異世界にきた俺はガス欠(魔力切れ)ステータスだった

のだ!

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え、いきなりそれですか

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俺、ザイアスはギルドの扉をあける。
こざっぱりとした内装。ウッドフロアーに受付窓口が3つ。長イスが4つ。
壁には依頼板があり、クエスト依頼の紙が結構貼られている。文字は読める。
言語認識魔法は永続的に文字・言語を理解可能とするが、字を書く事まではできない。

「あの~、ご用件伺いましょうか?」

栗色のサラサラのショートヘアのギルド女性従業員が声をかけてくる。
気のせいか頬が赤い。

窓口に案内されると、一通り事前に聞いていた冒険者登録に必要な事項の説明を受けた。
クエの内容も、たいしたことはなさそうな感じがする。中級冒険者向けのクエストならここが異世界であったとしても、一人でもいけるだろう。

「ザイアスさんですね。加入クエストを選ばせていただきますので、職種もご記入お願いします」
「職種ですかぁ」

職種ねぇ。剣士とか騎士とか魔法士とかいう奴か。回復魔法士って、職種も細分化されてるのか・・・。
盲点だったな、攻撃系だから適当に答えておくか、いや武器もないし借りないといけないから、適当はまずいか。

移転前の世界での契約者たる俺には、そもそも職種とかいう概念はない。全ての魔法と剣技を主体とする武術をマスターしているので、しいていうなら、好みで使用する魔法や武器の系統が職種にそのままなるっていう感覚だ。
目の前の女性の表情が怪訝になる。クエスト受けようという奴が自分の職種をさらっと云えないのだから、阿保と思われてるのかもしれない。

「もしよろしければ、おすすめ職種鑑定受けられますか。いまなら登録者限定で無料キャンペーンやってます」
冷ややかな視線を感じながら、助け舟的に話しかけられた言葉に乗ってみることにした。

後から思えば、これが最大の失策だった。

「判定結果を申し上げます。マスター聖騎士」

ギルド内が静まり返る。
慌てて、再度、女性が判定帽子を俺に被せなおしてくるが結果は同じだった。
ただ、今度の雰囲気は先ほどとは違い、祭りの様な歓声があがっていた。

「あのー、私、マリナっていいます。以後、マリナって呼んでください」

気のせいか、マリナさんは上目づかいに唇をつやっぽく俺に向けている。両手で胸をはさみこむと、軽くウインクしてきた。

マスターパラディンって職種が珍しかったのか。

まあ、俺のいた世界でもそんなには確か存在していなかった気がする。パラディンはいたが、マスターの名はついている奴が・・・いないな。

2階の応接室に案内されると、マリナさんはクエストの手配をするといって部屋を出て行った。

「失礼するよ、ザイアスさん」

左頬に十字の傷のある精悍な顔つきの顎鬚を生やした40代の狼族の男性が入室してくる。
「私は、この街のギルド長をしているマグナルド・カンピールというものです」
「これは、お初にお目にかかります。私の様な新参者にお会いいただくとは光栄です」
「いや、マスター聖騎士の職種を持つ方とあっては、礼を失する訳には参りません」

口調は穏やかだが、目つきはこちらを値踏みしている感じだ。マスター聖騎士という職種の判定はでたものの、見た目はただの人間。疑われるのも無理はない。

「聖騎士の職種を持つ方に、加入クエストというのも無礼かと思いましてね。急きょ、実力に相応しいクエストをご用意させていただく手配をしておりますので、もうしばらくお待ちください」
「・・・、ただの加入クエストで結構ですが」
「いえいえ、我々としても聖騎士様の武勇を拝見させていただきたく、是非とも用意するクエストにてお願いします。それに、冒険者ランクを新規冒険者ランクのFランクとするわけにも参りませねし。伝説上の職種のマスター聖騎士様ともなれば、冒険者ランクでいう最上位のSSランクが相応しいかと思いますが、この地では相応のクエストが見つからぬゆえ、とりあえずAランク相当のクエストを準備させていただいております」

やばーい。

以前の俺ならなんでも持ってこいなんだが、なんせ魔力がガス切れに限りなく近い状態なのに、ハードなクエがこなせるのか。

「いえいえ、お気遣いいただき誠にありがたい話ですが、まずは、通常のクエストで結構ですよ」
「いえいえ、是非ともご武勇を拝見いただきたく、支援者も引き連れて参りますので」

お互いに複雑な笑いを見せ合いながら、会話を進める。俺は、いきなりハードなクエストはやりたくないが、向こうは値踏みがてら、ランクに相応しいクエストをなんとしても用意する腹積もりらしい。

「マリナ、入りまーす。明日の朝10時からダンジョン最深部のイービルゴーレム討伐クエスト手配完了しました」

ショートカットの大きな青い瞳のマリナさんが、俺を見ながら報告しに部屋に入ってくる。
ギルド長は、彼女のあからさまなアピールに苦笑しつつ、わかったと手をあげた。

「明日ですか・・・」

文無しの俺は、今日、どこに泊まればいいんだ。

マグナルドは、俺の怪訝な表情を察し話しかけてきた。

「ザイアス殿、本日からでは、ちと攻略人数を集めるのに手配が間に合わなかったのは、ご容赦願いますか」
「いえ、そういうことではなく」
「では、何か?」
「その、言いにくいことではありますが、道中、水浴びをしていたら武器・財布を盗みとられましてね。宿や食事もできない状況でして」

