2 / 2
第二話 実験前最終段階
しおりを挟む
素晴らしいプロジェクトだ。まるで爪楊枝で車を運転するみたいだ。」先ほどの社長、オックスフォード大学吹奏楽部副部長、岩研工業前社長の息子との最終会議で清掃員の方に言われたこの言葉が鮮明に残っている。とりあえず実験を行っていいとのことだったので必要なものをメモ用紙に書き出してみる。鼻毛、丸底フラスコ、駒込ピペット、いろはす、ガスバーナー、ジップロック、マッチ、、、、、このくらいか。
「ダイアン、悪いんだけどさ、渋谷のロフトの雑貨コーナーでこれ買ってきてくれない?」先ほど書いたメモを渡す。
「おっけー。あとゴミ出しておきますね。」ダイアンは気が利く。肝心でないときに。
ダイアンを見送った後、会議の結果と進捗を幸子主任に伝えに行く。
「主任、会議で了承が出ました。今ダイアンに必要なものを買い出しに行かせてます。」
「おっけー。ありがとう。明日くらいには実験始められそうね。頑張りましょ。私の昇進がかかっているのよ。」全社員三十人の会社で昇進したからなんだというのだ。もっと夢を見ろ夢を。これだからわが社は底辺企業のままなのだ。
自分のデスクでクラフトボスのキリマンジャロのブラックコーヒーをちびちび飲みながらユーチューブで「鼻毛 昇華」で調べる。出てきたのは「鼻毛をブラジリアンワックスでぬいてみた!」や「鼻毛でお困りの方は〇〇クリニックへ!」など鼻毛処理の動画が大半だった。なんとも頼りにならないものだ。それにしても暑い。わが社にも夏休みが欲しいものだ。西暦二〇七九年、人類の果てしない自己中心的な自然利用により恵比寿の気温は夏で四〇度を優に超え、冬でも一〇度を下回らなくなった。世間の企業が地球温暖化に対して危機感を抱いている中、わが社は他人任せで鼻毛の昇華というベンチャーとでもいうのだろうか、まったく新しい技術を開発しようとしている。ユーチューブでダメならと思い、チャットGPTに相談してみる。
「鼻毛を昇華させる方法を教えてください。」なにかでてくるといいが。
「すみません。お役に立てません。」まあそうだろうなと思った。どうしようか途方に暮れていると、先ほど買い出しに行かせたダイアンが戻ってきた。
「三門、頼まれていたもの買ってきたよ。」思ったより早い、というわけでもなかった。
「おっけ」ダイアンが置いた紺色のレジ袋の中身を出していく。丸底フラスコ、駒込ピペット、いろはす、ガスバーナー、ジップロック、マッチ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
やっぱりダイアンは肝心でないときに気が利く。肝心でないときに。買い出しというかなり肝心なときに火をつけるマッチじゃなくて、大塚製薬の飲み物のほうのマッチを買ってきやがった。前も肝心なときに気が利かなかった。オフィスに強盗が来たとき真っ先に殺されたのはダイアンだったし、電車で朕が腹を下し漏らすか否かの生死を彷徨っていた時に腹パンをして決壊させたのはダイアンだった。ダイアン。ダイアン。ダイアン。
「ダイアン、悪いんだけどさ、渋谷のロフトの雑貨コーナーでこれ買ってきてくれない?」先ほど書いたメモを渡す。
「おっけー。あとゴミ出しておきますね。」ダイアンは気が利く。肝心でないときに。
ダイアンを見送った後、会議の結果と進捗を幸子主任に伝えに行く。
「主任、会議で了承が出ました。今ダイアンに必要なものを買い出しに行かせてます。」
「おっけー。ありがとう。明日くらいには実験始められそうね。頑張りましょ。私の昇進がかかっているのよ。」全社員三十人の会社で昇進したからなんだというのだ。もっと夢を見ろ夢を。これだからわが社は底辺企業のままなのだ。
自分のデスクでクラフトボスのキリマンジャロのブラックコーヒーをちびちび飲みながらユーチューブで「鼻毛 昇華」で調べる。出てきたのは「鼻毛をブラジリアンワックスでぬいてみた!」や「鼻毛でお困りの方は〇〇クリニックへ!」など鼻毛処理の動画が大半だった。なんとも頼りにならないものだ。それにしても暑い。わが社にも夏休みが欲しいものだ。西暦二〇七九年、人類の果てしない自己中心的な自然利用により恵比寿の気温は夏で四〇度を優に超え、冬でも一〇度を下回らなくなった。世間の企業が地球温暖化に対して危機感を抱いている中、わが社は他人任せで鼻毛の昇華というベンチャーとでもいうのだろうか、まったく新しい技術を開発しようとしている。ユーチューブでダメならと思い、チャットGPTに相談してみる。
「鼻毛を昇華させる方法を教えてください。」なにかでてくるといいが。
「すみません。お役に立てません。」まあそうだろうなと思った。どうしようか途方に暮れていると、先ほど買い出しに行かせたダイアンが戻ってきた。
「三門、頼まれていたもの買ってきたよ。」思ったより早い、というわけでもなかった。
「おっけ」ダイアンが置いた紺色のレジ袋の中身を出していく。丸底フラスコ、駒込ピペット、いろはす、ガスバーナー、ジップロック、マッチ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
やっぱりダイアンは肝心でないときに気が利く。肝心でないときに。買い出しというかなり肝心なときに火をつけるマッチじゃなくて、大塚製薬の飲み物のほうのマッチを買ってきやがった。前も肝心なときに気が利かなかった。オフィスに強盗が来たとき真っ先に殺されたのはダイアンだったし、電車で朕が腹を下し漏らすか否かの生死を彷徨っていた時に腹パンをして決壊させたのはダイアンだった。ダイアン。ダイアン。ダイアン。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
幼馴染の婚約者ともう1人の幼馴染
仏白目
恋愛
3人の子供達がいた、男の子リアムと2人の女の子アメリアとミア 家も近く家格も同じいつも一緒に遊び、仲良しだった、リアムとアメリアの両親は仲の良い友達どうし、自分達の子供を結婚させたいね、と意気投合し赤ちゃんの時に婚約者になった、それを知ったミア
なんだかずるい!私だけ仲間外れだわと思っていた、私だって彼と婚約したかったと、親にごねてもそれは無理な話だよと言い聞かされた
それじゃあ、結婚するまでは、リアムはミアのものね?そう、勝手に思い込んだミアは段々アメリアを邪魔者扱いをするようになって・・・
*作者ご都合主義の世界観のフィクションです
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる