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32 成長の理由
しおりを挟む朝だ。
新しい朝だ。
昨日のタマのステータスとスキルのお蔭ですごいびっくりしたけど、もう気にしないことにしよう。
レベルアップの経験値の元くらいは知っておきたいけども。
「タマ、起きろ! 朝ごはんだぞ!」
「朝ごはん! 食べる!」
「よっしゃ行くぞ!」
「おー!」
隣で転がっているタマを起こして食堂の1階へ。
なんか一緒に寝てるけど、何も気にならない。
猫みたいなものだ。
相棒だけど。
食べ終えたらマッスル☆タケダの露店に向かう。
昨日剣が折れちゃったからな。新しいのを買わないと。
武器が無くてもなんとかなりそうだけど、素手だと50分の1になっちゃうからな。
というわけでいつもの場所に来た。
良かった、もうお店出してた。
相変わらずご立派な筋肉でいらっしゃる。
「おはようございます」
「おはよーマッスル!」
「おっす。この時間に来るのは珍しいな。タマちゃんもおはマッスル!」
「おはまっする!」
挨拶をすると気付いたタケダも挨拶を返してくれる。
妙に懐いているタマには、謎のポーズと挨拶まで披露してくれている。
タマは真似しなくていい。
真似すると筋肉になっちゃうぞ。
「すみません。この間いただいた剣が折れちゃいまして」
「もう折れたのか? 失敗作の中でもそれなりに丈夫だと思ったんだがなぁ」
「ええっと、実は……」
事情を説明。
赫々云々。
勿論過激な部分は省いてだ。
暴力的な奴だと思われたくない。
「なるほど、PKの相棒に叩きつけたのか。そりゃあ壊れるな」
「そうなんですか?」
「大体相棒ってのは普通の武器よりもよっぽど丈夫だからな。しかもそいつのはStrとVitの二極振りなんだろう? ま、相手が悪かっただけだ。気にするな」
「ありがとうございます」
二つのステータスだけにポイントを振ることを二極振りというらしい。
タケダは俺が剣を折ったことを特に気にしていないようだ。
むしろ俺に気にするなと言ってくれる。
なんていい人なんだ。
「おはー。あれ、ナガマサさんじゃん。何の話してんの?」
「おっす」
「おはようございます。ええっとですね」
そこでモグラがやってきた。
挨拶をして昨日のことを話す。
タケダにとっては二回目になるが仕方ない。
「あのPK野郎根に持ってたのか。初心者の方を狙うなんて卑怯な奴だねー」
「全くだな。モグラがきちんと仕留めておかないからだぞ」
「次に見かけたらしとめておこうかな」
そして何故か物騒な話になってる。
二人とも顔がマジだ。
「まぁ無事で済んだので、あの人に関しては大丈夫ですよ。次は俺も殺す気で相手しますし」
「でも返り討ちにするなんてすごいよね、ナガマサさんは」
「え?」
「全くだ。初心者専門とはいってもそこそこの熟練者だったんだろ? たいしたもんだ」
「はぁ」
スキルの構成がぶっ飛んでるせいであって俺がすごいなんて意識はこれっぽっちもない。
褒められても気まずいだけだ。
そうだ、聞きたいことがあるんだった。
話題を変えるのに丁度いいし聞いてしまおう。
「それで、昨日タマのレベルが急に上がってたんですけど、どうしてだと思いますか?」
「ん?」
「お?」
どこか考え込むような二人。
何かまずいことでも聞いたんだろうか。
「タマちゃんは昨日一緒に来てた他の二人の相手したんだっけ」
「そうですね」
「その二人の相棒はどんなだった?」
相棒?
どんなと言われても……見た覚えがない。
ミーガンに集中してあとの二人はタマに任せたし、正直気付いたらダウンしてたし見た覚えが全くない。
「タマちゃん、昨日の二人の相棒は見た?」
「見た!」
突然もぐらがしゃがみこんで、タマと目線を合わせた。
小さい子とお話する時によくやるやつ?
タマの見た目は中学生みたいだけど中身はもっと下なイメージだからか、そういうイメージになってしまった。
「どんなだった?」
「んー、針とナイフみたいなの!」
「それにタマちゃんは何かした?」
「折った!」
タマはすごくいい笑顔だ。
きっと昨日もその笑顔のまま相棒をへし折ったんだろう。
恐ろしすぎる。
「なるほど。分かったぞ」
「今の会話で何か分かったんですか」
タケダが全てを理解した顔で頷いた。
モグラは立ち上がって真面目そうな顔をしている。
一体何が。
どんな深刻な内容なんだ?
「ああ。タマちゃんは可愛い」
「あんた実はアホですね?」
「俺はマッスルだ!」
「タケダさんはちょっと黙っててください!」
まったくもう。
ちょっと緊張した俺がバカみたいだ。
「で、なんですか?」
「ああ、多分原因は相棒を破壊したことだと思うよ」
相棒?
相棒を倒すと経験値になるのか?
普通より多く?
「相棒を育てる方法は覚えてる?」
「ええと、基本的にはそれぞれの相棒と同種のものを破壊するか吸収させるか、でしたよね」
「そう。まさにそれだね」
それ?
同種のものを破壊するか吸収するか、ってこと?
でもタマは種別のところが≪???≫になってて何が同種か分からないし……あっ。
「まさか」
「そう。そのまさかだよ」
同種のもの。
種別が分からないタマでもまさにぴったり同じ種類のものがあるじゃないか。
「相棒は、人の相棒を破壊すると大きく成長するんだ。そしてそれが、PKが起こる大きな要因でもある。勿論、お金やアイテム目当てもあるんだけどね」
相棒は種別として≪相棒(パートナー)≫も持っている。
だから人の相棒を壊せばかなり成長するのか。
タマのステータスを見てから破壊した相棒は4つ。
タマは経験値が1万倍されて入る。
あそこまで上がっても全然おかしくないな。
「ありがとうございます。謎が解けてすっきりしました」
「いやいや、お役にたてて良かったよ」
「そういえば新しい剣を用意してやらないとだったな。今回はしっかり金払ってこのマッスル☆タケダの自信作を買って行ってくれ!」
「はい、そうさせてもらいます」
何故か筋肉を強調するタケダから、並べられている武器に視線を移す。
さてと、お金も少しは増えたから良いものが買えると思うんだけど、どれにしようかな。
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