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天界よいとこ一度はおいで

福だったのにむしろ。

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じゃぁ、終わるまで待ってるって言い張るから、一所懸命頑張って、今までよりは早く終わらせた。
凄い頑張って終わらせた!!

俺偉い!

「ミカさん、お待たせしちゃってすみません!」

もう、殆どの天使は自分の部屋や、家にいるだろう時間だった。

「イズミちゃん、ご飯食べて無いよね?
 さすがにこの時間じゃ、食べれないでしょ。」

あ、ノルマばっかり考えて、ミカさんのご飯の事忘れてた!

「ごめんなさい!
 ミカさん、ご飯食べてませんよね?」

「いや、私は上級だから、いつでも用意が出来てる。
 だから、イズミちゃん食べに行こう」

お腹はすいてるし、お言葉に甘えてって誘惑されそうだったけど、本来は俺みたいな雑用係は出入りしてはいけない所。

「ありがとうございます。
 でも、部屋に食べるものあるんで、また、時間が合えば、食堂に行きましょう。
 今日はさすがに疲れたので、寝ますね。
 また明日、心を尽くします。」

「私の許可があれば大丈夫なのに。」

「ズルはだめですからね。」

遥かに大きくて、大人で、綺麗な人がまるで子供のようだった。

「イズミちゃん、また、明日ね。
 おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

この挨拶が限界の合図だった。

自分の部屋の扉を開けたら、もう、立ってられなくて、そのまま眠りに落ちた。






扉に寄りかかるようにして朝まで寝てしまい、またしても遅刻した。

急いで自分の持ち場へ行くとカミツキガメ上司が、仁王立ちになっていた。

「すみません、遅れました!」

「君には本当に呆れました。
 ここの掃除、彼が朝早くからしたそうですよ?」

「え?
 それは昨日」
「また、ひどい嘘つくんですか?
 僕のジャマばかりして!」

泣きながら、カミツキガメ上司と言う大天使に訴えていた。

もう、いいや。

「すみません。」

はあっと深いため息をついて、あの子の分の洗濯をする様に言われた。

そして、また、カミツキガメ上司に庇われて食堂へ消えていった。

ありゃ、また食いっぱぐれたな。


言われたように、昨日の続きの前に洗濯をして、干した。
どっかのCMのような光景に達成感を覚えて満足しつつ、元の持ち場の掃除を始めた。


お昼の巡回と言う名の監視がきた。

その手には、汚れたままの洗濯物。

「俺、ちゃんとやりましたよ!」
「最後まで留めてないから、風で洗濯物が落ちて汚れたんだ。
 それくらい考えられないのか?!」

「すみません、すぐ、やり直します。」

こりゃ、何食抜く事になるかなー

まあ、元々死んでる体だし、どうって事ないだろ。

乾くまで時間が無いから洗った片っ端からなるべく平らな石をお湯で熱々にしたもので、アイロンをかけて乾かした。
ついでにシワも伸びて、綺麗に畳めた。

「イズミちゃん、面白いことやってるね~」

「あ、ミカさん!」

簡易?即席アイロンで、乾かしてたらミカさんが興味津々で覗いてきた。

「貧乏人の知恵、というか、必要に迫られてやってるんですけとね。」

「イズミちゃんは楽しそうに、ご奉仕するね~」

「楽しいですよ、だって、達成感あるじゃないですか。」

さあ、洗濯物も出来たし、持って行ってリネンの棚に入れておこうっと。


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