得心がいったようで、彼は大きくうなずく。

「おお、それはお困りでしょう。よろしければ、我がギルドが経営している宿で宿泊されてはいかがでしょうか。勿論、食事もご用意いたしましょう」

マグナルドさん、あんたいい人だね。

「あのー、食事でしたら私作りましょうか?」
マリナは、もじもじしながらマグナルドを見つめる。

「そ、そうだな。マリナは、肉じゃがが得意だったかなぁ、うんうん」
「じゃあ、今日はもうあがりますね」
「お、おう。頑張れよ」

普段はおっかないマリナが、こういう態度に出てくる時は触らない方がいいよな。うん。俺は察することのできる上司だ。

マグナルドは、頭を2、3回縦に振るとマリナに返答した。

その日の夕刻。
ギルド経営宿「フェニックス」では大宴会が開催されていた。伝説級の職種であるマスター聖騎士を持つ冒険者希望者が現れたとの噂は、すぐに都市中に広まり、一目、ザイアスを見ようとする者が集まっていた。

マグナルドも当然の様に、ザイアスと席を囲んで酒宴を広げていた。
「ささっ、どうぞ」
「これは、どうも」

俺は衆人看視のもと、酒をあおりつつ、肉じゃがをつまみにしていた。
横には、マリナがつきっきりでかいがいしく世話をしている。

「マリナさんには、本当にお世話になりっぱなしで、すみません」
「マリナって呼び捨てで構いませんよ、ザイアス様」

できあがったマリナさんが、なまめかしく俺を見つめてくる。ああ、移転前の世界の下僕たちを思い出すな。どうしているのだろうか。

「ザイアス様、あのー、ご結婚とかされてるんですか?」
「いえ、奥さんはいないですね」
「じゃあ、彼女さんとかは?」
「うーん、いいにくいですね。彼女はいないですね・・・」

俺にとって下僕は大切な者たちではあるが、彼女や妻とも言い難い。限りなくそれに近い存在であることは確かであるが、厳密には異なる者たちである。

マリナは、じーと見つめるとニコッと微笑んだ。

「じゃあ、マリナは、彼女さん候補になってもいいんですよねぇ」
「えっと、呑み過ぎではないでしょうか」
「そ、そうだぞ。ザイアス殿も困られておるではないか。今日はもう帰りなさい」

横目でマグナルドにSOS視線を発信し、マグナルドもそれに応じる。

「ひっく、どうせ、私は行かず敗北者ですよー。ぐすっ」
「マリナさんは、魅力的な方ですよ。ね、ねえ、マグナルドさん」
「お、おお、そうだとも。少し誤解を受けやすいだけで、十分魅力的なレディーだぞ」

こうして、マリナのグチに俺とマグナルドは、かなり遅くまで付き合わされることになったのだった。

ーーーーーーーーーーーー
翌日。朝10時。

俺のコンディションはあまり良くなかった。昨日、深夜まで呑み過ぎたということもあるが、今朝、自分にステータス検索魔法をかけた結果が思わしくなかったためだ。

ザイアス.オルフェウス
ステータス検索結果

レベル  EXTRA
強さ    A
素早さ   A
魔法技巧 EXTRA
武術技巧  S  
体力    A
魔力量   D
知性   EXTRA

移転前の世界の俺のステータスは、全てEXTRAであり限界突破レベルを保有していた。
それが移転後は、かなりのステータスに大幅な制限が何故かかかっており、特に魔法・武術技巧に必要となる魔力量が人並となっていた。
この魔力量ステータスでは、事象に大きく影響する魔法は全て使用不能ということを意味する。勿論、それだけですべてが決まる訳ではないが、総合的に判断するとなると、魔法士としては役に立たず、騎士向きのステータスと言わざるをえない。

ちなみに、ギルド長のマグナルドのステータスもこっそり検索してみたが、狼族としての彼のステータスは、想定の範囲内であった。

マグナルド・カンピール
ステータス検索結果

レベル   40
強さ    B
素早さ   B
魔法技巧   D
武術技巧  B  
体力    B
魔力量   E
知性     C

ちなみに、レベルランクは99まであり、限界突破がEXTRAとなる。
ステータスは、F~Sまでのランクである。標準的な人間族の成人男性ステータスは、D~Eが一般的である。
達人でBぐらいが限界。一部、ステータスでAがあると天才と言われる領域と評される。Sは、究極の求道者のみが到達しえるものである。

「ザイアス殿、お待たせいたしました。武器・防具のなじみ具合はいかがかな」

マグナルドが斧を片手にザイアスに近づいてくる。

「いや、なかなかに良いものをお借りして申し訳なく思います」
「ははっ、期待しておりますぞ」
「ザイアス様~」

マリナが、取り巻きから手を振って挨拶してくる。軽く微笑み手を振りこたえた。

「さて、皆の衆。今日は、念願の洞窟地下ダンジョン攻略の日である。そして、ここにおられるザイアス殿の武勇を拝見できる日でもある。張り切っていこうぞ」
「おおー」

各5人ほどの6パーティの冒険者グループが気勢をあげる。周りの観衆からも声があがり、盛り上がっていく。
「では、いざ参ろう」

マグナルドはギルド長らしい立ち振る舞いで洞窟ダンジョン入口に進んでいくのであった。
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