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第4話 ヴァンパイアの眷属
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「ええ、私たちヴァンパイアはイモータルだもの。血を吸えば若返るし、ちょっとやそっとのことなんかじゃ死なないわ。」
「…僕もヴァンパイアなの?」
「ひろきの傷を癒すために私の血をあげたわ。もちろん傷を癒すのが目的だから、大した量は注いでないけど…。そうね、約2割くらいがヴァンパイア、8割がにんげんってところかな。」
「2割ヴァンパイアか、打者の打率としては低い方だけど…、それは実際のところ、人として生きていけるレベルなのか。」
「多分、日中でも外を出歩けるけど、しんどいだろうからなるべく控えた方がいいと思うわ。それに血を吸わなければ生きていけないってわけでもないし、さっきみたいにひろきの姿は鏡にも映るわ。」
…どうやら人としての機能はそこまで失ってないらしいが、コルアにも確証はないらしい。いろいろ確かめてみたいことは山ほどあるが、それより先にすることがある。
「さっきから驚いてばかりだったけど、コルアに感謝を伝えるのを忘れてた。僕が死にかけていたところを助けてくれて、本当にありがとう。」
感謝の言葉とともに、彼女の華奢な細い手を握った。コルアの顔を見ると、真っ白なはずの彼女の顔が、緋色の瞳に負けないほど、首まで真っ赤に変わっている。
「どうした…。具合でも悪いか。僕に血を分けてくれたからか。」
「っ違うよ!大丈夫だから!」
握った手を放してやると、コルアはそのままぎこちない歩き方で「何か温かいものを淹れてくるわ」と出て行った。
部屋はまた静けさに包まれた。この部屋には、先ほどまで僕が寝ていた天蓋付きの大きなベッドと、ほこりがかぶってほぼ見えない鏡の付いた化粧台(コルアは鏡に映らないから必要ないのだろう)、あとは暖炉の傍のタンスの上には、骨董品のような壺や地球儀などが並んでいる。
この部屋唯一の木製の窓をあけると、外から柔らかな温かい日差しが差し込んだ。
「っつ!?」
夏場日焼けしたときに入る風呂のように、ピリピリと肌が痛んだ。先ほどのコルアの話を聞いてもなお、まだ少し夢うつつだった脳髄に、これが現実であることを日光の痛みが神経を通じて訴えかける。
しばらく痛みに耐えると、あまり痛みを感じなくなった。湯船に浸かると、最初は全身痛むが、慣れてくると普通に肩まで浸かれるように、コルアの言う通り、慣れれば問題なく日中でも過ごせそうだ。
冷静になってみると、奇想天外なことに巻き込まれたものだ。少し病みがちな少女のヴァンパイアに助けられ、僕も2割ほどヴァンパイアになった。それでもこうして生きていられる素晴らしさ。生きてさえいれば何とでもなると、楽観的に捉えられるのは僕の長所だ。
木製の扉が軋む音がし、コルアが温かい紅茶の香りと柔らかな湯気が立ち上るマグカップを二つ持ってきた。
「ありがとう。アールグレイ?」
「そうよ。コーヒーの方がよかったかしら。でも、イギリスではコーヒーより紅茶の方が美味しいわよ。」
白色の二つのマグカップには、アメ色のアールグレイティーが注がれていた。だが、何故だか片方のコップの中身だけ、少し色が濃くみえる。
「色が少し違うみたいだね。」
「……片方は濃く煮出したのよ。せっかくなら、濃い方を飲んでもらいたいわ。」
「うーん、僕は薄い方が好きだから、こっちをいただくよ。」
渋いのが苦手な僕は、薄い方の白いマグカップを受け取ろうとすると、「ひろきはこっちを飲んでっ!」と慌てた様子で、反対側の濃い色の紅茶を手渡された。中をよく覗くと、コップの底に少し紅黒い何かが沈んでいる。
「…何か入れた?」
「何も入れてないわよ。」
「でもなんか沈んでるんだけど」
「私の愛の沈殿かしら。」
「いや、意味がわからないんだが…。」
