妹が可愛すぎるので絶対聖女にならせて見せます。

丁太郎。

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19話 私を酒場に連れてって

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 この週末、私は王都で流行りの歌姫がいる酒場に連れて行って貰える事になった。

 コアトレーニン様。
 私がユニスリー家の者であることを知って、わざわざ挨拶に来てくれた。
 私の事を兄様から聞いたのだろうか?
 それは考え難い。

 初めてお会いした時、私は名乗らなかった。
 そして兄様は私の事情を察した上で紹介をしなかった。
 だからその後に私の事を話してはいないだろう。
 今日の兄様の態度は不請不請だった。
 コアトレーニ様から言い出した事なのだと思う。
 ということはコアトレーニ様は、私がユニスリーであることを調べたという事になる。
 そういえば、初めてお会いした時、私をじっと見つめていた。
 理由は判らないけど、兄様のご友人で身分もある方だ。
 変な事はしてこないだろう。
 ただ、少しだけ警戒はしておこうと思う。
 アイリを待たせる訳には行かないので急ぎ戻る。
 アイリは私を待っていてくれた。

 アイリは本当に優しい娘。
 お姉ちゃんは感動よ!
 こんなに可愛いアイリが私の妹になってくれて、神に感謝するしか無い!
 ここで抱きしめる訳にはいかないので、私達は部屋に戻ってきた。
 私の夕食時間までには少し時間があった。

「お姉様。お客様ってどなたでした?」

 ベッドに寝転がったアイリが私聞いてきた。

「ダン兄様とコアトレーニン様よ」

「お兄様が? 何の用だったの?」

「お兄様と言うより、コアトレーニン様の用かしら。私に挨拶したかったみたい。私の正体がバレていたわ」

「お姉様は美しいから惚れちゃったんだよ」

「まぁ、そんな事言ってお姉ちゃんを誂うなんて」

 怒ったふりをしてみせる。

「えへへ。お姉様の怒った顔可愛い」

「もう、アイリったら」

 私はアイリを抱きしめる。

「そうそう、週末に1番流行りの歌姫のいる酒場に連れて行って貰える事になったから、行って来ようと思うの」

「えー! お姉様本当? いいな。アイリも行きたいな」

「流石に学園生が酒場に行ったのが見つかってしまったら退学になっちゃうわ」

「うーん、それはそうだね。残念」

 ウィンクするアイリ。
 可愛すぎる!
 私はアイリを再び抱きしめる。

「お姉様、苦しいよー」

「ごめんなさい。あまりにアイリが可愛くて強く抱きしめ過ぎてしまったわね」

「苦しいけど、お姉様いい香りがしてアイリ大好きよ」

「もう、アイリったら」

 三度、アイリを抱きしめようとして、アイリに止められた。

「お姉様、話が進まないよ」

「そうね、残念だけど我慢するわね」

「それで、お姉様 コアトレーニン様とデートなんだ」

 キラキラした目で私を見つめるアイリ。
 そんなアイリの目をずっと見つめていたい。
 でも、アイリに言葉が私は理解できずに思わず聞き返してしまった。

「デート? 私とコアトレーニン様が?」

「そうだよ。二人でいくんでしょ?」

 あぁ、なるほど、私の説明が足りなかったか。
 そういうのは避けなければならない。
 だから秘策がある。

「デートでは無いわね。お兄様も一緒よ。それにエマも誘おうと思ってるの」

「それって、ダブルデートだよ?」

「うふふ、それで」

 私はアイリの耳元に顔を近づけ小声で内緒話をする。

「え! 本当に!?」

「いいアイディアでしょう?」

「それなら、学園関係者と判らないね。でもコアトレーニン様がっかりしない?」

「どうかしらね? でも学園の関係者と知られないことが重要なの。アイリにもお着替えを手伝ってほしいわ」

「うん。アイリ頑張るね。2人のびっくりする顔が楽しみだね」

「うふふ。 そうね」

 私たちは悪巧みをする少年のような笑顔で笑い合うのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ーーーという事があって、この週末に流行りの歌姫のいる酒場に連れて行って貰えることになったの」

