330 / 338
新たな始まり
283 コインとコイン
しおりを挟む「あんた、あたしのコイン持ってるわよね!?」
「コイン? ゼノさん、この喋るコインはゼノさんの相棒ですか?」
≪ルイン≫という名前のコインの質問は、よく分からなかった。
一旦置いておいて、ゼノに聞いてみる。
頷いて肯定してくれた。
さっき一緒に戦っていた相棒で間違いないようだ。
「お名前は?」
「ルインよ!」
「ルイン、ルイン……ルイン?」
改めて名前を聞いてみた。
ルインで間違いないようだ。
この名前もどこかで聞いたことがある。
「ちょっと、まさか忘れたなんて言わないわよね!」
「ルイン……え、まさか。ごめんゼノさん、ちょっと相棒をお借りしてもいいですか?」
「いいですよ」
「すみません」
思い出した。
ゼノに許可を得て、ルインと二人で空き家の裏に移動した。
ここなら人目につかないだろう。
隠れているような何かもいない。
「ルインって、パシオンを襲ってきた魔の者の?」
「うぐ……そうよ!」
そこで確認してみると、やぱりそうだった。
なんと、城でおろし金にパックリと咥えられた、あのルインだった。
でもルインは、記憶を失ってはいたけど生きて存在している。
今は昭二のところで預かってもらっている筈だ。
そこも聞いてみたが、なんとこのルインは、魔の者としてのルインで、普通の女の子のルインとは別扱いらしい。
なんだそれ。
詳しくはルイン自身も分からないが、気付けば相棒候補になっていたらしい。
そんなことあるのか。
よく分からないが、これ以上は本人も分からないらしいから質問責めにはしないでおく。
それで、コインを返してほしいと言われた。
それは元々は城で封印されていた、ルインを倒した時のドロップアイテムとしてパシオンに押し付けられた、≪神滅魔竜ゴルヴィーク≫のコインだ。
「コインかぁ……」
「お願い! あれはあたしにはどうしても必要な物なの! もうNPCを襲ったり≪魔の者≫として活動したりしないから!」
ルインの必死さが伝わってくる。
表情とかの無いコインなのに、感情がここまで出るなんてすごいな。
とてもただのNPCとは思えない。
ゼノがあんなことを言ってたのは、どうやらルインの影響が大きいようだ。
さて、コインをどうするか。
パシオンの城で保管されてた物だけど、封印も解けたしということで、体良く報酬に紛れて押し付けられた。
つまりもう俺の所有物だから、どう扱おうとパシオンは何も言わないだろう。
「分かった。ゼノさんには感謝してるし、あげるよ」
「ほんと!? やったー! ありがとう!」
今はもう悪さをするつもりも無いらしいから、返すことにした。
あっても無くても、俺にはあまり変わらないからな。
「あ、あたし持てないからゼノに渡しといてくれる?」
「分かりました」
「ここで吸収してもいいけど、どうせならしっかり自慢してからにしたいのよね」
ストレージからコインを取り出そうとしたところで、ゼノに渡すようお願いされた。
確かに持てそうにない。
話も済んだし、ゼノとシュシュの元に戻った。
そんなに長くは話してないし、不審がられることもないだろう。
離れて会話してる時点で怪しいかもしれないが、それは仕方ない。
そのことを素直に謝っていると、後頭部に衝撃。
何かがしがみついたような感覚と同時に、髪の毛がすごいわさわさされ始める。
「モジャモジャ注意報はつれー! モジャー!」
「うわー、大変だー」
タマだった。
とりあえずいつものノリで返してから、人前だったことを思い出した。
家族以外に見られるのは、まだちょっと恥ずかしい。
肩車のような状態のままタマを紹介した。
みんな物怖じしない性格のようで、元気に挨拶を交わしている。
勿論、ウチのタマが一番元気が良い。
ゼノが少し呆然としていたが、声を掛けるとすぐに元に戻った。
ある程度離れたところから瞬間移動で出てきたみたいだからな。
女の子が突然現れたら、驚くのは仕方がない。
とりあえず、忘れない内に渡しておかないと。
二枚のコインをストレージから取り出す。
一枚は金色で、表面に竜が描かれている。裏には≪MVP≫の文字。
もう一枚は、白く輝いている。これが白金という奴だろうか。
表には可愛くデフォルメされたタマが描かれていて、裏には大きく×が描かれている。
金色の方が≪神滅魔竜ゴルヴィーク≫で、白金の方がタマのものだ。
前は金色だった筈だけど、いつの間に変化したんだろうか。
まぁ、コインはコインだ。
それを、ゼノに差し出す。
「この二枚は、ルインさんと約束したお礼です。受け取ってください」
「え、でもお礼はさっき」
「それはそれです。俺は、ゼノさんにお礼がしたいので」
遠慮しようとしたところを、畳みかける。
俺は無理矢理にでもこれを渡すつもりだ。
一枚はルインにお願いされてだけど、タマのコインは、俺の感謝の気持ちだ。
嫌と言われても押し付ける。
「……そうですか、分かりました」
ゼノも分かってくれたのか、すぐに了承してくれた。
良かった良かった。
と思うと同時に、俺の手の中のコインが消えた。
どうやらゼノのストレージに直接放り込んだらしい。
おお、もしかしてNPC的な扱いの影響だろうか?
パシオンやシエルも報酬を直接ストレージに入れてくれてたし、そういう機能がNPCには付いてるんだろうけど、それを使えるようになったようだ。
以外なところで新しい発見があった。
お礼も言ったし、お礼も渡した。
これで用事は終わった。
俺達は別れの挨拶をして、静かになった我が家へと帰ることにした。
出来れば彼には、また会いたい。
色々制限があるから難しいかもしれないけど、もっと交流を持ちたい。
また、昔のように。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する
うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。
そして、ショック死してしまう。
その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。
屋敷を逃げ出すのであった――。
ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。
スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる