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しおりを挟む屋敷内の処分が決まると、ザクロは足早に私室に戻り寝ているテイトの側へ行こうとすると、ベッドの周りに風の子達が集まっているのが見えた。
何故ザクロに見えるのか、巫覡でもないのに、と風の子たちは思っていた。
しかも、声まで聞こえている、と言う事に興味をそそられた。
「おい、お前、何で僕たちが見える?」
「さぁな。
それよりテイトが目覚めないのは何でだ?
治療はすんでいるのであろう?」
風の子達もそれを気にしてここに集まっていた。
原因は分からなかった。
「テイト様が目覚めない理由って、お腹すきすぎてじゃない?」
先ほど広間にいた下働きの一人が、後ろから声を発した。
「旦那様、テイト様のお世話をしに来ました。
体を拭いて、他の傷の包帯を替えにきました」
使用人になったばかりでまだ礼儀作法を学んでいなかった子らが二人、ノックもしない上に敬語を使う事もせず部屋へと入って来てザクロに話しかけた。
「僕たちも、あんまりお腹がすきすぎると、眠れなくなるけどそれが過ぎると動けなくなっちゃうので、同じかな?って思ったんです」
お湯でテイトの体を綺麗にしながら拭いて、手の傷だったり他の傷の包帯を取り替える子は、砂糖水があるといい、と言った。
「砂糖水?」
「僕らはお腹がすいて死にそうな時は、砂糖水を飲むんだ。
そうすると少し動ける」
「そうだね、僕貰って来るよ」
使用人としては全く成っていなかったが、その気安さがザクロの気持ちを少し軽くした。
「あと、塩もいる。
けど、とにかくなにか汁気のある物で腹に入れてやった方がいい」
使用人の子供の方がよく知っていた。
医者は傷があちこちにあるせいで眠っていると言っていたが、どれも古い傷で一番目立つ足と顔の傷は綺麗になっているのに、眠らせておくだけでいいと言っていた。
古い傷は公爵家で受けたものと、この屋敷に来てからのものが混在しているように見えた。
「医者も処分だったか」
「あの医者は、僕たちを診ようともしなかったし、ジョスクと旦那様にだけ良い顔をしていたんだ」
とても器用に包帯を巻いて行く子が、砂糖と塩だけは貰えたから、と呟いた。
コンコン。
今度はノックの音がした。
「旦那様、砂糖水をお持ちしました」
執事と先ほど砂糖水を取りにいった子が二人で入って来た。
「この子ではまだ持たせるのに不安がありましたので、私がお持ちいたしました」
トレーに乗せられた砂糖水のコップを見て、包帯担当の子はため息を吐いた。
「吸い口を付けてください」
「あ、そっか飲めないもんね」
確かにと執事たちは思ったが、ザクロはそのまま受け取り、口に含むとテイトの口へ流し込んだ。
流し込まれた砂糖水の殆どは端から流れたが、最後には喉が動いて嚥下したのが分かった。
「飲まれましたね!」
執事が喜びの声を上げるのと同時に、ザクロは二口目を流し込んだ。
今度はしっかりとテイトの喉が動き、流し込まれた砂糖水を飲み干していった。
コップの中身が半分くらいになった時、テイトが声を発した。
「う、甘い」
「テイト!!」
まだ意識と言うほどではないが、覚醒しつつある所で、ザクロは力いっぱい抱きしめていた。
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