱力感と吐き気がこみあげてくる。

「おぇー」

この感覚は随分と遠い記憶の彼方にあったもの。
世界との契約者になる前の魔導者であった頃の極度の魔力切れの際に起こった感覚だ。
立つことさえ容易でなくなり、膝をつく。

魔力量表示ゲージオープン

魔法が・・・発動しない!

初歩中の初歩魔法が発動しない異例の事態に、俺は久方ぶりに動揺を覚えた。
そういえば、常時起動展開されている数々の魔法も起動されていないことに、ようやく気付いた。
常時起動展開魔法なんて空気みたいな感覚であり、常日頃は意識していなかったので、気づけなかったのも仕方ない。

えづきながら、俺は自分の置かれている状況を整理する。
世界との契約者である俺は、普段はそこらに存在している魔力素子(マナ)を自動的に収集し体内に蓄積しているため、相当な超位魔法を連続で駆使でもしない限り魔力切れが起こるなどあり得ない。
それが、簡単な魔法を使用しただけで魔力切れを起こしたこと、マナの自動吸収がない・・・いや、それ依然にマナを感じることができない状況となっている。

まさか契約者でなくなっている? しかし、俺自体の魔力保有量は、契約者になる以前の俺でも相当にあったはず。

見知らぬ景色。僕とのパスが繋がらないこと。
別世界に飛ばされたってことがあるのか。いや、そうであっても俺の魔力保有量は、この程度でつきることがないはず・・・

状況を冷静に分析してはみるが確信は持てない。情報が少なすぎる。ただ、あながち推測が間違っている状況にも思えない。
もっと情報収集が必要だ。

しばらくして気分が落ち着いてきた。魔力の回復がほとんど進んでいないのは経験からくる感覚から判断できた。

この状況では、安易に魔法を使用するのは避けるべきだな。

フラフラしながら立ち上がる。

「んっ?」

こちらに近づいてくる幌馬車がある。馬車といっても、何というかドラゴンに近い動物が馬車を引いており、そのドラゴンに鞭打つ者も人間には見えない。オーガのような肌の黒く、口元に牙が覗いている。
数分ほどして、幌馬車が眼前に迫り、オーガの様な風貌の指揮者がこちらに気付く。

「@:~\>lluoo?」

オーガのおっさんが、俺の認知していない言語で話かけてくる。身の危険は感じないが、言葉が通じないのは困る。

言語認識レコグネーション

なけなしの魔力を無理やり振り絞り、言語疎通を可能とする魔法を発動させた。頭がぼうっとする。

「あんたなにしてんだ?」

おっさんが、再度問いかけた言葉が理解できた。

「いや、近くの森を歩いていたら道に迷ってね。街まで乗せてもらえないだろうか」

肩をすくめ、困った様子で両手をあげる。
おっさんは、しばらく俺を見つめるとニヤリと口をゆがめた。

「いいぜ、あんた怪しい者じゃなさそうだしな、乗んな。ただし、俺の横に座ってもらうぜ。道中の話相手になってくれよ。人間と話すのは久しぶりだしな」

やはり、別世界にきているらしい。俺のいた世界では、こんな種族は存在しない。ドラゴン種はいるにはいるが幌馬車を引くような種族はいない。

「助かるよ」

幌馬車の指揮台に乗り込んだ。

------------------------
オーガのおっさんと道中会話をしながら、それとなく情報を断片的にではあるが得ることができた。
今、馬車が向かっているところは、要塞都市セレーネである。
セレーネは、デトロイン帝国の衛星都市の一つであり、規模的には中位。
セレーネは、人間族の貴族が代表を務めているが、代表を含む10人の評議員が存在し都市運営の方針を決めているらしい。
種族としては、狼族、人間族、猫族、オーガ族、魔族がいる。ほかにも竜族やエルフ族という伝説的な種族がいるらしいがだれもお目にかかったことはないので、いないものとして扱われているらしい。
勢力としては魔族が上位にあるが、魔族はその持つ能力から魔族至上主義的思考が支配しており、他の種族とは仲が悪く、他種族を奴隷化し支配している地域が多く存在している。
その他種族は、魔族に対抗するために、緩やかな連合を組んで組織的に対抗している。

