天使過ぎる可愛いクラスメイトと一途過ぎる可愛い後輩、どっちを選べばいいんだ!?

muku

文字の大きさ
17 / 121
一学期 三章 球技大会の幕開け

017 青葉雪は、可愛い後輩からの言葉に気合を入れ直す

しおりを挟む
 球技大会の初戦、ぞろぞろと男子生徒たちが校庭の中央に集まり、試合の始まるホイッスルの音が鳴った。

“ピッーーーーー!”

 最初から全力でボールを追いかける者、一応は参加するふりだけする者、端の方で気だるそうにつったっている者、球技大会へのモチベーションは三者三様である。しかし、一番多いのは、クラスの女子にいいところを見せようと、必死な男子が大多数だ。

 試合開始とともにボールには人が集中し、団子状態になっていた。その様子を青葉雪は、少し距離をとって眺めていた。

 野球部らしい坊主頭クラスメイトが、この団子状態を打破しようと、いい場所でフリーになっている青葉へとパスをだした。想い人にボールが渡り、ちろるの目は俄然と釘付けになる。


“あっ、雪ちゃん先輩にパスが渡った。わぁぁ、ドリブルしてる!かっこいい~。よしっ、一人抜いた。さすが雪ちゃん先輩!”

 サッカー部らしい洗練された青葉のボールさばきに感動しながらも、ちろるは青葉のプレーに対してあきらかな違和感を感じた。

”あれ……? いつもより切れが悪いような……。相手が初心者の人だから、少し手加減してるのかな。あっ、いつもならシュート打ちに行くのに、チームの他の子にパスだした! うぅ……せっかくなら思い切りシュートしたらいいのに!”


「次の文を、桜木……おい、桜木!」

「えっ!? あっ、はい!?」

 その後も青葉は、ボール回しやパスの中継役に徹し、一応はサッカー部としてそれなりな活躍はしていたが、どこか気の抜けた様子で試合の前半は0対0のままで終了した。


 授業の終わりのチャイムが鳴った瞬間、ちろるは教室を跳びだしてグランドに向かった。

「こらっ、廊下を走るな桜木!」
「すみませーん!!」

 階段を勢いよくかけおり、グランドへ通じる通用口へ向かう。通用口を抜けると、グランドの端の手洗い場で、水を飲んでいる青葉の姿を見つけた。

「ちょっと先輩! 何してんですかっ!?」
「おぉ……ちろるじゃないかっ。水飲んでるんだけど。」

「そうじゃなくてっ!」
「えっ、なんで怒ってんの?」

「さっきの試合なんですか!? ずっと見てましたけど絶対手を抜いてるでしょ。」
「えっ……そりゃ、サッカー部が初心者の人相手に本気出すのはよくないだろ……。っていうか、お前授業中だったろ。ちゃんと授業受けろよ。」

「ぐぬ……、そんなことはいいんです! 本気で……全力でプレーしてくださいっ!」

いきなり現れた後輩に、「全力を出せ」と言われ、青葉は困惑した表情になった。

「いや、別にクラスに貢献したいとか思わないし、交流目的の球技大会で、初心者相手に本気出してケガとかさせたくないしなぁ……。」

 クラスには貢献しろよと思いつつ、それでも確かな正論である。自分が言っていることは、ただ好きな人が頑張っている姿を見たいという、我がままかもしれない。

 ちろるは思わず黙って下を向いた。その様子を青葉は困ったように眺めた。

「……先輩のカッコいいところ、もっと見たいんです。」

 ちろるは俯いたまま、小さな声でそういった。その台詞は言う方も恥ずかしいが、聞いてる方も恥ずかしく、二人は思わず顔を赤く染めた。

「なんか……言ってくださいよ。恥ずかしいじゃないですか!」

ちろるはだんまりの青葉に、半泣きになって顔をあげた。

「そうだな……。まぁ、可愛い後輩が応援してくれてるからってことなら……本気でやってもいい……かも。」

「……えっ! ほんとうですか!?」

 ちろるは嬉しそうに目を輝かせた。幼い子供のようにコロコロと表情が変わるちろるを見て、青葉もまた笑みを浮かべる。

「あぁ。でも、ちゃんと授業受けなよ?」
「ふふっ! 先輩がちゃんとプレーしてくれるならいいですよ!」

 キーンコーンカーンコーン……

「あっやば! 次の授業音楽の移動教室だ……。」
「この試合が終わった後もまだ何試合もあるから、また休み時間にでも観においでよ。」

「はい、頑張ってくださいね!」
「おう!」

 石段を二段飛ばしで登っていく後輩の姿を見送り、青葉は気合を入れ直した。授業そっちのけで応援してくれる人がいる。その子にいいところを見せるためなら、多少大人げないと言われても、本気を出す理由にはなる。

「よしっ、いくか。」

 前半とは打って変わり、青葉雪は気合いを入れて第一試合の後半に出場した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

処理中です...