妹が可愛すぎるので絶対聖女にならせて見せます。

丁太郎。

文字の大きさ
10 / 50

10話 私は準備を進める

しおりを挟む
 私の可愛いアイリも12才になり、いよいよ来週王都にある聖女育成学校、通称 聖女学園に通うことになった。

 今から先立つこと2ヶ月程前、学園の試験官を招いた。
 アイリの能力を測定してもらうためである。
 招いたのには理由がある。
 もし、アイリに才能無しと判断された時の為。
 試験は面談で行われる。
 アイリには試験であることは伏せ、聞き取りということになっている。
 もし、合格しなくても本人に知らされることは無いし、周囲に漏れることはない。
 それに、駄目だった場合別の手段もある。
 その為、財力のある貴族家は試験官を招くのが普通なのだ。

 とりあえず、試験官を盛大に饗す。
 試験官は女性だった。対応も慣れたものだった。
 試験の前日からお越し頂き、夕食も一緒に食べた。
 私は試験官にお会いした瞬間、この試験官には袖の下は通用しないなと思った。
 直感ではなく、力を使って鑑定したのだ。
 鑑定結果では性格的に曲がった事を嫌うと出ていたのだ。
 私は父様が変な事を言い出さない様、夕食の時に仕掛けた。

「アイリ。お姉ちゃん アイリのお歌をまた聞きたいわ。とっても素敵なんですもの」

「お姉様。お客様の前で恥ずかしいです」

 恥ずかしがるアイリ。
 恥じらうアイリも可愛い!

「お願いアイリ。駄目?」

 懇願してみせる。

「アイリ。私も聞きたいな」

「アイリちゃん。私も聞きたいわ」

 打ち合わせはしていないが 父様も母様も乗ってきた。
 この二人は乗ってくるだろうということは織込み済みである。

「もう、父様も母様もこんな時に」

「私も聞いてみたい。お願いできませんか?」

 試験官も乗ってきた。
 この流れで断れるアイリでは無い。
 アイリは慈愛の魂の持ち主なのだ。

「わかりりました。お耳汚しですが歌わさせて頂きます」

<やった! 作戦は作戦としてもアイリの歌を聞ける!>

 私はすかさず力を使う。
 残響時間という言葉をご存知だろうか?
 私は前世でこの言葉を知った。
 簡単に言えば音が反射して響く時間のことだけど、
 響きすぎると声は聞き取りにくくなり、あまりに響かないと音楽の余韻が少なくなる。
 前世で聖女学園建設の際、建築技師から聞いた言葉だった。
 私はこの部屋の残響時間を歌に最適になる様に調整したのだ。

 私はこうしてアイリに歌を披露させた。
 それだけ、それだけのことではあるが効果は抜群だ。
 果たしてアイリのアカペラの歌は試験官を心を癒やした。
 きっとアイリのミラクルボイスに魅了されたことだろう。
 私も改めて魅了されたのは言うまでもない。
 父様も母様も涙を流して感動していた。

「素晴らしい!感動しました。これほどの歌を披露していただけるとは王都より来た甲斐がありました」

<この試験 貰ったな!>

 試験官の言葉を聞き、私は勝利を確信した。
 
 私はアイリの鑑定をして以降、アイリと自然に歌を歌う機会を増やし、マナーと称して滑舌訓練を一緒にした。
 腹式発声も講師を招いて一緒に学んだ。

 スキルを伸ばすだけでなく技術も楽しく学ぶ。
 楽しくというのが重要だ。
 アイリが楽しくなかったら全く意味がない。
 こうしてアイリは歌うことが好きになった。

 そしてその魅惑のヒールボイス(私が勝手に名付けた)に
磨きをかけるために、ボイスケアも怠らない。
 自然な流れで飴を一緒になめたり、喉を休ませたりした。

 飴ははちみつをベースに私が研究に研究を重ね開発したものだ。
 喉に良いハーブなども配合し、且つ美味しい。
 仕上げに私が力を使い、祝福をかけた効果抜群のものだ。
 まあ私が施した訓練やケアはアイリの魅惑のヒールボイスの1%の足しになればと言う程度のもの。
 それほどに、アイリの声は美しく、聞くだけで癒される。
 お姉ちゃん気を抜くと魂が昇天しちゃう。

 ちなみに兄様はアイリの歌を知らない。
 騎士養成学校は厳しい。
 卒業まで夏休みであっても帰省は許されず、訓練に明け暮れるのだという。
 兄様もアイリの声を聞いたらそれだけで萌えすぎて昇天すること間違いなしだ。

