異世界にきた俺はガス欠(魔力切れ)ステータスだった

のだ!

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マスター聖騎士の誕生

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「ザイアス殿、ここから転移すると、すぐにダンジョン最深部入口に到達します」
「入口でいったん待機ですよね」
「転移魔法の準備をしますので、ここらでパーティは待機。転移後、すぐに戦闘開始となる可能性があるので各自準備を怠らないように」

要塞都市セレーネの冒険者ギルド長であるマグナルドは、5隊のパーティグループに指示を出す。
セレーネ近郊にある洞窟ダンジョン、通称「セレーネダンジョン」。
話に聞くところによると、中級規模の洞窟ダンジョンらしい。

この世界のダンジョンは、たいてい魔素といわれる魔力の基になるようなものが、洞窟に溜まっていくことで、魔物が生成されダンジョン化していく。
奥にいくほど、魔素が沈殿していきその結果として強力な魔物が誕生される。
魔物は、魔素を蓄積した魔石コアと呼ばれる石状の塊をもっており、それはこの世界の動力源として利用されていることから、大きなものほど高値で売買されている。
また、一部の魔物の皮や骨等は、魔法素材の武器や防具に利用され、大型モンスターの屍は特に高額で取引されている。

今回、俺のパーティには、ギルド長のマグナルド、回復魔法士のミック、遠・中距離攻撃魔法士のスタン、弓使いのレックの5人構成だ。
聖騎士である俺は、まあ当然の如く前衛になる。

「入口にいきなりボスモンスターはいないですよね?」
「入口から1kmほど先の最深部でウロウロしているはずですから、その点は大丈夫ですよ。そこそこ攻略はされているダンジョンですから情報に抜かりはありません」

回復魔法士のミックは丁寧な口調で応対してくる。見た目は、まだ17歳くらいの人間族の青年だ。栗色の髪に茶色の瞳、鼻立ちは高くはなく女性的な顔立ちに近い。

「ただ移転後、すぐに中型モンスターが襲ってくる可能性が高いので、ザイアスさん、処理はお願いしますね」
「了解」

転移魔法陣が発動し、パーティは最初に移転を開始する。

ーーーーーーーーーーーーー
グウォォォー

夥しい数の中型モンスターである大きな牛人間のミノタウルスを相手に俺は戦っていた。
事前にミノタウルスの情報は聞いていたので、戦いは楽な方だった。こいつらは魔法攻撃がないので物理攻撃をかわして、単純に剣でぶんなぐるだけだ。
とはいえ、数は30体もいるし体力もそこそこあるので、一体を処理するのには5人パーティでも10分はかかる。
30体いれば、単純計算でも300分で5時間。1グループでは全滅必須な数。
そこで、5グループを確保し、1~2時間程度で処理しようという算段だ。

「ミック、防御付加魔法を」
「鋼化」

マグナルドの指示でミックが俺とマグナルドに防御付加の魔法をかける。
光につつまれ防御力があがるのが俺にもわかる。

「さて、そろそろ聖騎士殿のお力、拝見させていただくぞ」
「承知」

久々の戦いだな。

片手剣を持つ右手に気を練りこむ。魔力量が少ない状態では、俺の取得している剣技と神明気功術で対処するしかない。
神明流気功術とは、気功を極めた者が編み出せる術であり、気功を神レベルの神気というものに錬成するものである。
この神気を宿した武器は、超絶な切れ味を宿し、耐久性も極大に向上する。
武器だけでなく身体に付加すれば、超人的な能力向上を可能とする。ステータスでいえば、武技、スピード、力がEXTRAとなる。
欠点としては、神気はかなりの気力を使用する点だ。以前の俺なら魔力で気力を回復できているので時間制限はなかったのだが、今はごく短時間でしか利用できない。
それと、もう一つの欠点として、神気は大気中の元素を分解するため発光する。
なんというか、神様降臨状態というド派手なエフェクトがついてくる。
下僕からは、「恰好いいご主人様モード」とか呼ばれ、それで一時期使用するのを止めたこともある。

「千龍光斬破!」
「「「「「「「「おおっ!!!!」」」」」」」

冒険者から感嘆の声があがる。
ザイアスの身体と武器は、一瞬目も眩むほどの光を放ち縦横無尽に戦場に軌跡を描く。
30体はいただろうミノタウルスは、全てばらばらの屍と化して倒れている。
時間にして、数秒。瞬きをしていたら終わっていた感じだろう。

こ、これほどまでとは・・・

マグナルドは、心底、感嘆していた。確かに人間にしては立ち振る舞いに隙が全くなく、只者には見えなかったとはいえ、自分が知り得ている人知を超えた驚愕の戦闘だ。

見たことはないが、S級冒険者であれば、あるいはかもしれないが、本当に、人間なのか

ここにいたザイアスを除く冒険者の瞳は大きく見開き、しばし立ち竦んでいた。
マスター聖騎士。
知識では、大陸全土を破壊できる伝説のアークドラゴン級を倒せるほどの力量を持つものと知ってはいるが、目の前の光景が信じられなかった。
その騎士は息ひとつ切らすことなく、借り受けた只の剣を鞘に納める。

