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天界よいとこ一度はおいで

騒がしい夜の始まり

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夜、ウリエルと店に来た。

本当は昼間のうちに管理会社とか行きたかったんだけど、抱き潰された。

動けなくて、お尻は痛すぎて、でも最後ならちゃんと踊らないと。

お風呂にずっと浸かって、ずっとストレッチをしていた。
それでも、天使の身体能力を持ってしてもキツかった。

ウリエルも俺も止められなかったし、いま思い出しても、体の軋む様な痛みより幸せな気持ちの方が強かった。

「大丈夫か?
 イズ、ラファエルを呼ぶか?」

「や、ダメです!
 そんな恥ずかしい事できませんよ!」

お尻が裂けちゃうかと思いました、なんて言えない。
昨日と今日で、俺はふにゃふにゃになってるのが分かる。
ウリエルが側にいて、ウリエルと抱き合えて、ウリエルを愛せるから、幸せで柔らかい自分を実感した。

「ストレッチして、今日一日を頑張りますよ。
 多分、最後のステージだし。」

「激しくしすぎた。」

そう言いながら頭を撫でられ、軽くキスをされた。

「最後だから、見てくださいね」

もちろんだ、とウリエルの笑顔と共に返事が貰えた。







そして、今、ココ。

多分、ウリエルの頭の中には、クラッシックな所謂、バレエダンサーが居たのだと思う。
そして、何故かミカエルと昨日のデカイ天使までがココにいる。

「ミカエル様、何故、その方とココに居るんですか?」

「やっだー!
 お客さんよ、俺!
 な?お前もだよな!」

人間の姿に合わせて口調を変えてるのか、最初からからかい気味の人だったけど、今日はノリノリだな。

てか、みんな200センチ超えだから、間にいる俺、セミじゃん!
電柱とセミじゃん!

「イズ、いや、ノエか。
 ノエ、挨拶に行こう」

ウリエルが俺の腰を支えて店の裏手から入った。

ミカエル達は、当然お金払って正面からね。
お客さんですからねー!

ったく。






裏手から入ってすぐに控え室があり、その奥に事務室があって、中には既にマネージャーが仕事をしていた。

コンコン
「失礼します、すみません、マネ
 実家でトラブルが出来て、迎が来てしまい至急帰らないといけなくなったんで、今日のステージでしばらくお休みさせて貰いたいんです。」

そう告げるとマネージャーは、顔を上げて不機嫌そうに、いつまで?と聞いてきた。

「まだ、見当もつかないので、
 期間は決められません。
 ですから、解雇でかまいません。」

「そうか、で、後ろの方は?」

「あ、の、実家の兄です。」

「お兄さん、ね。
 分かった、今日で解雇ね。
 契約違反だから、ギャラ出ないよ」

「それで良いです。」

事務所を後にして、ステージの準備をするから、ウリエルを客席のミカエル達の所へ送った。


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