267 / 338
254 付き添いと至急
しおりを挟む「付き添いって、それは俺必要ですか?」
「必要なければ態々頼まん」
そうだろうけども。
具体的にどう必要なのか、さっぱり想像出来ない。
護衛はミゼル親衛隊の皆さんがいるし。
あの団体は、ミゼルがいなくなっても名前はそのままなんだろうか。
「必要な理由が思い浮かばないんですが」
「正直な話、私は今までミゼル以外に興味を持たなかった」
「そうでしょうね」
「故に、婚約者を決める為の面談など、どうしていいか分からんのだ」
「でしょうね」
「褒めるな褒めるな、照れるだろうが」
「むしろ呆れてるんですけど」
何故そこで照れるんだ。
そんなにミゼルのことを考えられるなんてすごいですね、なんて聞こえたんだろうか。
ポジティブすぎる。
脳味噌だけじゃなくて耳のフィルターにまでミゼルへの妄執が詰まってるんじゃないか。
「とにかくだ、心細いから付き添ってくれ。こんなことを頼めるのは、我が義弟であるナガマサしかおらぬのだ」
「ええー……一体いつなんですか?」
「これからだ」
「はい?」
「20時から顔合わせが開始される」
時計を見る。
20時まで、あと10分程だ。
……はあ!?
「もう時間無いじゃないですか!」
「だからこうして焦っておるのだろうが」
「優雅にお茶してるようにしか見えませんけど?」
「今回の件ついては真に至急でな、心の準備すら整わなかったのだ。そして最後の望みを掛けて会いに来たと、そういうわけだ」
「それにしても急すぎませんか?」
「ミゼルの為にこうなったのだ。仕方あるまい」
パシオンはきっぱりと断言した。
ミゼルの為なら自分がどうなっても構わないという、覚悟が伝わってくる。
それなら最後まで自分でなんとかして欲しい。
ミゼルの為と言われたら、協力しない訳にはいかない。
俺がミゼルと結婚出来るのも、パシオンのお陰らしいからな。
「分かりました。もう時間もないので急ぎましょう。どうやって行きますか?」
「表にノーチェを待機させている。城へは直通だ」
「はい。タマ、お出掛けするぞ」
「はーい!」
俺が立ち上がったのを見てパシオンも立ち上がる。
タマに呼びかけると、即座に隣に移動してきた。
いつの間にか装備も着替えて準備万端だ。
まだタマが葵の前にいるように見えるのは、きっとスキルで増えてるだけだ。
愛用の鎧は一つしかないから、まだ見た目でどっちが本体側か分かる。
システム上は多分区別ないんだろうけど。
分身みたいな、偽物を出すスキルではないからな。
「ちょっと行ってくるよ。ミルキーには説明をお願いしていい?」
「はい、安心していってらっしゃいませ」
「ミゼル、またすぐに来るからな!」
「はい、またいつでもいらしてください」
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい……!」
「へいらっしゃぁぁぁあああああああぁぁあああああああああいいいい!!!」
パシオンはミゼルへの挨拶を済ますと、さっさと玄関へ向かって行った。
いつまでも愚図りそうなのに、立派になったな。
俺ものんびりはしていられない。
ミルキーへの伝言をお願いしておく。
後で俺からもメッセージを送っておこう。
ミゼルと葵に見送られて家を出る。
クレイジーフラワーの叫び声も聞こえてくる。
それはあまり嬉しくない。
表に出ると、パシオンの言った通りノーチェがいた。
もしかしてずっとここで待っていたんだろうか。
パシオンも、中まで連れて来ればいいのに。
「すみません、お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。パシオン様の依頼を引き受けて下さりありがとうございます」
「モジャモジャは優しいから!」
「そのようですね」
なんとなく申し訳なくなって謝ると、真面目そうな笑顔を返してくれた。
出来た人だ。
パシオンの騎士なんてこのくらい精神的に出来た人じゃないと勤まらないだろうな。
少なくとも俺には無理だ。
仕事中なんだとしたら、俺が口を挟むようなことではない。
王族と仕える騎士なんだから色々あるだろう。
詳しくは無いけど、王制ってだけで下手に逆らえないようなイメージがあるし。
パシオンはなんか気安いけど。
「準備はいいか?」
「大丈夫です」
「それでは、顔合わせの会場の前へお送りします」
「良いぞ」
「≪ワープゲート≫」
ノーチェがスキルを発動した。
何度か見たことのある光る円が現れて、内側から光を吐きだしている。
パシオンが間髪入れずに入って行った。
続いてタマも飛び込んだ。
俺も足を踏み入れる。
次の瞬間には、すっかり夜になった農耕の村から、豪華な通路へと景色が変わっていた。
「ご苦労だったな。下がって良いぞ」
「失礼します」
ノーチェが一礼してから去って行く。
移動スキルは便利だな。
パシオンもノーチェにはよくお世話になってるんじゃないだろうか。
「この部屋だ。付いてこい」
「あ、まだ心の準備が……あれ?」
パシオンが目の前の豪華そうな扉を開いた。
ここが会場なんだよな。
一体どういう態度でいたらいいんだ。
と思ったら、結構広い室内には誰もいなかった。
静かに蝋燭の炎が揺れている。
「慌てずとも良い。時間が決められていても私の方が立場が上なのだ。許可があって初めて入室が許可される。それまでは何時間過ぎようとも待機しなくてはならん」
「パシオン様、そんなことしてるんですか」
「性格わるーい」
「例え話だ。私はそんな無駄な嫌がらせに時間を割くくらいならば、ナガマサの家に押しかけるぞ」
「すみませんでした」
「でした!」
「分かればいい。とりあえず中へ入れ」
促されて中へ。豪華な部屋だ。
うちの大きくなったリビングよりもまだ大きい。
部屋に入ったところで、扉を閉めたパシオンが向き直った。
「ここは物理的にも魔術的にも防音が施してある。外に会話が洩れることも無い」
「どういうことですか?」
「内緒の話というやつだ。よいか、今から話すことは他言無用だ」
「いえっさー!」
「一体何の話をしようとしてるんですか」
「貴様をこの場に呼んだ、本当の理由だ」
1
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる