32 / 32
第三章
【5.ナオの家で④】
しおりを挟む「ナオ・・・・急がなくても、いいんじゃないかな」
俺は、こうやって抱きしめるだけで、
ナオを満たそうとした。
こんな風に、身体を密着して
顔と顔がすぐ近くにある。
まず、
こんなことから始めよう、とでもいうように。
ぴったりくっついて、ナオの体温を感じる。
俺の太ももの上側も。
ナオの肩に顔を乗せることで、
ナオの身体からのいい匂いを吸い込む。
ナオはさ、こういうことでさえ、初めてなんじゃない?
キスまで、
すぐに叶えるものじゃないんじゃない?
俺たちは、
まずは手をつなぐ、なんてことできないけれど・・・
ほら
ナオがおずおず、俺の手にナオの手を重ねてきた。
それでいいんだ。
そのまま、俺たちは黙って過ごした。
ナオもその間、じっとしていて、
自然体というには無理があるが、カチコチというほどでもなかった。
しばらく、お互いの鼓動や呼吸や体温や匂いを感じているうちに、
俺の携帯のアラームが
終了を告げた。
「ナオ、時間だ」
ナオのこめかみに唇を寄せて告げ、
やんわりナオの手から片手を外し、
尻ポケットから携帯を取り出し、アラームをストップさせる。
ナオの腹に置いた手を重ねられたナオの手を無視してスライドし、
ナオを抱きしめる。
もう一度、ナオのこめかみに唇を寄せ、
「ナオ、時間だ」
とささやく。
ナオがわずかに、こくりと頷く。
ナオの腰を両手で持ち上げるように力を加えると、
ナオが少し遅れて身体を持ち上げる。
立ち上がったナオが、ベッドに腰掛ける俺の方へ振り向く。
ナオは口を閉ざしたまま、俺を見下ろす。
見上げる俺は、ナオの腕に手を伸ばし、
腕をさすりながら
「今日は、保健体育の日だったかな」
と言って、手を離し立ち上がった。
帰ろうと、持ってきていた鞄の方へ移動する俺に、
背後からナオの声が聞こえた。
「また、してくれる?」
「保健体育の授業?」
俺が振り返ってナオを見ると、ナオは恥ずかしそうなカオで頷く。
「いいよ。でもいつもの勉強もちゃんとしないとね」
俺がそう言うと、ナオはほっとした顔を見せる。
不安を感じていたみたいで。
俺はナオの頭を撫でて、ナオの家を後にした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる