【完結】悪役令嬢のお兄様と付き合います。【続編あります】

ビーバー父さん

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妄想と雑巾

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 法務の部署長が男爵令息を拘束したまま、邸宅に押し入るように入ると急いで出迎えた侍従は、奥の主人に来訪を告げる事も出来ずにその場で拘束された。

「これより家宅捜索に入る! 今この時より動いた者は捜査妨害として拘束し処罰対象とする!
 使用人達も考えた方が良いぞ、忠義を尽くして処罰されるか、正義を賭して減刑されるか、どちらかを考えろ!」

 なかなか、法務の部署長は剛拳だったようだ。
 それに法務なだけあって、飴と鞭の使いどころがうまい。
 
「あ、あの、減刑はどのくらいでございましょう?」

 一人の侍女が震えながら申し出ると、証言内容によるとだけ答えた。

 それを聞いて内容によるなら、とその侍女は執務室の奥に隠し扉がある事を告げた。

「良く言った!」

「あの、お願いです! 私の家族を助けて下さい!」

 ひれ伏してガタガタと泣きながら願う姿は、決して好きでこの屋敷にいたわけでも、加担していた訳でもない事が容易に想像できた。

「家族を人質か、悪党がやりそうなことだ。
 だからこう言う奴らがゆるせねぇ」

 家宅捜索するために後から着いた捜査員に侍女や使用人の身元を確認させ、移送用の馬車に次々と乗せていくと、この家の家令と思わしき中年の男が部屋の奥へと走り出した。

「おい! 動くなっつったよな?」

 部署長は体の一部を獣化させて、中年男の後頭部に飛び蹴りをした。
 足だけが変化していた。
 
 秘密とかそんな話だったかと思うが、派手にやってますけど?
 この調子でやって行けばイルの所へ早く帰れるじゃないか!
 
 そこからは秘密の扉目指して強行突破だった。

 書類関係は全て押さえ、それ以外にもしらみつぶしに探していく。
 秘密の扉を開ける為に奮闘していた者たちが鍵穴一つ見つからない、と報告をして来たのは夜も明けてしまい肝心な男爵の行方も分からなかった。
 間違いなくこの扉の向こうにいるはずだ。

「くそ! 男爵がいねーな」
 
 男爵令息を引きずって来て秘密の扉の前に突き出すと、開けられるよな? と脅す。

「ひぃ、し、知らない、僕は知らない!」

 そのやり取りを繰り返していると、陽はさらに高くなっていた。

「時間稼ぎしてんじゃねー!!」
 
 部署長が痺れを切らして男爵令息の頭のすぐ上の壁を蹴りで壊した。

 ガクガク震えながら私を見る不細工に、にっこり笑ってやった。

「あぁサイアス様! 分かってくれたんですね! 僕は無実です!」

「男爵令息なら、私の力になって下さると思ったのですが、違ったようですね」

 先ほどの飴と鞭の応用で、脅し役と宥め役でどうにか吐かせようとした。
 秘密の扉の奥が通路なのか部屋なのか、気持ち的には大分焦っていたが、それを見せずに説得を試みた。

「いつだってあなたの為に!」

「ならば、この扉の向こうには何があるんですか?」

 モジモジとしながら、キスをしてくれたら、などとふざけた事を言ったので、では、と近づいて抱き寄せる様な振りをして気を失わせた。
 雑巾を持って来させて、口の周りを濡らすと起こして、どうでしたか? と言い切った。

「あぁ、とうとう僕は貴方の物になったんですね!!」

 頭おかしいんじゃね?と捜査員までが薄ら笑いを浮かべていた。
 雑巾で濡れた口をベロベロと必死に舐めまわしてる姿に、青ざめる周囲。

「アレがサイオス様のキスの後だって思われるって事は……、雑巾の味って事か」

 捜査員の一人が呟いた。

 その瞬間、ドッと笑いが起きて、私のキスは雑巾味だと言われたようなものだった。

「貴様ら、これで長引いたら減俸してやるから覚えてろよ」

 部署長が睨みを聞かせると、ぴたっと笑いの波が収まった。

「あの扉はそこの書斎のデスクの引き出しの中に魔道具の仕掛けがあり、そこを押すと扉が開く。
 開けて数十秒後には閉まる仕組みなんです。
 その先に、通路があって王宮のすぐ近くに出るんです。
 だからいつでもサイオス様の元へ行けますし、あの邪魔な女みたいな男も邪魔は出来ない様に出来るんですよ」

 不気味な笑みを浮かべた。

「やはり、あのタイミングがおかしかったのだな!
 侍従は自害したのも貴様の指示か!」

「サイオス様の為にそうしたんですよ?
 だって、愛する僕の為にあいつを追い返してくれたじゃないですか」

 これはダメなやつだ。
 あのアリステリアの時の准男爵令嬢の思考回路と同じだ。

「そうですか、ではもう貴方に興味もありません。
 私の為を思うなら、罪を償う為にも処罰を受けてください」

 何を言っても無駄だと分かっていた。

 
 



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