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143 輝きの城
しおりを挟む一層へとやってきた。
別行動ではなく三人でだ。
せっかくだし、前回見つけた結晶の城を攻略することにした。
お金に関しては、さっきの一時間でも結構狩れた。
城攻めの後にもう二セットも狩れば十分だろう。
穴があった場所へやってくると、穴は確認出来なかった。
ただ、≪クリスタルナイト≫が佇んでいる。
「タマショットガン!」
タマが離れた位置から≪無弾≫を三回程発射したら一瞬で粉々になった。
一回の発動で五発同時発射する魔法だから、100倍して五百発。
間を空けずに三回も撃てば1500発。
酷い。
技名はタマのオリジナルで、特に意味はない。
強いて言うならかっこよくなる。
今の攻撃で壁に穴が空いていた。
これも前回と同じだ。
今回は壁に穴がないのは最初にしっかりと確認した。
やっぱり隠されてたみたいだな。
突然姿を現した横穴を進んでいく。
開けた空間に出て、そこには結晶で出来たような城がある。
「行こう」
「とつげきー!」
「慎重にな」
走り出そうとしたタマを抑えて釘を刺す。
行ったことの無いエリアは、何が起きるか分からない。
俺の考えを理解したらしいタマは地面に倒れこんだ。
「はーい。ほふくぜんしんー!」
「そこまではしなくても――って、速いな!」
「私達も行きましょう」
「ああ、うん」
そして腕だけで這って行った。
滅茶苦茶速い。
理解してなかったようだ。
俺達も追いかけるように城の中へ突入した。
「綺麗……」
中へ入ると、壁も床も装飾も、全てが結晶で出来ていた。
ミルキーが見惚れるくらい美しい光景だ。
かなり広い。
外から見たサイズ感と全然違う。
ここも、・・中の空間はかなり拡張されてると思った方が良さそうだ。
エリアの名前は≪輝きの城≫となっている。
「モジャマサー、早くー!」
「そんなに慌てるなって。ゆっくり進むぞ」
「モジャ……」
俺を急かすタマを逆に落ち着かせる。
城攻めを楽しみにしてたらしく若干不満そうだ。
広いから、迷子になったら困るんだよ。
我慢してくれ。
獲物を求めて歩き回った。
しかし、モンスターは全く出てこない。
城の作りは詳しくないが、ストーレの城を思い出して王様がいそうな方へ進む。
しばらく歩いても、やっぱりモンスターには遭遇しなかった。
やがて豪華な扉の前に辿り着いた。
この向こうには何かしらがいるに違いない。
「とつげきー!」
「だと思った」
タマは躊躇なく扉を開け放った。
扉の向こうは、謁見の間によく似ていた。
真っ直ぐな道のように結晶のカーペットが敷いてある。
道の両脇を≪クリスタルナイト≫がずらっと並んでいて、威圧感がすごい。
その先は数段高くなっていて、玉座がある。
そこには結晶で出来た人型が座っている。
クリスタルナイトよりも透明度が高いようで、透き通っていて、光を反射して煌めいている。
良く見てみると、≪ダイヤモンドクイーン≫と表示された。
『よく来たな、戦士たちよ』
丁度名前を読み終わるくらいで、高くて透き通るような声が頭の中に響いた。
もしかして、喋ったのか?
「よーし!」
「タマ、ストップ」
「あいあい!」
「危なかったですね……」
タマが駆け出そうとしたのを止める。
多分何かのイベントが始まりそうだ。
このまま、あの女王様ごと粉砕してしまうのは勿体無い。
ミルキーも同じことを考えていたようで、ホッと溜息をついた。
『頼みがあるのじゃ。疑うやもしれぬが、話を聞いてはくれぬか?』
「わかりました。聞きましょう」
『助かる。まずは近くへ寄るがよい』
やっぱり何かのイベントのようだ。
女王も傍らのナイト達も、攻撃してくる素振りは見えない。
俺達は促されるまま女王の前へと歩み寄る。
もし攻撃が来るようならすぐさま女王の背後にでも移動しようかと思ったが、何もなくて良かった。
ダイヤモンドクイーンはその名の通り女性型で、結晶体でありながら女性らしい体つきをしている。
服や装飾もダイヤっぽいから、どこまでが身体でどこからが服か分からない。
これ全部身体の一部の可能性もある。
『お主らは、この大空洞に巣食う大海魔に遭遇しただろう? その身からやつのおぞましい魔力を感じる』
「はい」
「もがもがもがが」
「タマちゃんは少し静かにしててね」
「はーい」
女王の問いかけに素直に答える。
余計なことを言って話の腰を折ってはいけないと、ミルキーがタマの口を塞いでいた。
更に念を押している。
ナイスサポート。
タマは素直にお返事をしてくれた。
これで落ち着いて話を聞ける。
女王の話は、簡単にまとめるとこういうことだった。
女王が平和に暮らしているところに、あのイカが異界から現れた。
あのイカの主食は宝石などの石や結晶で、女王達を食べる為にやって来たのだ。
そして戦いが始まった。
女王配下の戦士達が死力を尽くした結果、犠牲を払いながらも、大海魔を異次元に封印することに成功した。
しかし、食欲の権化である大海魔の残滓が、一つの個体として残ってしまった。
それが、三層に住むあのイカらしい。
あれで残滓なのか。
残滓でも女王達にとっては十分強敵で、主力の戦士達を失った今では僅かに残った側近とひっそりと暮らしている。
元々この城は三層の奥にあったそうだ。
そう、≪古代異界烏賊≫の沸くあの場所だ。
二層と三層に沸く≪ジュエルマン≫は、戦士達の残骸にイカの魔力が合わさってモンスター化したものらしい。
まさかそんな由来があるとは思わなかった。
頼みというのは、異次元に封印した大海魔を倒して欲しいというものだった。
そいつを倒せば何か変わるのかと聞いてみた。
封印に使われている戦士達の魂が解放されれば、その力で二層から足を追い出すことが出来るということだった。
残滓を完全に倒したり出来ないのが、なんともゲーム的だ。
MVPボスが沸かなくなったら他のプレイヤーが困るもんな。
『やつを倒したお主らなら期待できる。頼まれてはくれぬか?』
後ろで待つ二人の方を見る。
タマはわくわくした顔で見つめている。
今にも飛び出していきそうな顔だ。
ミルキーは、俺と目が合うと力強く頷いてくれた。
こっちもやる気充分だ。
「俺達で良ければその話、お受けします」
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