大聖女様 世を謀る!

丁太郎。

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22話 大賢者である私と難癖男とお爺さん

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「僕がリッキルトですが、何かご用ですか?」

「お前、先程の競技で不正をしただろう!」

 突然、遥かに格上Aランクのチームリーダーとしてメンバーを引っ張ってきた男に凄まれ、リッキルトは震えて上がってしまった。

「え!? そんな!僕は不正なんて…」

 難癖をつける男に対する抗議の声も尻窄みになる。

「嘘を付け!急にあんな異常な速さになる訳無いだろう!お前がギルドに辞退を申し出すれば見逃してやるが、嫌と言うなら俺が通告する。ギルドに居れなくしてやるぞ!」

「そ、そんな!本当に僕は不正なんて…」

 完全に相手の勢いに呑まれたリッキルト。
 ミリミリは難癖男の口角が上がったのをみた。
 これは、ルールを理解した上で言いがかりを付けている。
 リッキルトに辞退させて繰り上げ合格しよういう魂胆だ。

「やれやれ、馬鹿な男だね。不正だなんて!」

 ミリミリの発言にリッキルトはいよいよ窮して涙目だ。

「君は先程ぶっちぎりで一位だった娘だな?君の言う通り、不正なんて馬鹿のやる事だ」

 ミリミリは難癖男、即ち一矢百中のリーダーの顔をマジマジと見た。
 そして。

「ぷぷ! あんたに向かって言ったつもりなんだけど。いやぁAランクのリーダーなんて馬鹿でも務まるんだねぇ」

 難癖男を指差して笑った。

「な、なんだと!?」

 馬鹿にされていたのが自分と知らされ激昂する難癖男。

「だってさぁ、リッキーが辞退したら繰り上げ合格になると思ってんでしょ?」

「当たり前だろう!」

「やっぱ馬鹿じゃん。リッキーが辞退したって合格者が一人減るだけだよ。当たり前じゃない。あんたは6位だったんだよ?その結果が変わる訳ないでしょ」

「だがそれは、こいつが不正したからだ!それが無かったら俺は5位だった!!」

 必死な難癖男に再び笑い出すミリミリ。
 その光景を唖然として見守るリッキルト。

「あまり笑わせないでよね。判っていて難癖つけてるのかと思っていたんだけど」

「難癖だと!?」

「そもそも、リッキーがドーピングしたり補助魔法受けてたりしてもそれは禁止されて無いんだけど。それが、パーティー以外からの支援だったりしてもね。この競技で求められたのはパンを食べきって、5位以内にゴールする。それだけ。極端な事言えば競技中ならライバルの妨害をしても良かったんだよ?ここに居る参加者は真面目で優しいね」

「な!」

 ミリミリの言葉に言葉に詰まらせる難癖男。

「やれやれ、このオーディションは戦いなんだけどね。或いはあんたを落とす為に他のAランクパーティがリッキーを支援したのかもね。兎に角、あんたはもう死んだの。だから復活は無い!そんな事がわからないなんて、だから馬鹿って言われるんだよ」

「なんだと!」

 羞恥と激昂のあまり、難癖男は顔を真っ赤にして拳を振り上げる。
 リッキルトはタンク志望だ。
 咄嗟にミリミリを庇って前に立つ。
 しかし恐怖で目を瞑ってしまった。
 しかし、いつまで経ってもその拳が振り落とされる事はなかった。
 恐る恐る目を開けるリッキルト。

「何をする。 俺はAランクチーム『一矢百中』のリーダー、ロードルシュだぞ!」

 振り上げた拳は筋骨隆々の爺さんに手首を掴まれて振り下ろすことが出来ずにいた。
 この爺さんはミリミリと同じく、ぶっちぎりで1位になり、観客を驚かせた人物だ。
 激甘メロンパンは一飲みだったという。

「ほう、こんな下衆がAランクとは。ところで、少年よ!咄嗟に庇ったのは褒めてやるが、いかんせん実力不足じゃな。精進しろよ。あと嬢ちゃん。威勢がいいのはいいが相手の実力を見誤ると痛い目みるぞい」

「お爺さんありがとー。忠告受け取っとく。リッキーもありがとね」

「助けて下さりありがとうございます」

「少年は嬢ちゃんと違って礼儀はなっておるの」

「離せ!ジジイ!!」

 暴れるロードルシュ。
 だが爺さんに掴まれた手首を後ろに回され、あっさりと関節を極められてしまい身動きができない。
 そこに、セバがやってきた。

「騒がしいですな」

「セバさん助けてくれ! この爺さんに襲われて!」

「残念ながら一部始終を見ておりました。先に拳を振り上げたのはロードルシュ様でしたな」

「俺はこいつらの不正を正そうとしただけだ!」

「見苦しいですよ。あなたの敗退は動かないと言うのに。ロードルシュ様、私の出した条件を満たせば、あとはどういう手を使おうとOKですよ。結果あなたは6位だった。従ってリッキルト様は合格で貴方様は失格、以上です」

「ぐ! 俺はこんな競技みとめない。Gを出せ!」

「うっさいわ!」

 ロードルシュが騒いだ瞬間、ミリミリの拳がロードルシュの鳩尾にめり込んだ。
 崩れ落ちるロードルシュ。

「ほう! なかなかやりおる」

 爺さんは掴んでいた手首を離した。

「ありがとうございます。セバさん」

「細かい説明を敢えてしなかったこちらの責任も有ります故、リッキルト様もお気になさらずに」

 セバが来た以上、もう大丈夫だろうと判断した爺さんが背を向けた。

「では儂はもう行くぞい」

「ご助力ありがとうございました」

 お礼を言うリッキルトに去りながら片手を上げて応える爺さん。
 セバは爺さんの背に向かって無言で恭しく一礼した。

「お爺さん、またねー」

 ミリミリの言葉に爺さんは頭を描いた。

「じゃあ、私も行くよ。ではセバっちゃん、あと宜しく」

 手のひらをひらひらさせながらミリミリも歩き出す。

「かしこまりました。 ミリ、ミリ様」

「ミミ有難う!」

「礼なんていいよ。今回は特別。ライバルなんだから次も助けるとは限らないからね」

「うん、分かった!」

「じゃあ、決勝でねー」

 そう言ってミリミリは去っていった。
 その後ろ姿にリッキルトも無言で一礼したのだった。
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