5 / 59
誘い道
5
しおりを挟む
学校が終わり、今日の帰り道は気持ちが悪いので遠回りをして帰ることにした。
繁華街を抜け、雑踏の音が遠ざかる。
それに対して、暮れかけの日がてらてらと道を朱色に染めていた。
その黄昏を迎えようとしている帰路の途中に僕はふと思い出す。
まずい、このままだと殺される……
ハッとして僕はもと来た道を慌てて繁華街まで引き返した。
そして、近くのスーパーマーケットに飛び込んだのだ。
そう、なんとくだらないことかと思うがあんパンを買いに来たのだ。毎日、ガーシャにお土産としてあんパンを買っていくことが、僕が生かされている理由である。
僕の命はあんパンより軽い。
僕は無事に百円ほどのあんパンを購入し帰路に着くことが出来た。日はすっかり落ちて辺りは暗くなっていた。
今朝のことがあり少し怖かったが、道を変えた甲斐があったのか何とか無事に帰宅することができた。
僕は家に着いたことに安堵しながら自分の部屋に上がって行く。
スーパの袋をぶら下げて部屋に入るとガーシャが僕のベットで横になりながら暇そうにテレビを見ていた。
物の怪にあるまじき行為である。
ガーシャは僕を見るなり此方にズルズルと寄ってきた。恐怖演出というよりはただの物臭から成す行為だ。
「おお、優希よ。待っておったぞ。さぁ、さっそく茶を用意するのだ」
「はいはい」
仔犬のように集るガーシャにスーパーの袋を雑に渡す。そして、言われるがままに僕は一階でお茶をいれてきた。それを、部屋に置いてあるミニ机に二人分置く。
もうすでにガーシャはあんパンの袋をあけ正座をしてスタンバっていた。
お茶が置かれたのを満足げに眺めた後、ガーシャはあんパンを少し千切り口に運んだ。
さらにもう一口。
やっと、餡子に達したのか千切ったパンで餡子をすくってもう一口。
なんだか幸せそうに微笑むとほっと一息、お茶を音を立ててすすった。
ここまで菓子パンで満足できるやつも珍しい。
僕はそんなガーシャを眺めながらも向かいに座ってお茶をすする。
「まったくこれを作ったものは天才じゃ。まさに和と洋の調和というものであろう。そして、この上品な甘さがとてもお茶にあうのじゃ」
いつもの浅はかな講釈を垂れだした。この講釈は主に自分自身に話しているようで特に僕が話をあまり聞いていなくても構わないようである。
「あ、そうだ。ガーシャに聞きたいことがあるんだけど?」
「ん? なんじゃ?」
ガーシャはもぐもぐ口を動かしながら言う。
「今日、通学中に変なものを見たんだけど……」
「変な物とは何じゃ? 鏡か?」
「違うよ、僕の顔が変ってこと? 何かこう霊的なもの? 顔?」
僕の言葉に、少しの間ガーシャは目を細めて僕を観察したあと言う。
「ああ…。まぁ、妾の近くにこれだけ長い間いれば、波長が合うというのも道理であろうな」
「?」
ガーシャが何を言っているか理解は出来ていなかったが、今朝のあれは気のせいではないことを物語っていることぐらいは何となく分かった。
「霊とはな、波長を合わせることにより存在でき。波長を合わせることにより干渉できるというものよ。つまりだな、霊力とは干渉する力のようなものなのだ。干渉すればするほど存在を認知され恐れられる。有名になっている輩はそのようなものなのだ」
「僕の霊力が上がったとかそんなところ?」
「んー。ちょっと違うな。妾の霊力に当てられてこちらに近づいたと言うところか。見方が分かってきたと思えば良いだろう」
「なんか、嬉しくない……」
「まっ、問題ごとが嫌なら関わり合わないことが一番じゃな! 知れば、知るほど波長は合っていくものじゃ」
「そんなこと言われてもなぁ。やっぱ気になっちゃうと見ちゃうし」
「優希に見えたと言うことは、あっちもお前のことに気付いたと言うことじゃ。もう既に優希に狙いを定めて居るだろうな。奴が救いを求めているにしろ、憑りつこうとしているにしろ、ろくな結果にならないからな」
ガーシャは他人ごとの様にあんパンを食べ続けながら言った。
