世界最強の魔女は争い事に巻き込まれたくないので!邪竜と無自覚に英雄を育てながらひっそりと暮らしたい

赤羽夕夜

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家族が増えた

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夜も更けた頃。子供用の服がないので、超特急で洗濯した服を乾かし、ひとまず彼らが着ていた服を着させた。



そして、彼らの身元の詳細な情報を聞くべく対面の席に5人を座らせた。ウェルカムドリンクとして、ワイン作りのついでで作ったブドウジュースを出した。

「で......なんであそこで死にかけてたの?この森は魔素の濃度が濃くて、普通の人間は近寄っただけで死んでしまうことは常識として知られている場所なのに」

「それは…」



彼らはこの死海の森から南西にあるアースガルド王国領土の小さな村の出身だった。ある日、柄の悪い奴隷商に目をつけられ、村周辺を警備していた王国の治安部隊が殺され、王国の戦力に依存していた村は壊滅した。女、子供は奴隷として捕まえられ、若い男と老人は見目麗しいもの以外、抵抗する者はすべて殺されたらしい。



リーダー格のレオンは村からの幼馴染である4人を連れて、なんとか奴隷商の目をかいくぐって輸送馬車から抜け出し、命からがらこの森まで逃げ出したというのが顛末のようだ。



違法奴隷商の密輸ルートがこの死海の森の近くを通るらしい。森の入り口は奥地と比べると魔素は薄いし、人里まではまあまあ距離があり、滅多なことがない限りは寄り付かない。子供たちも盗賊も恐れる死海の森を一縷の望みをかけて逃げ場としたのだ。

そこで運よく私に保護された......というのはかなりの幸運を子供たちは持っていたのだろう。

さて、保護して話を聞かせてもらったのはいいが、これからどうしようか。

「あなたたち、他に知り合いはいないの?頼れる人とか」

「皆殺された。あいつらに......」

「もう、私たちに頼れる人は……。うぅ......、パパ......」

知らない土地に迷い込む恐怖や寂しさ、そして日常を奪われる気持ちは私にもよくわかる。いきなりこんな世界に転移させられて聖女なんて役目を押し付けられたのだから。そう思うと境遇は違えど、彼らのことを他人事だとは思えなかった。



同情......になるのか。こんなので、感情を動かしていたらキリがないけど。でも、死体を見たくないという理由で保護した手前上、ここで野放しにしても頼る大人がいない彼らは死ぬだけだ。



知らないところで死んでいく分には仕方ないとは思うが、こうして知り合ってしまった以上、見殺しにはできなかった。それに、今の私にはこの子たちを養う能力はあるつもりだ。



部屋は余っているし、食料生産は魔法でなんとかなる。それに......。魔法の研究だってしたい。それにはこの子たちは役に立つ。非人道的なことはするつもりはないけど、まだ子供のうちから魔法を教えて、どこまで能力を引き延ばせるか、様々な魔法の実験、知的好奇心を満たすためにぜひとも協力して欲しい。



状況を考慮して、私はこの子たちを助けられる選択肢を与えられる。......ああ、今後は子供を拾うのはよくかんがえなくちゃ。こんなことが毎年、または不定期に起こることを考えると身が持たない。



それでも、感情に従うと決めた私の心はもう決まっていた。



「――あなたたちが条件を飲んでくれるなら、あなたたちが自分の身を守れるようになるまでの間......そうね。成人するまで面倒を見てあげる。魔法の使い方や身を守る術を教えてあげるわ」

「本当!?」



ノリの良さそうな、やんちゃそうな男の子が身を乗り出す。先ほどの警戒心はどこへやら。安心したのだろうか年相応の反応を見せるレオンに掴まれて椅子に座り直される。レオンは「条件って?」と聞き返す。



「ひとつ。私は今、魔素と魔力の研究をしているの。その研究には不安定な魔力回路を持つ存在......この森の魔素の濃度に耐えられるあなたたちが必要なの」

「それは痛いこと?」

「いいえ。簡単に言うと魔法を覚えてもらったり、どれだけの魔素に耐えられるか、変換ができるかどうかの実験よ。体調不良にならないように考えるし、魔法も覚えられるからあなたたちの将来の助けになるわ」

「......痛くなくて、死なないのであれば、俺は賛成だ。命を助けてくれるんだ、それくらいいは協力しなくちゃ」



私は二本目の指を立てる。



「二つ目。魔法の研究をするために本や材料がが欲しいの。あなたたちには材料は大方この森で手に入れられるけど......本ばかりはどうにもならない。正直外に出る気にもならないし。本を買うにもお金が必要。でも、作ったものを売に行くのは面倒......そこであなたたちにお使いを頼むのです。そのために文字を読めるように字も教えます。お金の勘定ができるように算術も教えるわ。......どう?」

「読み書きもできるようになる......俺たちは断る理由がない。でも、お姉さんはいいの?」

「お使いを頼むのだもの。読み書きができないんじゃ話にならないでしょ?......で、最後。成人になったらこの森を出ていくこと。そのための生きる術を教えてあげる。ここで暮らせば自分の身を守る術を身に着けられるし、成人にさえなれば自立はできるでしょ?」



正直、私の生きる時間とこの子たちが生きられる時間は「違いすぎる。」



私は、この世界の神様曰く、この世の理を逸脱する禁忌を犯したらしいから。変に関わりすぎるとこの子たちも、自分も。お互いが傷つくだけだ。



期間限定を設けておけば、時が来た時の傷は最小限に済む。



これが私にも、この子たちにも最善の道だ。......後はこの子たちの選択肢に任せる。生きるも死ぬも。このチャンスをふいにするのも、掴むのも彼ら次第。



少しの沈黙が続いた後......レオンは仲間たちとうなずき返事を返す。

「お願いします。僕たちに......生きる術を、知識を教えてください」



風が新たな出会いを祝福するようにぶわりと土埃を舞い上げる。木々が生い茂っているので、湿った風が頬を撫でた。



そうして、私は長い生の短い期間ではあるが、家族が5人も増えた。
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