一口だけ口に含んで飲み込むと、香り高い紅茶の風味と、苦い薬のような変な後味が口内に広がった。程よく温かい紅茶を飲むと、気持ちが落ち着く…はずが、何故だか無性にドキドキと鼓動が激しくなってきた。
「…僕もヴァンパイアなの?」
「ひろきの傷を癒すために私の血をあげたわ。もちろん傷を癒すのが目的だから、大した量は注いでないけど…。そうね、約2割くらいがヴァンパイア、8割がにんげんってところかな。」
「2割ヴァンパイアか、打者の打率としては低い方だけど…、それは実際のところ、人として生きていけるレベルなのか。」
「多分、日中でも外を出歩けるけど、しんどいだろうからなるべく控えた方がいいと思うわ。それに血を吸わなければ生きていけないってわけでもないし、さっきみたいにひろきの姿は鏡にも映るわ。」
…どうやら人としての機能はそこまで失ってないらしいが、コルアにも確証はないらしい。いろいろ確かめてみたいことは山ほどあるが、それより先にすることがある。
「さっきから驚いてばかりだったけど、コルアに感謝を伝えるのを忘れてた。僕が死にかけていたところを助けてくれて、本当にありがとう。」
感謝の言葉とともに、彼女の華奢な細い手を握った。コルアの顔を見ると、真っ白なはずの彼女の顔が、緋色の瞳に負けないほど、首まで真っ赤に変わっている。
「どうした…。具合でも悪いか。僕に血を分けてくれたからか。」
「っ違うよ!大丈夫だから!」
握った手を放してやると、コルアはそのままぎこちない歩き方で「何か温かいものを淹れてくるわ」と出て行った。
部屋はまた静けさに包まれた。この部屋には、先ほどまで僕が寝ていた天蓋付きの大きなベッドと、ほこりがかぶってほぼ見えない鏡の付いた化粧台(コルアは鏡に映らないから必要ないのだろう)、あとは暖炉の傍のタンスの上には、骨董品のような壺や地球儀などが並んでいる。
この部屋唯一の木製の窓をあけると、外から柔らかな温かい日差しが差し込んだ。
「っつ!?」
夏場日焼けしたときに入る風呂のように、ピリピリと肌が痛んだ。先ほどのコルアの話を聞いてもなお、まだ少し夢うつつだった脳髄に、これが現実であることを日光の痛みが神経を通じて訴えかける。
しばらく痛みに耐えると、あまり痛みを感じなくなった。湯船に浸かると、最初は全身痛むが、慣れてくると普通に肩まで浸かれるように、コルアの言う通り、慣れれば問題なく日中でも過ごせそうだ。
冷静になってみると、奇想天外なことに巻き込まれたものだ。少し病みがちな少女のヴァンパイアに助けられ、僕も2割ほどヴァンパイアになった。それでもこうして生きていられる素晴らしさ。生きてさえいれば何とでもなると、楽観的に捉えられるのは僕の長所だ。
木製の扉が軋む音がし、コルアが温かい紅茶の香りと柔らかな湯気が立ち上るマグカップを二つ持ってきた。
「ありがとう。アールグレイ?」
「そうよ。コーヒーの方がよかったかしら。でも、イギリスではコーヒーより紅茶の方が美味しいわよ。」
白色の二つのマグカップには、アメ色のアールグレイティーが注がれていた。だが、何故だか片方のコップの中身だけ、少し色が濃くみえる。
「色が少し違うみたいだね。」
「……片方は濃く煮出したのよ。せっかくなら、濃い方を飲んでもらいたいわ。」
「うーん、僕は薄い方が好きだから、こっちをいただくよ。」
渋いのが苦手な僕は、薄い方の白いマグカップを受け取ろうとすると、「ひろきはこっちを飲んでっ!」と慌てた様子で、反対側の濃い色の紅茶を手渡された。中をよく覗くと、コップの底に少し紅黒い何かが沈んでいる。
「…何か入れた?」
「何も入れてないわよ。」
「でもなんか沈んでるんだけど」
「私の愛の沈殿かしら。」
「いや、意味がわからないんだが…。」
一口だけ口に含んで飲み込むと、香り高い紅茶の風味と、苦い薬のような変な後味が口内に広がった。程よく温かい紅茶を飲むと、気持ちが落ち着く…はずが、何故だか無性にドキドキと鼓動が激しくなってきた。
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