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天界革命

ダンスダンス!

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事務所で相変わらずの不機嫌さを出すマネが、こちらをジロリと見ながらタバコの灰を落とした。

「なんだ、あの自称兄貴とはうまくいかなかったか」

「違いますよ、彼の身内に不幸があったので、俺だけこちらに戻っただけです。
 しばらくは動けないかもしれませんね。」

ほんの数日でひと月も経つなら、数年もしかしたら今世紀は動けないかもな。

「そうか、ご冥福を」

不思議なことに、マネの言葉はどこか心が込もっていた。

ガレオス達がまだ居るんだろうか、凄くステージが気になった。

「おい、まさか本当に遊びに来たわけじゃないよな?」

「あ、いえ、また働きたくて、フロアでボーイをやらせて貰えないですか?」

「アホか
 お前の身体能力を知ってて、誰がフロアなんかやらせるか!」

伝票やらに混じって、ダンサー用の契約書を出してきて、契約日を今日、そしてステージも今日からと言われた。

「お前ならソロで出てもいけんだろ
 サプライズかましてこいよ、な?」

珍しい、ほんとうに珍しいマネの御機嫌のよさだった。

衣装も準備してないのに無茶を言う。

「ホラ、これ、お前なら着れんだろ」

出してきた布のヒラヒラさが嫌な予感しかしないけど、広げてみて案の定の衣装だった。

それこそ、クラシックバレエのような衣装だった。

半透明なオフホワイトのオーガンジーで作られた丈の長いスカート。
てか、これ誰が着る予定だったんだよ?

「作っておいた甲斐があったな」

爆笑の湖かよって突っ込みする前に、作ってって俺用か。

「戻って来るって信じてたからな」

思いがけないマネの笑顔に、余程期待をしてくれてるんだと思いがけず嬉しくなって、こんな衣装もいいかなとかちょっと思ってしまった。





懐かしい控室で着替えると、マネが曲はこれで、と言ってきたのを聞いて覚える。
最初からアップテンポで入り途中に変調が入って曲の表情がガラッと変わるのをどう表現するか、とか普通に悩んでるのが人間臭くて笑えた。

いっそ天使という職を捨ててしまおうか。

馬鹿なことを独り言ちていたら、MCが始まった。
ステージの袖、みんなが捌けていくのを見てからトップライトが消され、アップテンポな激しいサウンドが流れ俺が飛びだした。

高く踏み切り、ほとんどステップとジャンプ力だけのトンボを切り、着地すると高速の駒のように回転した。
クラシックバレエの早いピルエットのように。
コレこんなオーガンジーのスカートでやらなくても、と思っていたら観てる方は広がる布がとても綺麗だったそうだ。

変調が入るとそれこそバレエのような動きと、ブレイクダンスのような動きを組み合わせたステップで踊りきった。

ステージでお辞儀をして捌けようとしたところで、ガレオスたちが雪崩れ込んできた。

「ノエ!!
 ノエ!
 全然変わんねーなー!!」

以前からの常連さんは、俺をまだ覚えてる人もいて歓迎ムードでステージは終わった。


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