 本試験の面談は形だけのものとなった。
 試験官もアイリのカリスマボイスに魅了されてしまったからだ。
 去り際、父様に

「お嬢様は合格です。是非学園にお招きしたい。」

 と言ったという。

 ここまでは予定通り。
 アイリは既に高等位修了までの学力がある。
 私はアイリが学園生活で十分青春出来るようにしてあげたかった。
 アイリは褒めて伸びるタイプだったこともあり、私は褒めて褒めて褒めまくった。
 その結果、アイリの学力はうなぎ上りにぐんぐん伸びたのだ。
 学業でアイリが苦労することは無いだろう。
 お姉ちゃん、姉としてとても鼻が高いわ。
 こうしてアイリが夢を叶える為の扉は開かれた。

 しかし、しかしである。
 来週、アイリが王都に行ってしまったら私はアイリと離れて暮らすことになってしまう。
 アイリの学園生活を見守り、手助けすることが出来ない。
 その場合、私はどこかの貴族に嫁ぐことになるだろう。 
 今でも縁談がひっきりなしに来るらしい。
 今のところは父様が全て突っぱねてくれている。
 しかし、いずれはそうもいかなくなる。
 これはわかっていた事。
 だから私はこの時の為、準備し、自身を鍛えてきたのだ。

 アイリの入学が決まった夜、私は父様にお願いした。

「父様。お願いがございます」

「リリー、今日はなんだい。言ってごらん」

 相変わらず優しい父様の口調。
 言えば、怒られるかも知れない。
 けれど、これは突破しなければならない試練だ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 出立の朝。
 朝食を済ませた後、いよいよ出発の時間となった。

「父様、母様、行って参ります」

「ああ、頑張るんだよ」

「アイリちゃん体には気をつけてね」

「はい、父様、母様もお体には気をつけて……それで、あの、お姉様は?」

「ああ、リリーは……遅いな」

「リリーさんもすぐに来るわ」

「お待たせ。アイリ」

 家族の前に姿を現す私。

「お姉様!その格好は?」

 ふふふ、驚いているアイリも可愛い!

「丁度、ヘレンが出産の為お休みしているでしょう?だから私が代わりに行くのよ」

 アイリはメイド服を着た私に驚いている。
 そう!そうなのである。
 貴族の子女はお付きのものを一人同行させる。
 学園は全寮制となるが、各貴族家の場合、ルームメイト制は取らず、1名につき部屋続きの2室を与えられるのだ。
 だから1室は、ドレスルーム兼お付きのメイドの為の部屋となる。

 ちなみにヘレンは兄差様とマッスール騎士長の試合の応援に行ったのをきっかけに騎士長に見初められた。
 騎士長の猛アタックを躱し続けたヘレンだったが、昨年ついに観念したのか騎士長と結婚。
 結婚後も本人の希望でアイリ付きのメイドを続ける予定だったけど、すぐに妊娠。(結婚した日と計算が合わないけどね)
 そして現在は出産に備えてお休みを貰っている。

 この件に関して私は力を使っていない。
 恋愛には空回りするので使っても効果ないから。
 ただ、私がメイドとしてアイリについて行きたいと事前にヘレン相談したのが彼女に結婚を決意させたのかも知れないとは思っている。

「お姉様にメイドをさせるなんて、とんでもない!」

「私じゃ嫌?」

「そんな!私がお姉様を嫌うことなんてあり得ないです」

「それでは、一緒に行きましょう? お姉ちゃんアイリのお世話するの大好きよ」

「もう、お姉様」

「リリー、気をつけてな。アイリのことを頼んぞ」

「リリーさん。体には気をつけてね。アイリちゃんをお願いね」

「はい。 父様、母様行って参ります」

 アイリが今更 反対してももう遅い。
 学園にはお付きの者として私の名前が登録されているのだ。
 前代未聞なので学園側から念押しがあった。
 むしろ私も学園に入学しないかと誘われたくらいだった。
 10才で高等位を修了した私の学力を買ってくれたのだろうけど丁重にお断りした。
 私はアイリのお付きのメイドになるため、修行してきたのだから。

 私はアイリの手荷物を持つと馬車まで歩きだす。

「お姉様。そんな! 荷物くらい自分で持ちます」

 アイリは慌てて後を追いかける。
 相変わらずアイリは可愛い!
 私は、御者に荷物を渡すと馬車の扉を開いた。

「さあアイリお嬢様、お乗り下さい。出発のお時間ですよ」

「お姉様! お姉様にそんな呼ばせ方はできません」

「あら、人目のある所ではこうじゃないと変でしょう?」

「それは、そうですけど……」

「二人の時は今まで通りに話すわ。乗りましょうアイリ。ふつつかものですがよろしくね♡」

 アイリの手を取り馬車に乗り込ませる。
 レディーファーストは基本よね。

「もうお姉様ったら」
 
 アイリの顔は赤い。 
 赤い顔のアイリも可愛い!
 そしてその表情にすこし安堵があったのを私は見逃さない。

<アイリを不安になんてさせないわ。これからがお姉ちゃんの腕の見せ所ね>

 馬車が出発する。
 これからアイリと新しい生活が始まるのだ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

処理中です...