ベイカーストリートの吸血鬼

muku

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第3話 恋する吸血鬼

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第3話 恋する吸血鬼

「あなたが死にかけてるところに、たまたま私が通りかかった。死にかけてるあなたを見て、私は恋に落ちちゃったの。私の血をあなたにあげたおかげで…。」

「えっ?……今なんて言った?」

「もう!何度も言わせないでよっ…あなたに一目ぼれしちゃったの。」

 実際にこの状況に陥った人でないと、その困惑は計り知れない。死にかけて、ヴァンパイアに助けられて、恋をしたと言われたあかつきには、もう僕の情報処理能力が追いつかない。

「ひろきって呼んでいいかしら?それともあなたの方がいいかな?///」

「いやいやっ、いいか悪いかで聞かれたらよくないよっ!ってか何で僕の名前知ってんだよ。」

「パスポートを見たもの。光月弘樹、20歳。」

「あぁ、なるほど…って。いや、そうじゃなくて、ちょっと待って。いきなり一目ぼれだとか、そんなこと言われても。」

「ひろきは、私に好かれるのは嫌なの?…そうなんだ。そっか…。」

  彼女は暖炉の傍に置いてある一番大きな薪を手に取り、そばにあった鈍い銀色の鉈で先端を削り出した。鈍い銀色の鉈がコントラストになり、彼女の美しい白銀の髪がより一層輝いて見える。

「ちょっと…、何しようとしてるの。」

「ヴァンパイアは不老だけど、…不死じゃないの。ちなみに鉈で首を落とされても死なないけど、木の杭を心臓に刺したら死ぬのよ。」

 彼女の薪を削るスピードが一層速くなった。

「っちょっと待って!…いったん落ち着こうか!」

 彼女の手から鉈と先の尖った薪を奪い取り、彼女の手が届かない高さに掲げる。

「っなんでよ!あなたが私のことを好きじゃないなら、あなたを殺して私も死ぬわ!」

  彼女は僕の身体にしがみつき、薪を奪い返そうともがいている。一度死にかけた命だが、こんなことで終わる僕と彼女の人生なんて馬鹿げている。恋なんてよくわからないもので死ぬなんて、シェークスピアも「そんな物語は書きあきた。」とうんざりするような悲劇ではないか。

「…っ待ってくれ!それじゃ僕も君もっ、…あまりに可哀そうじゃないか。……っとにかく!…僕に時間をくれよ!」

 泣きながら僕にしがみついて暴れる彼女の動きが止まった。

「……時間?」

「…っそうだ!人間にとって恋愛は、もっと…」

 僕はそこまで言いかけて、一度息を整えた。先ほどの騒々しさとは打って変わり、うす暗い部屋は水を打ったような静謐が戻った。恋愛を語るほど、僕は恋愛に関する知識や経験に精通していない。しかし、ここで何とか彼女を説得できなければ、僕も彼女も死んでしまう。

 彼女に届くように、言葉の一音ずつに僕の神経を集中させた。声を振り絞るように僕は続きを語った。

「もっと時間をかけて…大事に愛を育むものなんだ。…だから、今はまだ、僕は君のことが好きなのかわからないけど、君のことを心から好きになるための時間が欲しい。」

  赤黒く淀んだ彼女の瞳に、ルビーのような緋色の輝きが戻った。

「そうね!私もちょっと急すぎたかもしれない。やっぱり恋愛にはゆっくりと時間をかけなくちゃね。私たちヴァンパイアには、まだまだ時間があるんだもの。」

「わかってくれて何より…うん?今、私たちって言った?」

僕は間違いなく、キョトンとまぬけな顔をさらしていた。
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