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雲行きが怪しくなってきた

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私とヘルゼさんは再び王城へと向かい、門番にアウディベル子爵からの手紙を渡すと、先程頑として通してくれなかった門番が今回はすんなり通してくれた。やっぱり貴族からの手紙の効果ってすごいんだな。

そんなことを思いつつ、普段は入れないような豪華な客室でソワソワしているヘルゼさん止まっていると、10分ほどして王様が入ってきた。

「おお、ミユでは無いか。久しいな。」

「お久しぶりです。王様。」

私が王様に挨拶をすると、王様はヘルゼさんの方へ向き直る。

「うむ、で、其方は?」

「お、お初にお目にかかります。私、ヘルゼ・スクラムと申す者です。ミユの友人です。」

たどたどしくも、しっかり挨拶をするヘルゼさん。王様はそんなヘルゼさんを見ながら微笑んだ。

「そう畏まらなくてもよい。我はファンデルワース・ド・エブリミス。このイザベルの王だ。」

そう言って王様は私に向き直り、こう言った。

「子爵からの手紙は読んだ。エルビスのことだったな。」

「はい。エルビスが不当な条件でファリン族の住む森にある魔力石を求め、それを拒否したファリン族に一方的に攻撃を仕掛けています。」

今ファリン族で起きている現状を一生懸命に説明する。ヘルゼさんも時折補足を入れてくれる。王様はそんな私達の話を真面目に聞いてくれた。そして私達の話が終わると王様は頷くと、こう言った。

「ふむ・・・貴殿らの話は分かった。実は我もエルビスには少々興味があってな。」

「と、いうと?」

「ミユよ。エルビオン王はつい先日、獄中で自死した。」

え?!あの人自殺したの?!

「明け方に憲兵が不審な音を聞いて様子を見に行くと、エルビオン王が舌を噛み切っているのが発見されたのだ。憲兵はすぐに医師を呼んだが、すでに事切れていた。検死してみたところ、妙な紋章が胸部に刻まれているのが見つかってな。」

そう言って王様は私とエルゼさんに紋章の描かれた紙を見せてくれた。その紋章を見た瞬間、ヘルゼさんは口を押さえる。

「これって・・・!」

「そう、これは死者蘇生の紋章だ。」

・・・なんかすごそうな名前の紋章が出てきたな。おそらく名前の通りの効果を発揮する紋章なんだろう。そう思っていると、ヘルゼさんが私に説明してくれた。

「死者蘇生はね、膨大な魔力と引き替えに死者を蘇らせることの出来る大魔法よ。ただ、それは理論上の話で実際に成功させた人はいないという話だったはずなのに・・・」

「その通りだ。死者蘇生に必要な魔力は膨大で、1人の人間を蘇らせるには100人もの人間の魔力が必要となるとされているのだ。」

ヘルゼさんと王様の話を聞いて、私はピンときた。

「も、もしかしてこの人を蘇らせたのはエルビスの人だというのですか?!」

「ああ、私はそう睨んでいる。その証拠に、エルビオン王の身につけていた小物類がエルビス製の者だと言うことがつい先日明らかになった。」

「じゃ、じゃあ、エルビスが魔力石をほしがっているのって!」

「おそらくは。死者蘇生の魔法を行なうためであろう。」

王様は重苦しく言う。

窓の外では土砂降りの雨が降り始めた。
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