要塞都市セレーネは、魔族からの侵攻を阻止するための機能を担っている。ただ、種族として数は多いが、もっとも非力な人間族は、セレーネでの人口の約1割程度しかいない。

「で、あんたこれからどうするのさ。職っていっても、冒険者ぐらいしか、いまは働き口がないと思うが」

オーガ族であるハンサは、興味深々で、職探しをしているという俺に訪ねてきた。

「冒険者って職業なのか。自由人みたいに思うが」
「まあ確かに、定職とはいいがたいがな。でも、魔物退治は結構いい金になるし、日々の糧を得るにはとりあえず手っ取り早いといえば、早いな。冒険者ギルドに加入が必要だがね」
「加入に条件とかあるのかい?」
「そうさな、犯罪歴がないこと。加入クエストをクリアできること。それと、登録手数料だな」
「手数料かぁ」

金持ってないので、少し焦る。
まあ、前の世界でも金がなくても不自由はしなかった俺なんだが状況が違う。

「手数料はさあ、加入クエストをクリアできれば報酬金をもらえるから、それで充当できるぜ」
「そっか、それは良かった」
「でも、加入クエの難易度が若干あがるとは聞いたがね。詳しいことは知らんが、そこそこの冒険者スキルがないとクリアできないはずだったがね」

おっさんことハンサさんは、俺の体をちらっと見る。

「あんた、見たところ戦士には向いてなさそうだな。魔法でも使えりゃ、クエストも楽らしいがね」
「へぇー、そうなんだ。ハンサさん、冒険者情報に詳しいんですね」
「かつて若い頃は、俺も冒険者として活躍していた時期もあったんでな。引退してから随分たつんで、最近では口伝いにしか情報ははいらないんだけどな」
「いえ、助かりました」

街道沿いを2時間ばかり走ると、目の前に高さ30mはあるであろう頑強な城壁が巨大な円状として現れはじめた。

「もうすぐ着くぜ。あんちゃんとも、ここらでお別れだな」
「都市に入るのに検査とかはないんですか?」
「魔族かどうかや、犯罪歴がないかの検査はあるけど、あんたは無縁に見えるがね。それにしても、あんちゃんは本当に何にもしらないんだな。俺はオーガがいいからいいけど、騙されんなよな」
「そうします」

城壁の前に門があり、憲兵が槍を持っている。入場しようとする者が行列をなして検査を待っていた。

「とまれ」

憲兵は、俺に向かって銅板を掲げ始めた。銅板は、しばらく発光すると、その後文字が浮かびあがってきた。

「ふむ、種族は人間。犯罪歴はなし。通っていいぞ」

銅板は魔法効果がかかっており、種族探知と犯罪歴探知効果があるらしい。
ハンサによると、ステータス偽造の検知魔法や他の検知魔法もかかっているらしいから、怪しい者は基本的に見つかったら即逮捕されることもあるそうだ。
20mはあるだろう石壁のトンネルを抜けると、急に目の前に広場が飛び込んできた。
まったく人気のない風景から、そこには大勢の人が行きかっていた。

「じゃあな、あんちゃん。元気でな」
「ハンサさんも。本当にありがとうございました」

オーガ族のハンサさんは見た目はごつかったが、話してみるといいおっさんだったな。
俺は、ハンサさんと別れた後、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは、大陸全土の中規模以上の都市には存在しているらしい。ギルドの看板の紋章にはドラゴンを囲み剣と盾と杖が配置されている。

元の世界に帰る方法は全くわからないが、情報収集がてら、この状況を楽しむとするか。

俺-ザイアスは、頑丈な鉄で補強された木製の扉をゆっくりと押して、冒険者ギルドに入ったのであった。
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