 次の日の夕方、アイリの部屋にシャルとエマを招き、週末の件を説明した。

「へえ、それは良かったわ。行けないのが残念だけど」

 流石にシャルは立場を判っている。

「それで、エマさんにも一緒に来てほしいの」

「ええ! 私!? ダンベルハワー様とコアトレーニン様がいらっしゃるんですよね? 恐れ多いです」

「私一人では流石に怖くて。エマさんが一緒だと心強いのだけどお願いできない?」

「ただね」

「ただ?」

 アイリの言葉にシャルとエマは怪訝そうな表情を見せる。
 私とアイリはクスクス笑うのを堪えながら二人に顔を近づける。
 二人も身を乗り出してくる。
 そして……

「それは面白いわね! 私も協力させて貰うわね。 エマの方はこちらで完璧に仕上げてみせるわ」

「シャル様!」

「エマ。こうなったら観念なさい。無敗の貴公子様と常勝騎士様に会えるのよ? もっと喜びなさいな」

「お一方だけでも緊張しますのに、お二方一緒にだなんて心臓が止まってしまいます」

「エマさん お願いできませんか?」

 アイリも心配そうに見つめる。

<私もアイリに心配そうに見つめられたい!>

 やがて皆に見つめられてエマも覚悟が決まったようだった。

「皆様に期待されてはお断りする訳には参りません。シャル様の為、歌の調査に同行させて頂きます!」

「ありがとう! エマさん!」

 エマの手を取って喜ぶ私とアイリ。
 エマも嬉しそうであった。
 シャルはその光景を見ながら微笑んでいた。

<それにしても、リリーは人たらしね。>

 シャルの思考は読むことはできないけど、シャルも期待してくれているのだろう。
 お姉ちゃん、アイリの為にも歌を完コピしてくるわね。
 それが、一緒に連れていけない二人への私のお詫びでもあるのだ。


===============


 週末。
 約束の時間がやってきた。
 今、聖女学園寮近くの待ち合わせ場所にいる。
 僕は目立ってしまうからリリーの要望で、人目のつきにくい場所で待ち合わせだ。
 僕の人気がありすぎて、僕とリリーが一緒にいるのを兄妹と知らない者が見た場合、恋人に間違えられる可能性が高い。
 そうなるとアイリの立場が悪くなる。と、リリーから諭されているのだ。
 僕としてもアイリに敵を作りたくないからリリーの配慮に従っておくとする。
 リリーは妹思いの素晴らしい妹だ。

 僕はこれからトレーニと共にリリーを酒場に連れて行く約束をしている。
 この日の為に、最もの人気のある歌姫のスケジュールを調査し、今日歌う酒場の予約までとってある。

 先日の夕方リリーが王都のユニスリー邸にやってきてもう一人追加を頼まれたけど、追加の予約もばっちりだ。
 リリーにあんな瞳で頼まれたら断る兄なんていない。
 今思い出してもゾクゾクする!
 兎も角リリーを失望させることなど万が一にも無いだろう。
 とはいえ、トレーニが一緒に行くことは実に気に入らない。

 リリーはまさかトレーニに気がある?
 だとしたら僕は兄としてどうするべきか……
 トレーニの顔を見る。
 こいつにしては少し緊張しているようだ。
 緊張している顔なんて初めて見るな。

!!

 もしやトレーニもリリーに?
 ひょっとして二人は相思相愛なのか!?





























 決闘だ!

 そうだ決闘だ!

 もしそうなら全力で立ち塞がるぞ!
 だってそうだろう?
 僕は兄だ!
 僕に勝てないような奴にリリーの未来を任せる訳には行かない。
 僕が覚悟を決めたまさにその瞬間、天使の声が聞こえてきた。

「お兄様、トレーニ様お待たせしました」

「リリー! こちらも今来たばかり……」

 思わず言葉が止まってしまった。
 トレーニも驚きのあまり声が出ないようだ。
 僕たちの前に現れたのは4人。
 アイリと公爵令嬢様と、あと

 男装した2人の麗人だった。
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