妹が可愛すぎるので絶対聖女にならせて見せます。

丁太郎。

文字の大きさ
36 / 50

36話 私はおかしくなってしまったのかも知れない

しおりを挟む
 私がアイリの世話係から外れて1ヶ月。
 今日も私は窓辺から見える空を眺めていた。

 兄様の勧めに従って私は王都の邸宅に留まった。
 実家には兄様の方から連絡してくれた。
 私に関しては兄様が責任持つ事になったと聞かれされた。
 
 兄様は多数ある客間の1室を私の部屋として与えてくれた。
 私は貰った自室から、ほぼ出ること無く過ごしていた。
 何もやる気が出ず、自身でもどうにも出来ない。
 力を使えば治るのかも知れないけど、その気にもなれない。

 私がアイリに依存していたのだとハッキリ判ってしまった。
 アイリにはきっと重荷だったよね。
 だから今回の件は自業自得。
 愚かなお姉ちゃんでごめんなさい、アイリ。

 今回の件が無くても、いずれアイリは私の元から飛び立ってしまう。
 それ以降の自分の生き方について、私はまったく考えていなかった。
 なにか考えないと。
 でも何も考えつかなかった。 
 本当に思いつかないのか、考えたく無いのかも判らない。
 ただ考える気になれないでいるのは判った。
 
 病は気からというけど、私は臥せりがちになった。
 本当の病気なら力を使えば治るのは判っている、が、やはりその気になれない。
 落ち込むあまり、病気と錯覚しているだけかも知れない。 
 そんなで私は臥せっているか、空を眺めているかのどちらかで一日を過ごしていた。

 トレーニ様が何回かお見舞いに来てくれた。
 でもどうしても会う気になれず、都度引き取って頂いた。
 こんな姿を見せたくない。
  
 今日も空を眺めていると、ノックされた。
 きっと兄様だ。
 
 私はお付き者をつけていないので応対してくれる者はいない。
 私は返事もせず、急ぎ扉まで歩くととそのまま扉を開ける。
 扉の向こうにいたのはやはり兄様だった。
 今日は休暇の日のはずだから来るとは思っていた。

「リリー具合はどうだい?」

「今日は随分と調子がいいです。兄様どうぞ」

 兄様を部屋に入れ、扉を閉める。

「今日も空を眺めていたのかい?」

 窓辺に置かれた椅子を見た兄様が振り向きながら言った。

 私は、自分でも判らないけど振り向いた兄様に抱きつき胸に顔を埋めていた。
 振り向いた直後なのに、体勢を崩す事無く兄様は私を受け止めてくれた。

「兄様、妹分の補充でしょう?」

「今日は随分と積極的だね」

 そういって私を抱きしめてくれた。 
 私は、アイリに依存出来なくなったから、兄様に依存しようとしているのかしら。
 判らない。
 判らないけど、兄様に抱きしめられている今、私は安らぎを感じている。
 これでは、私が兄様分を貰っている感じになってしまっているわ。
 そもそも、妹分とか兄様分がなんなのか判らないけど。

 しばらくして兄様が私を離そうとした。

「兄様、もう少しだけお願い」

 顔を赤くしながらそう懇願する私。

「ああ、いいとも」

 私の方から延長してしまうとは。
 ああ、やはり私はアイリの代わりに兄様に依存しようとしている。
 でも、依存しすぎて兄様にも嫌われてしまったら。
 私は私に好意を寄せてくれる人に依存し、次々に嫌われて……
 やがて私は一人に……

<ヤダ…… 一人は怖い>

 気がつけば私は震えていた。

「兄様、私は兄様にご迷惑を…兄様にまで嫌われたら私は……」

「リリー、大丈夫。大丈夫だよ。いくらでも甘えてくれていいんだ。僕がリリーを嫌うなんてありえ無いよ」

 その言葉は優しく、力強く、安心を与えてくれる。
 私は縋るように兄様の背に手を回し、必死に抱きしめ、いえ、しがみついていた。
 そんな私を兄様は優しく抱きしめてくれていた。




「リリー、落ち着いたかい?」

「はい……兄様、ご迷惑をお掛けしました」

 顔を真っ赤にしてるだろう私を見て兄様は苦笑していた。
 なんで兄様はいつも余裕綽々なのだろうか?

「むしろ僕は嬉しいけどね。そうだ、元気になったらでいいけど仕事を手伝ってくれないか」

「どのようなお仕事です?」

「僕の秘書なんてどうだい、騎士団の仕事ではなくて領地経営の方だけどね」

「領地経営は父様のお仕事なのでは」

「実はこの屋敷の運営を含め領地の一部を任されていてね。来年には近衛を除隊し正式に跡を継ぐことになるから、リリーにも是非手伝ってほしい」

 兄様が私に仕事を………
 なぜだろう、その言葉私は喜んでいる。

「はい、是非お手伝いさせて下さい。何もせずここにいるのは申し訳なくて」

「気にしなくていいさ。でも、ここにいる大義名分はできるね。なに大丈夫。直ぐにアイリの方から戻ってきて、ってお願いにくるさ」

「兄様……本当にありがとう。でももしそうなっても私はもう戻れないわ」

「……アンリの事かい?」

 相変わらず兄様は察しがいい。

「はい、アンリの気持ちを踏みにじりたくないの」

「うん。そうか、そうだね」
 
「兄様もう一回だけ強く抱きしめてくれませんか」

「いいとも。願ったり叶ったりだよ」

 兄様は私の願い通り力強く抱きしめてくれた。
 私は安心と喜びを感じながらも兄様に告げた。

「私はいずれどこかに嫁がなければならないけど、でも、それまでは兄様の為に尽くします」

 私がこんなセリフを言う日が来るなんて思ってもみなかった。
 でも、兄様にそう告げたら、元気とやる気が出てきたのを感じた。
 私は単純な女だと思う。
 兄様に仕事を頼まれただけで、あんなにしぼんでいた心が活き活きと弾みだしたのだから。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

処理中です...