「さあ、先に進みましょう」
「・・・、ああ、ああ、そうですな」

ようやくマグナルドは憑りつかれた緊張感から解放されると、声を振り絞りだした。

やりすぎたかな。前の世界の感覚で、力をふるってしまって、配慮が足りなかったかもしれん。
まあ、伝説級の聖騎士とかいわれているから、これぐらいは許容されるだろう。

前の世界では、契約者として神をも超える力を有している俺を知らぬ者などいなかったため、その力を普通に振る舞うことにためらいはなかった。
が、この世界では誰も俺を知らないだろうし、強大な力を誇示する必要もいまはなかったかもしれない。

力加減が必要だな。ボスモンスターも一刀両断というわけにもいかんかな。少し、手こずらせた感を出した方が、厄介ごとにならずに済むか。

ダンジョンのモンスターを蹴散らしながら、俺はボスモンスターの倒し方を考えていた。
ボスモンスター「イービルゴーレム」は、大きな一つ目を持つ金属型のゴーレムで非常に強度な魔法・物理防御力を持つモンスターとのことだ。その眼は石化効力を持ちあわせ、弱者に対して恐怖心で威嚇しステータスをさげる効果もある。
攻撃自体は、基本的に物理攻撃ではあるが、途方もない耐久性と攻撃力を誇るので、長時間の勝負が必要で、その間に中型モンスターも湧いてくる。
過去に、10冒険者グループで10時間に渡る戦闘で決着がつかなかったため、中級ダンジョンではあるものの軍が素材としてミスリルを必要とするとき以外は、ボス討伐が放置されていた。

「では、もう一度、攻略手順の確認を」
「はい」

マグナルドは、攻略手順を再説明しはじめた。
前衛のマグナルドは今回、盾役となり最深部のゴーレムを引き付け壁際に固定する。弓部隊と攻撃魔法部隊は、湧いてくる中型モンスターの処理。回復魔法士は、前衛部隊の体力回復と防御力支援、石化デバフの無効化と解除。
オーソドックスな攻略方法。ボスが魔法を使うとこうはいかないが、今回は物理なのでこれで十分だ。
ただ、長期戦になるので部隊は、ボス攻略組と周囲のザコ殲滅組に分かれ、ザコ殲滅組は体力回復を中心とする。

「では、ボスモンスターのステータス確認を」

攻撃魔法士のスタンがボスモンスターに手をかざしながらステータス検索魔法を唱えると魔法紙にボスモンスターのステータスが表示される。

イービルゴーレム 
種別:ゴーレム
レベル 80
強さ    15000
素早さ   100
魔法技巧  100
武術技巧  100
体力    1500000
魔法量   1000
知性     150
耐久力   2000

弱点:特になし

「体力150万かよ」
冒険者がつぶやく。表情はかんばしくない。

「数値的な見方がわからないのですが」
「ザイアス殿は初めてで?」
「ええ、教えていただけると助かります」

異世界からきた俺の数値認識とこの世界の数値認識が一致しているとは限らないので、あえて教えてもらうことにする。

「そうですな。狼族のB級冒険者、つまり私のステータスでいえば、強さは2000、素早さは2500、体力は5000といった感じですかな。ただ、ゴーレムの厄介なところは、体力の回復量がはんぱないということ」
「といいますと?」
「過去のレイド戦では、体力を半分に削ったところで、1時間の回復量が10%まで達したことがありました」
「15万ってことですか」
「武器力と強さの合計から耐久力を引いたものがダメージとなるので、私の持っている斧の攻撃力3000が純粋なダメージ力となりますかな」
「ふむ、そうなると長期戦ではこちらが持ちそうにないですね」
「そういうことになりますな。ある程度まで体力を削ったら、取り巻きモンスターの処理は最低限にして、集中的にゴーレムを削りにいくのが定跡かと」
「承知」
「それで、ザイアス殿は前衛の攻撃特化でお願いしたい」

俺は剣を抜く。
他の前衛部隊は、ゴーレムの注意をひきつける魔法を発動しながら、ゆっくりと最深部の壁際に向かって進みはじめた。

やがて、最深部の壁際の盾役をゴーレムが攻撃しはじめる。

ガーン
ゴーン

重騎士の防具や盾には強力な攻撃耐性の魔法が付与されているため、攻撃はしのぎきれているが、攻撃力がすざまじいため、攻撃を受けるたびよろめいている。
一定時間すぎると魔法の付与効果がなくなるため、その前に他の重騎士が交代で飛び込み代役を務めている。

俺も倒し方の作戦は立てた。
一刀両断だと目立ちすぎるため、10回攻撃で30分程度で倒すつもりでいく。
目立つことは目立つが、これなら、過激に目立ちすぎることはなく許容の範囲で済まされるだろう。
片手剣に先ほどと同じく神気を付与する。

ゴーレムの銅を横一線に薙ぎ払うと同時に、縦にも切り返す。ゴーレムに十字架の閃光が走り抜ける。

えっ?

ゴーレムは4ブロックに切り分けられると、その場に倒れこんだ。

「「「「「「「!!」」」」」」」

そこに居合わせた全員が状況を理解できなかった。
ザイアス以外の冒険者全員は、まさかボスモンスターのゴーレムが瞬殺されるとは想像だにしていなかった。
ザイアスは、まさか奥義も使わずにこんな簡単に身体を貫通してしまうとは思ってもいなかった。いや、感が鈍っていたのかもしれない。


弱すぎる。なんだ、これじゃ手加減の意味ないじゃないか

「えー、その終了ですね」

収まりが悪そうに頬を指でかきながら、しずかに俺はつぶやく。

これが要塞都市セレーネで、半年間に渡り噂にならなかった日がなかった伝説のゴーレム瞬殺事件の誕生だった。
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