繁華街を抜け、雑踏の音が遠ざかる。
それに対して、暮れかけの日がてらてらと道を朱色に染めていた。
その黄昏を迎えようとしている帰路の途中に僕はふと思い出す。
まずい、このままだと殺される……
ハッとして僕はもと来た道を慌てて繁華街まで引き返した。
そして、近くのスーパーマーケットに飛び込んだのだ。
そう、なんとくだらないことかと思うがあんパンを買いに来たのだ。毎日、ガーシャにお土産としてあんパンを買っていくことが、僕が生かされている理由である。
僕の命はあんパンより軽い。
僕は無事に百円ほどのあんパンを購入し帰路に着くことが出来た。日はすっかり落ちて辺りは暗くなっていた。
今朝のことがあり少し怖かったが、道を変えた甲斐があったのか何とか無事に帰宅することができた。
僕は家に着いたことに安堵しながら自分の部屋に上がって行く。
スーパの袋をぶら下げて部屋に入るとガーシャが僕のベットで横になりながら暇そうにテレビを見ていた。
物の怪にあるまじき行為である。
ガーシャは僕を見るなり此方にズルズルと寄ってきた。恐怖演出というよりはただの物臭から成す行為だ。
「おお、優希よ。待っておったぞ。さぁ、さっそく茶を用意するのだ」
「はいはい」
仔犬のように集るガーシャにスーパーの袋を雑に渡す。そして、言われるがままに僕は一階でお茶をいれてきた。それを、部屋に置いてあるミニ机に二人分置く。
もうすでにガーシャはあんパンの袋をあけ正座をしてスタンバっていた。
お茶が置かれたのを満足げに眺めた後、ガーシャはあんパンを少し千切り口に運んだ。
さらにもう一口。
やっと、餡子に達したのか千切ったパンで餡子をすくってもう一口。
なんだか幸せそうに微笑むとほっと一息、お茶を音を立ててすすった。
ここまで菓子パンで満足できるやつも珍しい。
僕はそんなガーシャを眺めながらも向かいに座ってお茶をすする。
「まったくこれを作ったものは天才じゃ。まさに和と洋の調和というものであろう。そして、この上品な甘さがとてもお茶にあうのじゃ」
いつもの浅はかな講釈を垂れだした。この講釈は主に自分自身に話しているようで特に僕が話をあまり聞いていなくても構わないようである。
「あ、そうだ。ガーシャに聞きたいことがあるんだけど?」
「ん? なんじゃ?」
ガーシャはもぐもぐ口を動かしながら言う。
「今日、通学中に変なものを見たんだけど……」
「変な物とは何じゃ? 鏡か?」
「違うよ、僕の顔が変ってこと? 何かこう霊的なもの? 顔?」
僕の言葉に、少しの間ガーシャは目を細めて僕を観察したあと言う。
「ああ…。まぁ、妾の近くにこれだけ長い間いれば、波長が合うというのも道理であろうな」
「?」
ガーシャが何を言っているか理解は出来ていなかったが、今朝のあれは気のせいではないことを物語っていることぐらいは何となく分かった。
「霊とはな、波長を合わせることにより存在でき。波長を合わせることにより干渉できるというものよ。つまりだな、霊力とは干渉する力のようなものなのだ。干渉すればするほど存在を認知され恐れられる。有名になっている輩はそのようなものなのだ」
「僕の霊力が上がったとかそんなところ?」
「んー。ちょっと違うな。妾の霊力に当てられてこちらに近づいたと言うところか。見方が分かってきたと思えば良いだろう」
「なんか、嬉しくない……」
「まっ、問題ごとが嫌なら関わり合わないことが一番じゃな! 知れば、知るほど波長は合っていくものじゃ」
「そんなこと言われてもなぁ。やっぱ気になっちゃうと見ちゃうし」
「優希に見えたと言うことは、あっちもお前のことに気付いたと言うことじゃ。もう既に優希に狙いを定めて居るだろうな。奴が救いを求めているにしろ、憑りつこうとしているにしろ、ろくな結果にならないからな」
ガーシャは他人ごとの様にあんパンを食べ続けながら言った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる