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新たな始まり
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しおりを挟む俺とルインは、レベル上げの為にフィールドへとやって来た。
ストーレの街から西に出た場所で、エリア名は≪ストーレフィールド07≫となっている。
木がちらほらと生えている、野原だ。
門からは、地面をむき出しにしただけの一本の道が伸びている。
ここが俺達が初めて降り立ったエリアであり、シュシュと出会ったエリアでもある。
シュシュは、また襲われるといけないからまだ連れて来ることが出来ない。
そう伝えたら、街の中でこなせそうなクエストを探すと言っていたから、大丈夫だろう。
「さー、張り切ってレベル上げるわよ!」
「張り切るのはいいんだけど、ルインは何か出来るのか?」
「浮けるわよ」
「うん、まあ、そうだな」
自信満々に言われると、それ以上言葉が出なくなってしまった。
確かに間違ってはいない。
思ってたのとは違うけど。
「近くにモンスターはいないみたいね」
「そうだな。走り回ってるプレイヤーはいるけど」
さっきよりもプレイヤーの数が増えている気がするが、まだ増えるかもしれない。
いくつもの街や村の周辺にばら撒かれると言っても、先行発売分は一万人分だ。
全員が全員プレイ出来るとは限らないが、ほとんどはサービス開始に合わせてログインしてる筈だ。
俺だってそうだったんだから、その辺りは考える事はみんな同じだろう。
あまりモンスターに有りつけないようなら、もう一つ先に行くことも考えないといけない。
「とりあえず、歩き回って見つけ次第狩ってみよう」
「おー!」
サーチアンドデストロイ。
この言葉を胸に、散策を開始した。
すると、白い毛玉のようなモンスターを見つけた。
長い耳を持ったそいつは、≪白耳兎≫。
名前がそのまんまだな。
白耳兎は呑気に跳ねては止まり、キョロキョロしてはまた跳ねる。
結構可愛い。
さっきも遠目に見かけてはいたが、それどころじゃなかったんだよな。
「サンダーショット!」
「ぴっ」
詠唱が完了して、魔法が発動する。
翳した杖から黄色くて小さい光の弾が無数に放たれた。
一撃で白耳兎のHPが消し飛んだ。
ちょっと最後の鳴き声がリアル過ぎてびっくりした。
「中々の威力みたいね、それ」
「あ、ああ、そうだな。麻痺が入ればかなり有利だし、どんどん鍛えようと思う」
ルインの声で、慌てて気持ちを切り替えた。
ゲームだからな、気にし過ぎるものじゃない。
スキルは使えば使う程、レベルが上がる。
だからこの雷撃散弾ももっと強くなる。
スキルの説明を見た感じ、威力の上昇率はそこまでだが麻痺率が良い感じに上がっていく。
状態異常が強いかどうかはゲームによってまちまちだが、さっきの感じを見る限り強そうだ。
格上相手でも、対策されてなければ通じるだろうからな。
「じゃあこの調子でどんどんいきましょ!」
「おう」
俺も他のプレイヤーを見習って、このエリアを駆けずり回った。
白耳兎の他にはマスコットみたいな顔のゼリー、巨大なトカゲと戦った。
巨大なトカゲこと≪オオカナヘビ≫は中々の強敵だった。
大きさの割に素早いし、他に比べてちょっと硬い。
杖で叩いた時のダメージは絶望的だった。
それでも、雷撃散弾さえ撃てば二発で倒せた。
発動にかかる詠唱時間が短めで良かった。
そうじゃなきゃ、距離を取っても魔法を撃つ前に攻撃されて詠唱がキャンセルされてしまうからな。
「もう、全然狩れないじゃない! イライラしてきたわ!」
さて、しばらく狩りをしてみたが、これはしんどい。
別に肉体的にではない。
スタミナ的なシステムは一切無さそうだから走ろうと思えばいつまでも走れる。
そうじゃなく、精神的にだ。
何しろ人が多すぎてモンスターにあまりありつけない。
五分走り回って一匹狩れるかどうかだ。
あまりにも効率が悪すぎて、ルインが吠えた。
気持ちは分かる。
こんな感じだと、プレイヤー同士のいざこざも起きてそうだな。
これは、移動した方が良さそうだ。
もし強いモンスターしかいなくても、死ぬわけじゃないしな。
「ルイン、もう一つ先のエリアに行こう」
「そうね、そうしましょう!」
俺の提案に、ルインは満面の笑みを浮かべてそうなオーラと共に乗っかって来た。
そんなにうんざりしてたのか。
そうと決まればここに用は無い。
モンスターを追いかけているプレイヤー達を余所に、真っ直ぐ隣のエリアへ。
五分も歩けば、エリアが切り替わった。
ここは≪ストーレ草原06≫。
見た目的にはそこまで変化は無いようだ。
木が減って、草むらが増えたような気がするくらいかな。
「やった、こっちは人が少なそうね」
「ほんとだな。でも確か、アクティブモンスターがいないのは基本的に街や村の隣のエリアだけらしいから、気を付けるんだぞ」
「大丈夫大丈夫、それくらい分かってるわよ」
ルインは自信たっぷりだ。
知識の幅がよく分からないな。
どこまでがインプットされてるんだろうか。
「見なさいゼノ、あそこに巨大バッタがいるわ!」
「ほんとだ。微妙にデフォルメされてる」
ルインがアピールする先には、1m無いくらいのバッタが二本の脚で直立している。
ギターを持ってて、演奏しては跳ね、演奏しては跳ねを繰り返している。
見えてても向かってこないからノンアクティブのようだ。
名前は≪ベース≫。
ということはあの楽器はベース?
正直ベースとギターの見分けがつかないから、分からなかった。
「よし、狩るか」
「ちょっと待って」
「どうした?」
とりあえず魔法を撃ちこもうとしたところを、ルインに止められた。
何かあったんだろうか。
「見てたらあたしも狩りをしたくなったのよ。ここはちょっと任せてもらおうかしら」
「それはいいけど、大丈夫か?」
「心配いらないわ。そこで見てなさい!」
自信満々なルインは、ふよふよとベースに近づいて行った。
……不安しかない。
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