君なんか求めてない。

ビーバー父さん

文字の大きさ
9 / 29

旅立ち

しおりを挟む


 バッグに車が入ってるなら、このカフェも入れられないかな?と思って、家を収納って言ってみたら、シュっと吸い込まれた。

「おお、ライカのバッグは優秀だの~。
 インベントリとしては、精霊の空間だからいくらでも入るが、建物もか。
 ん?それなら、精霊界で暮らせばいいのではないか?」

「え?だってこのバッグの中に入るとか怖いよ!
 もしかして息できないとかさ」

 この家、土地ごと買ったのになぁ。
 建物だけしか持って行けないのか。

「ライカ、土地は精霊の物だから、買ってないぞ。
 売買出来ないことになっておる。」

「え!?じゃぁ、あれって建物のみの対価だったのか!」

 この世界の仕組みがまた良く分からなくなった。

「さぁ、行こう。
 私も人になってるんだが、どうだ?」

 魚人って言うか煌びやかなヒレや七色の鱗を、服で隠しただけの精霊王でしかなかった。
 毛の生えた獣人にはならないところが、精霊王なんだな。
 
「じゃあ、シイラ。
 暫くは一緒だ、宜しくね。」

 肩にバッグを掛けると、すごく身軽にその場を後にした。




 夜でも門番はいて出入りをチェックされていた。

「こんな夜中に国外へ行くのか?」

「はい、すみません。
 お仕事を増やしてしまって。」

 シイラの証明書ってどうしたら良いんだろ?考えてなかった!

「こんばんは。
 私も今夜この国を出て行くから、これを明日以降に、宰相にお渡しなさい。」

 シイラがそう言って、一枚の鱗を門番に渡した。

「は?え?
 これは!今すぐにでも!」

「ダメですよ。
 明日以降、宰相にお渡しなさい。
 分かりましたね?」

 シイラが見据えると、門番は、はい、と焦点の定まらない目で、返事をした。
 
「さあ、ライカ行きましょう」

 楽しそうに夜の道を俺と歩き始めた。





 一時間くらい歩くと、辺りは真っ暗な世界で、足元も覚束なくなった。
 それまではまだカシュクールの領地だったのか、街灯っぽい物が点いていた。

「シイラ、少し早く行きたいから、これから俺が出す物に驚かないでくれる?」

「ライカのバッグは優秀だから、何か出てくるんだね?」

 ワクワクした目で見られると恥ずかしかったけど、車を出して少しでもカシュクールから離れる事にした。
 ガソリンはこの世界に無いし、別な原動力にならないかな~と思いながら出すと、表示がガソリンじゃ無くて水になっていた。
 電気系統は太陽光で充電出来るようになっているし、最新のエコカーに作り変えられていた。
 考えたり思ったりするだけで、変化するのはこのバッグだからか?
 水なら、申し訳ないけどシイラに頼めば何とかなりそうだし、助かった。

「ライカ!これ何?
 ねえ、凄いね!」

 まるで子供みたいにはしゃぐシイラを助手席に乗せて、道案内をして貰いながらゆっくり走り出した。

「シイラ、大丈夫?
 車酔いしてない?」

「大丈夫だ。
 ドラゴンに乗るより快適だぞ!
 柔らかいイスだし、揺れもひどく無い!
 凄いな!ライカ!」

 俺の力でも何でも無いけど、シイラを初めて喜ばせて上げられたのは、とても嬉しくて最高に楽しかった。

「この道しかないが、途中に山があるからこの車とやらは使えなくなるな。
 明るくなってから、山へ入って峠を越えた辺りで、野営をして翌日にまた車を使えばかなり離れるぞ。」

 シイラのナビで走るけど、基本は一本道だった。
 ただ、舗装とかされてないから、結構ガタガタしたけど、シイラに言わせればドラゴンよりも快適なんだとか。
 確かに、硬い鱗に乗るみたいだし、長時間はお尻も痛くなりそうだけど、俺も一度は乗ってみたいかな、なんて思ってた。
 当然車だから、カシュクールから誰かが追い掛けて来ようとしても、そう簡単には追いつけないだろうし、車で二時間ほど走った所で少し休憩しようと車を止めた。
 夜明けまで数時間、少し仮眠を取って明日の朝イチで走り出して、昼前には山に入る予定と決めた。

「シイラ、お茶飲んで。」

 出てくる時に、ペットボトルに詰めたお茶をシイラに渡した。

「この世界は月とか星とかは無いんだな。
 夜明けってただ明るくなるだけなんだ。」

「光の精霊王が目覚める、夜は闇の精霊王が目覚める、それだけだ。」

 太陽光じゃなくて、精霊光だな。

「太陽光じゃなくて、精霊光充電だなんて、この世界はやっぱり、俺のいた世界とはちがいすぎるなぁ」

「ライカの世界は楽しかったかい?」

「うーん、楽しもうとしていた、が正しいかな。
 俺は生きるのに必死で、楽しむ余裕なんか無かったから、どうなんだろうな?」

 嗜好品なんかは買う余裕が無かったし、普段の生活も自炊して、何でも作れるし安上がりだし、保存して食費を浮かす事しか考えてなかったしね。
 そう言う経験があったから、カフェが開店出来たし、やっとのんびり生きて行けるって思ったんだけどな。

「お、闇の精霊王が来たぞ」

「え?どこ?」

暗い中に、ホンワリと光る鳥が現れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

婚約破棄をしようとしたら、パパになりました

ミクリ21
BL
婚約破棄をしようとしたら、パパになった話です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

処理中です...