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29 逆恨みとリベンジマッチ
しおりを挟む「おらぁ!」
ミーガンは鎌を投げつけてきた
再度剣で弾く。
またこの前みたいに手加減してなぶろうと思ってるのか?
スピードが全然ない。
俺でも剣で弾けるレベルだ。
どうするのかと思えば、さらに普通の剣を抜いて走り出していた。
なるほど、武器は一つじゃないんだな。
「ひゃはは! 死ねぇ!」
「誰が死ぬか!」
物騒な顔と台詞の割には動きが遅い。
剣も普通に避けられる程度だ。
やっぱり手加減してるだろ。この野郎――っ!?
「いたっ」
「ひゃは、は?」
「やりやがったなこの野郎!」
余りにも簡単に攻撃を避けられるものだから調子に乗っていたら、後ろから飛んできた鎌が後頭部に直撃した。
鎌はそのままミーガンの手に。
そこそこ痛かったけどこれも手加減してるらしく、致命傷には程遠い。
HPもそんなに削れてないしな。
あれ、なんか数字多くない?
「お前、今のは直撃だっただろう! なんで平気な顔してやがる!」
「はぁ? お前がこの前みたいに俺をいたぶる為に手加減してるんだろうが!」
あの時の悔しさは忘れてないぞ。
楽しく生きる為にはいつまでも落ち込んでられないから、仕方なく忘れたふりをしてただけだ。
熨斗(のし)をつけて返す機会が来たなら百倍にして返してやるさ。
「こ、攻撃が効かない!」
「うわぁ!?」
「なんだ!?」
轟音と共に視界の端が激しく光った。
突然のことに驚いてミーガンが距離をとった。
ちらっと見てみると、タマが向かわせた二人が手で顔を覆ってのた打ち回っているのが見えた。
もう無力化したらしい。
手際のいいことだ。
「タマの勝ちー!」
「タマ、その二人はロープで縛っておいてくれ」
「あいあい! おいしいチャーシューを作るにはー、まずはお肉を縛りましょー♪」
ここへ向かう途中に、露店で丈夫そうなロープを購入して、何があっても大丈夫なように俺とタマの両方のストレージに入れてある。
買っといて良かった。
そしてタマはご機嫌な様子で縛り上げにかかる。
変な歌はきっと自作だろうけど、それは多分美味しくならないぞ。
「あっちは片がついたみたいだな」
「ちっ、自律型の相棒一匹くらい抑えられねぇのか」
「そりゃそうだ。うちのタマは最強だからな。お前なんか瞬殺間違いなしだぞ」
「うるせぇ! こうなったら本気でやってやらぁ! 後悔するんじゃねぇぞ!」
「こいやぁ!」
ミーガンは叫ぶと俺に突き付けていた鎌から手を離した。
鎌は地面に落ち、ない? 空中に浮いている。
さらに鎌が二つに増えた。
おいおい、そんなのありか。
「オレの相棒は≪飛翔≫と≪遠隔操作≫に加えて≪二本一対≫を取得してある。集中力がいるから常時は無理だが、この状態のオレと戦って生き残った奴はいねぇ!」
「どうせ初心者ばっかり狙ってる癖に、偉そうに言うんじゃねぇよボケ!」
「この、ぶっ殺してやらぁ!」
二つの鎌はミーガンの周りを飛んでいる。
ミーガンが迫ってきた。鎌と同時攻撃をしかけてくる気だな。
夜だからかなり見づらいんだけどどうにかなるか?
使えそうなアクティブスキルは無い。
≪無刀両断≫ならいけそうだけど、一撃でそのまま殺してもなんか味気ない。
きっとなんとかなるだろう。
「おらぁ!」
ミーガンの突き。
避ける。
鎌Aの攻撃。
避ける。
鎌Bの攻撃。
避ける。
俺の反撃。
剣で受けられた。
でも腹ががら空きだ。
蹴ってみた。
後ろには吹き飛んだけど全然効いてる気がしない。
そういえば格闘系の攻撃はダメージが5分の1になるんだっけ。
でも衝撃はそのままらしい。
鎌A? が後ろから飛んできた。
またしても後頭部に直撃した。
痛い。
切りかかったところで横から多分鎌Bがひとりでに切りかかってきた。
見えていたからぎりぎり避ける。
ああ鬱陶しい!
切りかかってきたミーガンの剣を剣で受けてそのまま左に流す。
その背後に隠れていた鎌が襲ってきた。
「とりゃあ!」
ミーガンを受け流した剣を切り返して、左下から思い切り振って鎌に叩きつけた。
ガリャアン! みたいな激しい音がしてマッスル☆タケダ作のショートソードが砕け散った。
力を込め過ぎたか……!
使いやすかったし、謝ってまた売ってもらおう。
武器を失った。
その代わりに、鎌も一つへし折ってやったぞ。
操作出来なくなったのか、壊れた鎌はぽとりと地面に落ちた。
「オレの相棒が! よくもやりやがったなてめぇ!」
「先に仕掛けてきてぐだぐだうるせぇ! こっちは怒ってるんだからな!」
ミーガンが切りかかってくる。
そういえばこいつの動きも妙に遅い。
本気出すって言ってなかったか?
まぁいいや。
あの鎌は鬱陶しいから先に片づけてしまおう。
そういえば使ってなかったスキルがあったな。
ミーガンの斜め後ろの地面に視線をやる。
そのまま一歩踏み出してみた。
「おお?」
「何っ!?」
すると、一歩歩いただけでミーガンは俺の後ろを走っていた。
ミーガンからは俺が消えたように見えただろう。
実際消えたのか? 分からない。
これが≪解放の左脚≫の効果か。
単純にワープだと思えばかなり便利そうだ。
「妙な技を使いやがって!」
反転して俺を追ってくるミーガン。
とりあえずこいつはどうでもいいや。
狙いは、俺の背後をとろうとしていた鎌。
そして一歩歩く。
「また消えた!?」
困惑してるミーガンは置いといて、目の前に鎌。
その鎌に向けて左手を翳す。
ミーガンが再び俺の姿を捉えて駆け出してるようだけ、どもう遅い。
ひとりでに殺人する恐怖の空飛ぶ鎌なんかぶっ壊してやる!
「無刀両断!」
スキルを発動すると、ミーガンの相棒は綺麗に真っ二つに切断されて地面に落ちた。
「ああああああああ!!」
「相棒は死んだ。次はお前の番だ!」
さあて、どう料理してやろうか。
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