世界最強の魔女は争い事に巻き込まれたくないので!邪竜と無自覚に英雄を育てながらひっそりと暮らしたい

赤羽夕夜

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あれから数年後の皇国

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およそ数年前、皇帝の治世が変わる。前皇帝から現皇帝のハルトに代わり、皇妃はハルトの良人であり、皇国唯一の聖女のミーユだ。



ハルトとミーユは皇太子時代よりより贅沢と我儘な限りを尽くした。ミーユは欲しいものを何がなんでも手に入れる環境に甘え、元来の我儘と傲慢さに拍車がかかる。

目ざわりな人間はなにかと難癖をつけ排除し、自分の耳障りのいいものだけを周りに置いた結果、政治は内側から腐りかけ始めていた。

彼女たちに諫言する貴族はもうこの皇国内にはいない。いるのは私服を肥し、税を増やし、民の暮らしにくい世の中となっていった。


しかし、それは内部的な事情の話であって、皮だけみれば国の体裁は不思議と保っていた。皇国は魔法石が採取できる鉱山があり、金銭的にうるおい、商人が商いを行っているので、かろうじて経済が回っているからだった。

それでも税金や労役など、民の負担は増えていく一方。暮らし向きが良くなることはまったくない。

――民は不満を募らせ、日を経つごとに明日を食べていくことに精一杯な市民はお金を娯楽に落とさなくなる。宝飾、芸術、娯楽事業が盛んだった皇国は売上が見込めないのが現実化していく。

商人は徐々に自分の商品の販売経路を他国へと移そうとしていた。



皇国の情勢はよくなかった。カール、アールはその事実を知ることなく、皇国へ身を移すことになる。







「じゃあ、カール……俺はここで」

「ああ!……でも、一緒じゃなくていいのか?」

「うん……あんまり知らない人と喋るの、苦手だし。俺は俺で人の少ないところでこもって勉強するよ」



皇国につくと、アールは連絡を取りあっていた、ダレス商会の友人と落ち合った。途中まで同行していた、片割れに、アールは心配そうに声を掛けた。



カールはエミリアからもらった魔法石の図鑑を抱きしめる。不安だけど、自分が決めた道に進むために、ずっと連れ添ってきた片割れと別れる不安。でも、この先に未知の生活へのワクワク感。



赤面させて、本で顔を隠した。



アールは肩をすくめて口角を上げる。この頑固者にこれ以上言っても無駄だ。そして、強くなったことに嬉しく思うこともあった。



いつも自分の後ろを引っ付いてあるくか、エミリアの後ろにいて自分の意見をいわなかったカールが。確固たる意思を口にして、自分の道を決めるということに。



これ以上野暮なことは言えなくて。



「わかった。なにかあったら俺を訊ねろよ」

「うん。アールこそ。困ったら俺の家に来ていいよ」

「……ふっ。じゃあ、またな。俺はそろそろ商会に行くよ。明日から仕事だから準備しなくちゃ」

「うん。……じゃあ、またね」



アールはカールに背を向けて、友人の元に駆け寄る。カールもアールの背中を見送り、反対側の道に進む。これから宿を予約して、住む家を見つけなくては。



質素に暮らしていけば一生分暮らしていくことはできるし、いざとなればまたお金を稼げばいい。そのために術はもう持っているから。



カールも今日泊まる宿を探すために、人波を掻き分けていった。
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