ガシャドクロの怪談

水雨杞憂

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誘い道

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 学校が終わり、今日の帰り道は気持ちが悪いので遠回りをして帰ることにした。
 繁華街を抜け、雑踏の音が遠ざかる。
 それに対して、暮れかけの日がてらてらと道を朱色に染めていた。
 その黄昏を迎えようとしている帰路の途中に僕はふと思い出す。
  
 まずい、このままだと殺される…… 
   
 ハッとして僕はもと来た道を慌てて繁華街まで引き返した。 
 そして、近くのスーパーマーケットに飛び込んだのだ。 
 そう、なんとくだらないことかと思うがあんパンを買いに来たのだ。毎日、ガーシャにお土産としてあんパンを買っていくことが、僕が生かされている理由である。 
 僕の命はあんパンより軽い。 
  
 僕は無事に百円ほどのあんパンを購入し帰路に着くことが出来た。日はすっかり落ちて辺りは暗くなっていた。 

 今朝のことがあり少し怖かったが、道を変えた甲斐があったのか何とか無事に帰宅することができた。
 僕は家に着いたことに安堵しながら自分の部屋に上がって行く。
 スーパの袋をぶら下げて部屋に入るとガーシャが僕のベットで横になりながら暇そうにテレビを見ていた。
 物の怪にあるまじき行為である。
 ガーシャは僕を見るなり此方にズルズルと寄ってきた。恐怖演出というよりはただの物臭から成す行為だ。 
  
「おお、優希よ。待っておったぞ。さぁ、さっそく茶を用意するのだ」 
「はいはい」 
  
 仔犬のように集るガーシャにスーパーの袋を雑に渡す。そして、言われるがままに僕は一階でお茶をいれてきた。それを、部屋に置いてあるミニ机に二人分置く。
 もうすでにガーシャはあんパンの袋をあけ正座をしてスタンバっていた。 
 お茶が置かれたのを満足げに眺めた後、ガーシャはあんパンを少し千切り口に運んだ。 
 さらにもう一口。 
 やっと、餡子あんこに達したのか千切ったパンで餡子をすくってもう一口。 
 なんだか幸せそうに微笑むとほっと一息、お茶を音を立ててすすった。
 ここまで菓子パンで満足できるやつも珍しい。 
 僕はそんなガーシャを眺めながらも向かいに座ってお茶をすする。 
  
「まったくこれを作ったものは天才じゃ。まさに和と洋の調和というものであろう。そして、この上品な甘さがとてもお茶にあうのじゃ」 
  
 いつもの浅はかな講釈を垂れだした。この講釈は主に自分自身に話しているようで特に僕が話をあまり聞いていなくても構わないようである。 
  
「あ、そうだ。ガーシャに聞きたいことがあるんだけど?」 
「ん? なんじゃ?」 
  
 ガーシャはもぐもぐ口を動かしながら言う。 
  
「今日、通学中に変なものを見たんだけど……」 
「変な物とは何じゃ? 鏡か?」
「違うよ、僕の顔が変ってこと? 何かこう霊的なもの? 顔?」

 僕の言葉に、少しの間ガーシャは目を細めて僕を観察したあと言う。
「ああ…。まぁ、妾の近くにこれだけ長い間いれば、波長が合うというのも道理であろうな」 
「?」 
  
 ガーシャが何を言っているか理解は出来ていなかったが、今朝のあれは気のせいではないことを物語っていることぐらいは何となく分かった。 
  
「霊とはな、波長を合わせることにより存在でき。波長を合わせることにより干渉できるというものよ。つまりだな、霊力とは干渉する力のようなものなのだ。干渉すればするほど存在を認知され恐れられる。有名になっている輩はそのようなものなのだ」 
「僕の霊力が上がったとかそんなところ?」 
「んー。ちょっと違うな。妾の霊力に当てられてこちらに近づいたと言うところか。見方が分かってきたと思えば良いだろう」 
「なんか、嬉しくない……」 
「まっ、問題ごとが嫌なら関わり合わないことが一番じゃな! 知れば、知るほど波長は合っていくものじゃ」 
「そんなこと言われてもなぁ。やっぱ気になっちゃうと見ちゃうし」 
「優希に見えたと言うことは、あっちもお前のことに気付いたと言うことじゃ。もう既に優希に狙いを定めて居るだろうな。奴が救いを求めているにしろ、憑りつこうとしているにしろ、ろくな結果にならないからな」 
 ガーシャは他人ごとの様にあんパンを食べ続けながら言った。 
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