【創作BL】むっつりご主人様とポンコツロボットくん

りつ

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2.お題「合鍵」「ただいま」

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 ――合鍵を持つようなもの。
 そんなふうに駱(らく)は説明したものだ。俺が駱を組み立て、起動に成功した直後のことだった。
「僕にインストールされているプログラム、又は僕が蓄積した学習データにアクセスするためには、僕の機体胸部を開いた後、権限のある管理者がキィ・ワードを入力する必要があります。管理者に該当するのは僕を開発・販売した会社。それから、持ち主となるあなたです」
 栗色の髪の下から大きな瞳がじっと見つめてくる。観察されているように感じたのは自意識過剰だったろうか。
「会社は既に独自のキィ・ワードを僕に設定しています。あなたは別のキィ・ワードを設定してください。合鍵を作ってお持ちになるようなものです。あなた独自のキィ・ワードと生体認証を複合的に用いることで、他者に侵入を受けるリスクが低減されます」
「使用する言葉に条件は?」
「ショーすることバニー星人は、ですか?」
「……音声認識機能にだいぶ難がありそうだな」
 生真面目に確認してきた駱に、一語ずつ区切りながら同じ質問を繰り返す。今度は意味が通じたようで、駱は「四文字以上ということ以外に制限はありません」と適切な回答をくれた。
「四文字」
 英数記号はもちろん、平仮名でも漢字でもいいらしい。俺は束の間思案して、駱にある言葉を記憶させた。

「お帰りなさい、秋平さん!」
 玄関を開けたとたん、待ちかねていたように駱が飛びついてくる。駱はぴょこぴょこと俺の周りを飛び跳ねながら、鞄とコートを受け取って所定の場所に片付けてくれた。
「自分でやると言ってるのに」
「僕がやりたいんです。お任せあれ」
 駱は自分の胸を握り拳でどんと叩いた。薄い胸板だ。人間と遜色ない見た目だが、手順を踏めばそこは血の一滴も流すことなく開き、俺にキィ・ワードの入力を求めてくるのだろう。駱の製造会社が設定した純正のキィ・ワードと俺が決めた合鍵としてのキィ・ワード。任意に設定してよいと言われ、その言葉が浮かんできたのは何故だったのだろう。あるいは心のどこかで予感していたのだろうか。長い付き合いになりそうだと――手放せなくなりそうだと。
「秋平さん、それより何か忘れてませんか?」
 駱は耳に手をあてて秋平のほうに首を傾げ、期待に満ちた瞳を輝かせた。白い滑らかな耳たぶには、俺が贈ったイヤリングが勲章のように揺れている。
「ああ、そうだったな」
 駱の小さな頭を撫でる。
「――ただいま」
 俺の鍵こそが本物になればいいのに。密かに願わずにはいられなかった。


(了)250322
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