331 / 338
新たな始まり
284 対策と制作
しおりを挟む我が家の前に戻ると、すっかり人がいなくなっていた。
地味に有難い。
あの一般プレイヤー達が寄りつけないのは一週間らしいが、他のプレイヤー達がまた来るかもしれない。
それに、今のままだと一週間経てば元通りに違いない。
今の内に何か対策を練っておいた方が良いだろう。
「ただいまー」
「ただいまー!」
「おかえりなさい」
「おかえりなさいませ」
玄関から中へ入ると、ミゼルとミルキーが出迎えてくれた。
葵は自室でトレーニング中だそうだ。
それにしても、堂々と玄関を通れるのがこんなにも幸せだったとは。
俺もまだまだだな。
≪当たり前≫をもっと大事にしていきたい。
「一般プレイヤー達が突然いなくなったんですが、ナガマサさん何か知ってますか?」
「うん、今話すよ」
「お茶を用意いたしますわね」
リビングの椅子に座る。
ミゼルの淹れてくれたお茶を飲みながら、さっきの出来事を三人に話す。
タマもミゼルもミルキーも、時折相槌を打ちながら聞いてくれた。
ミゼルは楽しそうに、ミルキーは興味深そうに。
タマに至っては、自分も暴れたかったと残念そうだった。
ゼノとルインのことは、ある程度ぼかして伝えてある。
知り合いだという現実の情報は、制限に引っかかる可能性もあるからだ。
余計なことは言わないでおく。
あげたコインのことは、きちんと話した。
二人共、特に異論は無いようだった。
良かった。
さて、のんびりした時間を過ごした後は、やることをやらないと。
「それじゃあ、準備したらタケダさんのところへ行ってくるよ」
「今からですか? 外は何が起きるか分からないって、ナガマサさんも言ってたじゃないですか」
「ちょっと用事を思いついたからさ。それに、お願いしてた装備も受け取りに行かないといけないし」
「用事ですか?」
俺の外出に微妙な顔をしているミルキーに、理由を説明する。
それは、一般プレイヤー対策だ。
彼らがこの家に押し寄せたのは、俺が市場に流した装備品が原因だ。
大勢のプレイヤーには回り切らず、品薄状態で値段も釣り上げられている。
今は、そんな状況らしい。
それなら、もっと作ればいい。
どうせあの装備はレベル制限があるし、一定期間使えばもう用は無くなってしまう。
ストーレ周辺にどれだけの一般プレイヤーがいるかは分からないが、ある程度張り切って作れば行き渡る筈だ。
高値を付けてる奴らも、大量に安値で流せば慌てて値段を下げるだろう。
そしたら価格が大暴落して、俺のところにわざわざ買いに来る奴もいなくなるに違いない。
「そういうことですか。それじゃあ私も一緒に」
「いや、ミルキーにはお留守番をお願いしたいんだ」
「……はぁ、分かりました。命の心配はしてませんけど、変なトラブルに巻き込まれないように気を付けてくださいね。ミゼル様や葵ちゃんもいるんですから」
「うん、気を付けるよ」
しっかり説明したら、ミルキーも納得してくれた。
ついて来ようとしてくれたけど、何かあった時の為にも残ってもらうことにした。
ミルキーの言ったように、ミゼルや葵もいるからな。
自室に移動して、まずは装備を作る。
前に作った初心者シリーズと練習シリーズだ。
材料は、今まで抜いてきた雑晶がこれでもかとストレージに眠っている。
どんどん使おう。
初心者シリーズはノービスしか装備出来ないし、少な目でもいいかな。
短槍も一旦は少な目でいいか。
足りないようだったら、また追加で作ろう
スキルを使用して、さくっと作り上げる。
初心者シリーズの短剣と剣が五百ずつ。短槍は二百。
練習シリーズの短剣と剣が千ずつ。短槍は五百。
今朝突発的に作った≪初心者バッジ≫も作っておく。
数は驚きの二千個だ。
これで以前の分を合わせれば、結構な数になる。
タケダとゴロウにはこれを安値で売ってもらう。
勿論、二人に売る値段はもっと安くする。
協力してもらうんだから、二人にはちゃんと儲けが無いと申し訳ない。
驚いたのが、これで持っていた雑晶をほぼ使い切ったことだ。
あれだけあったのに無くなるとは思わなかった。
スキルの相乗効果によってスキル一回で千ずつ作成出来るせいで、大量生産した実感が沸かないんだろう。
なんにせよ、これで準備は出来た。
タケダのところに装備を受け取りに出発だ。
なるべく目立たないように、今日は教会経由で行くか。
「タマ、出掛けよう」
「はーい!」
時折俺の頭をモジャモジャしながら待っていたタマを連れて、部屋を出る。
玄関に向かおうとリビングを横切ると、ミゼルとミルキーがキッチンに立っている姿が見えた。
どうやら夕食の仕込みを開始したようだ。
こちらを振り向いた二人に軽く手を振って、家を出た。
この近くにいた一般プレイヤー達はゼノの手によって一網打尽にされたのか、相変わらず家の周りには誰もいない。
気になって畑をちょろっと覗いてみたが、そっちは相変わらず人だかりが出来ていた。
そういえば、細マッチョ達の抱き枕の刑に処されていたPK達の解放を約束した日が今日だった気がする。
あれ、昨日だっけ。
忘れてしまった。
とはいえ、この人ごみを掻き分けて畑へ入るのは手間だ。
悪いけどここはスルーさせてもらおう。
別に、ちょっと畑仕事を手伝わされるだけで、食事として美味しいフルーツが沢山食べられる。
そんなに悪い環境ではない筈だ。
微妙にムキムキした一頭身のフルーツ達に羽交い絞めにされたまま樹上で過ごすなんて、俺はご免だけど。
広くない村を縦断して、教会へとやって来た。
中に入るといつもと変わらない礼拝堂がそこにあり、プレイヤー達の姿もそれなりにあった。
転送を利用しに来たんだろう。
奥の方に佇んでいる神父さんに近づいて、いつも通り声を掛ける。
「こんにちは」
「こんにちはー!」
「すみません、ストーレへ転送をお願いしたいんですが」
「ん、ああ、君達かね。……本来は断るところなんだが、ミゼル王女の口利きだから特別だよ」
「え?」
神父の言葉の意味を確かめる間も無く、俺とタマはストーレの教会の前へ到着していた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する
うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。
そして、ショック死してしまう。
その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。
屋敷を逃げ出すのであった――。
ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。
スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる