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天界よいとこ一度はおいで
残滓
しおりを挟む今までの記憶がある中で一番幸せで楽しい時間だった。
「ノエちゃんは、俺が守ったるから、
早よ帰って来いや」
市来を大語と呼んでから、お母さんっぷりに拍車がかかった気がする。
「イズは私が守るから大丈夫だ。」
「いやいや、あかんて
アンタ、泣かせた前科持ちや」
「絶対、泣かせない
神に誓って!」
あー、神に誓ったら俺たちは絶対だなー
「大語、俺たちは神様が絶対だから、
神様に誓ってくれたら、大丈夫だよ
ありがとう。」
「私達は伴侶だから、絶対離れない。
病める時も、健やかなる時も、だ。」
ウリエル、酔ってます?
人間のアルコールなんて大した事無いはずなのに。
「じゃあ、約束やで!
絶対ノエちゃんを泣かせない!
浮気しない!
あんな風に誰にでもさわらせない!
ええな?!
で、なんでイズラエルなん?」
「俺達の洗礼名なんだよ」
焦って言い訳したら、カッコええなぁで終わったが、一連のことは前のめり気味に大語がウリエルに約束させ、何故か男の熱き友情が芽生えていた。
ガレオスも飴屋も呆れ顔ながら、良かったなと言ってくれた。
カオスになりつつある所で、閉店のアナウンスが流れた。
ナンパしていた客達は皆一様に店から退出させられ、スタッフと俺達のグループだけになった所で、マネが出てきて俺が今日で一旦店を離れる事、ウリエルが彼氏だから今ちょっかい出してるやつは罰金とか、結構ぶっちゃけてくれた。
そして、最後にもっと早く手の内を見せろと怒られた。
店の利益が違ったとか、マネらしい送別をしてくれた。
たった一週間、されど一週間だった。
さっきまで、ウリエルに絡んでいた群舞のダンサーは、口惜し気に睨む奴もいたけど、ウリエルが俺を抱っこしたまま離さなかったし、ずーっとキスやそれ以上になりそうな事してくれて、引き下がるしかなかったようだった。
有言実行だと思ってるんだろうけど、なんかちょっとずれている気もした。
初めての恋人のそんな事も嬉しいと感じていた。
夜明けに解散になった。
始発に向かって動く人の中を、俺達は惜しむようにゆっくりと歩いた。
「また、会おう」
そう言って、別々の道を歩き出した。
ウリエルが俺の腰を抱いて、天界へ還るぞと告げるとその姿を天使へと変えた。
俺もまた、天使の姿へと変えあまり見せたくない翼を出した。
「イズラエル、綺麗な翼だ。
神の加護がとても強くて、お前が愛された子なのだと改めて思うよ。
大事にする。」
ウリエルの生真面目さが好きだ。
無頓着なところも、たまには悲しくなるけどね。
ミカエルも、ウリエルも、上級天使も、手を差し伸べて、さあ、還ろう、と。
今、天界がどうなってるのか分からないし、ラファエルが俺が出て行った事を話さなかったのも気になる。
本当は還ったらまずいのでは、と。
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