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135 呪いの家具
しおりを挟む拠点へ――もう我が家だな。
我が家へ戻ってきた俺達は模様替えを開始した。
ミルキーの指示に従って、どんどん配置していく。
一回置いてみて、気に入らなければ動かして、確かめて、模様替えは奥が深い。
正直使いやすければ位置は適当で良いかと思ってたが、実際やってみると楽しい。
張り切ってたミルキーと同じくらい楽しんでる自信がある。
「これはこっち?」
「はい、そこにしましょう」
「これは……ここにした方がいいかな?」
「うーん、そうですね、そこにしましょう」
「よいしょ」
「タマはここー?」
「そうだな、ここに置いておこう」
「モジャジャジャジャジャ」
「怪しい言葉を呟く何かが設置してあるんですけど」
「目を合わせるとモジャになるぞ」
「それは嫌ですねぇ」
軽口を叩きながらも模様替えは進んでいく。
モジャモジャ言ってる家具は、撤去しておかないとみんながモジャになってしまう。
リビング等の共有スペースが終わり、次は個室だ。
個室は五個あるが、その内二つは一階で残り三つは二階。
一階の部屋は多分八畳くらい。二階の部屋は十二畳くらいだ。
話し合った末、俺とタマで一部屋、ミルキーに一部屋割り当てられた。
どちらも二階の部屋だ。
他の部屋の使い道は今のところ未定。倉庫やお客さん用の部屋になるんじゃないかと思う。
部屋の真ん中で、ストレージから家具を出しては配置を考える。
タンスはここで、ベッドはここ。
うーん、本棚を買ってみたけどこれはこっちがいいかな?
タマはこっちに置いておいて、ここにはつい買ってしまった花瓶を。
やっぱりベッドはこっちにしよう。
タマはここに飾って、ここにはテーブル。
俺の部屋は土足厳禁にしようと思うから床に座って使う低いタイプのものだ。
入口にはカーペットを敷いておいて靴はここで脱ごう。
タマはあっちが――。
「タマ、ミルキーを手伝って来るといいよ」
「はーい!」
タマをミルキーの元へ応援として送り出す。
俺が家具を運んだ後、中央でわくわくした顔で待ってたからつい付き合ってしまった。
家具になりたいのか?
配置しても戻ってくる呪いの家具が無くなって捗る捗る。
うん、飾り気はほとんどないけど、良い感じの部屋になったんじゃないかな。
誰かが部屋に近づいてくる気配がする。
手を止めて入口を眺める。
入口から顔を覗かせたのは、タマの襟首を持ったミルキーだった。
ちょっと怖い顔してる。
タマは猫みたいに大人しくなってるけど、苦しくないのか?
「ナガマサさん、タマちゃんの面倒見ててもらえませんか?」
「もうしわけありませんでした」
「モジャしわけありませんでした」
どうもミルキーもタマに邪魔されて、俺に苦情を言いに来たようだ。
駄目だったか。
「置いて欲しそうに見つめてくるのは可愛いんですけど、置いても置いても戻ってくるので模様替えが進まないんです。置かれてる間はずっとモジャモジャ呟いてますし……」
「ごめんごめん。俺の方はもう終わったから手伝おうか?」
「あ、大丈夫ですよ。私ももうすぐ終わると思います。タマちゃんはナガマサさんと遊んでてね」
「分かった」
「はーい!」
タマを置いてミルキーは去って行った。本気で怒ってた訳じゃなさそうで良かった。
ミルキーもタマと仲良しだしな。
今はちょっと作業に集中したかっただけだろう。
しばらくしてミルキーが俺の部屋へやってきた。
俺は床で、タマはベッドでゴロゴロしている。
自分の部屋でくつろぐのもしばらくやってなかったから、すごく楽しい。
宿屋の部屋とは違った趣がある。
「ナガマサさん、終わりました」
「お疲れ様」
「お疲れミルキー!」
「すっかりくつろいでますね」
「俺の部屋だからね」
「モジャモジャー」
けどミルキーの前でずっと寝転がっているのもあれだな。
起き上がって服を整える。
「この後はまた街に戻ろうか。今日は宿屋に泊まって、部屋を出られるように話をしようと思うんだ」
「あっ、そうですね。私もまだ契約してるからお話してこないとです。荷物もいくつか置いてますし」
ストーレの街では宿屋の一室を借りて生活していた。
今日はまだ下見のつもりで、実際に物件を買うのはまだしばらく先だと思ってた。
だから、宿屋もある程度先までの料金を払ってある。
我が家はこの通り今日からでも暮らせるくらい整ったし、部屋を空けてあげた方が宿屋のおばさんも喜ぶだろう。
ミルキーは荷物も置いてあるみたいだしな。
気に入った小物でも飾ってあるんだろうか。
とりあえずはこれくらいで、家具の配置と模様替えは一旦終わり。
ゲームだから掃除とかをする必要がないのは有難いな。
もう時間は19時。
暗くなってるし、神父様にお願いしてストーレの教会前へ飛ばしてもらった。
スキルはノーチェが使ってたのと同じものだった。
酒場で夕食を済ませ、解散となった。
今日はそれぞれの宿屋へ泊る。
中へ入ってすっかり馴染みになったおばちゃんへ声を掛ける。
拠点を構えたことと、宿の部屋を借りる契約を打ち切ることを伝えた。
「そうかい。寂しくなるねぇ……でも、頑張るんだよ。あんた細いんだからしっかり食べて、しっかりやんな! ご飯も、いつでも食べに来て良いからね」
おばちゃんは寂しがってくれたが、同時に応援もしてくれた。
餞別だと言って、年期の入った包丁をくれた。
長期間の契約は一旦打ち切りだが、またこの街の宿に泊まることもあるだろう。
その時は出来るだけここに泊まろう。
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