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102 ソロ狩りと物欲センサー
しおりを挟む約三時間と三十分が経過した。
緑色の宝石はまだ出ない。
ジュエルマン(黒)のドロップである≪ブラックダイヤモンド≫や、他の宝石は拾えたのに緑色の宝石はまだ出ない。
ルビーに至っては七個も拾ったのに、緑色の宝石はまだ出ない。
ジュエルマン(緑)のコインはドロップしたのに、緑色の宝石はまだ出ない。
なんで出ないんだよ!!
コインの方がドロップ率低そうなのに、わざわざ緑のやつのコインが落ちるのがまた嫌らしい。
盛大にバカにされてる気分だ。
腹いせに一旦≪輝きの大空洞03≫に突撃して≪古代異界烏賊≫をぶちのめしたお陰で怒りは収まったが、拾えていないという事実は変わらない。
一時間単位で狩りをしているからはみ出した三十分は休憩と烏賊への八つ当たり分だ。
「どんどん狩るぞー!」
「キュルル!」
「私もまだいけます!」
タマとおろし金は元気一杯だ。
ミルキーもまだ大丈夫と言ってくれている。
気分的には宝石で出来た人形を破壊してはアイテムを拾うという、宝探しに近い。
危険なんてないからな。
お陰で精神的にそんなに疲れていないようだ。
コインだけ落としたのは何故だかあざ笑われてるような気がしたんだけど。
「よし、もう一回周ろう。おろし金、悪いけど緑色以外を狙ってくれるか? 他はどんどん蹴散らしてもらっていいからな」
「キュルル!」
「ナガマサさん、私も一人で行きます」
「え、大丈夫?」
「大丈夫です。地形にも慣れましたし、ナガマサさんのスキルのお陰で怖くありません!」
ミルキーはステータス的にはもうここのモンスターは余裕だ。
俺と違って職業スキルでのステータスへの補正はIntにしかかかっていないが、タマのユニークスキルである≪全能の種≫の効果だけでも、今や全てのステータスに120000もの補正がかかっている。
それだけでもうこのダンジョンに敵はいない。
だから最初は不安そうにしていたミルキーも、効率を上げる為に単独行動を申し出てくれた訳だ。
さっきまでの様子なら危険は無さそうだしお願いするか。
出来れば今日中に依頼を達成しておきたいし。
「それじゃあみんなバラバラに散ろう。一時間後にここに集合だ」
「いえっさー!」
「はい」
「キュルル!」
タマとドラゴンモードになったおろし金は一旦奥へ行くようで、凄い速さで消えて行った。
俺もミルキーに片手を上げて出発した。
久しぶりにソロでの狩りになったが……あれ、タマは最初からいたし厳密にはソロって初めてか?
まあいいや。
ソロ狩りとは言っても危険はない。
ただひたすらに、視界に入るモンスターを砕いては投げ砕いては投げ。
格闘攻撃の威力が上がっているおかげで、素手でも問題なく倒せる。
剣は仕舞ったまま、距離があればデコピンで≪裂空指弾≫が発動。相手は死ぬ。
距離が詰まれば拳で叩く。相手は死ぬ。
後はドロップアイテムを拾う。
さっきも言ったが、もはや狩りという気分ではない。
宝探しか、単なる収穫ぐらいの気軽さだ。
ジュエルマンがこの世界の世界感的にどうやって増えるかは謎だけど、こいつら畑に植えたり出来ないかな。
育ったら宝石を収穫出来る、みたいな。
拠点すらまだなのに畑のことを考えても仕方ないか。
――冷静に考えたら、この宝石で作られた人型を畑に植えるなんて出来ないだろ。
あまりにも目当てのアイテムが出ないから、疲れてるのかもしれない。
この一セットで出るといいんだけど。
「おおおおお! 出た! やった!」
晩御飯のことを考えながらドロップアイテムを拾っていると、緑色の宝石を見つけた。
思わず喜びの声をあげてしまった。
嬉しかったんだから仕方ない。
でもちょっと恥ずかしいから、近くに誰もいなくて良かった。
≪エメラルド≫をストレージに仕舞う。
緑の宝石はエメラルドだったか。有名だし、分かりやすかったな。
これでとりあえずは依頼達成だ。
時間まで後十分。
せっかくだから二個目を狙ってギリギリまで狩ろう。
結局拾えたのは一個だけだった。
待ち合わせ場所で待機していると、ミルキー、おろし金、タマの順番でほぼ同じタイミングで帰還してきた。
ミルキーもすっかり瞬間移動を使いこなせてるみたいだな。
「みんなどうだった? 俺は拾えたよ――」
「見つけたモジャー!」
「キュルル」
「二個も拾いました!」
「「ん?」」
「いっぱいだー!」
問いかけながらエメラルドを取り出すと、これまたほぼ同時に全員がエメラルドを差し出した。
おろし金は口に咥えてるけどどこから出した?
ミルキーは二個も持っている。
思わずミルキーさんと顔を見合わせてしまった。
タマは沢山あることに喜んでいるが、なんとも複雑な気分だ。
「ふふっ、タイミングが良いですね」
「あはは、ほんとにね。まさかあれだけ出なかったのに一緒に拾ってくるとは……。俺達らしいのかな?」
「そうですね」
「タマ達は仲良しだからね!」
「そうだな。タマもおろし金もえらいぞーよしよしよし」
「うわー!」
「キュルル!」
ミルキーが笑い出したことで、俺も釣られて笑ってしまった。
全然出なかったのが一気に出てしまうところがなんとなく、俺達らしくて面白いと思えた。
タマとおろし金をめいっぱい褒めておく。
二人まとめて撫でまわすと、二人とも嬉しそうな声をあげた。
さぁ、帰ってシエルにこの宝石を渡そう。
ミルキーがなんとなくうずうずした様子で俺の方を見てるのは、きっと気のせいだ。
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