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誘い道
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彼女の表情がすべてを物語っていた。
僕は騙されたのだ。
「ククッ、クァッハハハ。優希よ、貴様はどこまでお人よしなのだ? こんな簡単な手に騙されおって!」
ガーシャはお腹を抱えひたすらに爆笑している。
「最後のは全部嘘じゃ」
僕の感謝の気持ちを返して頂きたい。
「クヒヒ! そう怒るな、怒るな! 妾が助けたことには変わりないだろう?」
「その通りだけど、納得が……」
「妾もな、こういうお馴染みのものをやってみたかったのじゃ。だがなぁ、こんなにも簡単に騙されてくれるとはなぁ。クックク」
ガーシャの笑いは止まらない。
僕が不服そうな表情のまま、ガーシャを睨んでいるとガーシャは外を指さし。
「まぁ、どちらにせよ長居は良くないことは確かじゃぞ。さぁ、帰るぞ」
僕はその言葉にため息を付くと「うん」と呟き、この怪しき道を出た。
草木も眠る丑三つ時。
とある、家の前に立つ二つの影があった。
そして、なんの躊躇もなく光の無いあばら家の敷地に入って行く。
草が生い茂り、木は好き勝手伸びるその敷地はこのような住宅地なら苦情が来てもおかしく無いような風貌であった。
しかし、不思議とその家に苦情を唱える者は今までいなかったのである。
二つの影はその敷地の草を分けつつ家屋の裏に回った。
影の一つは長い黒髪をもち、ラフなパーカーに身を包んでいる少女。
そして、もう一つの影は三つの尻尾を携える狼に見間違えるほどの大きさの白狐であった。
その一つの影、狐は言った。
「この街のかつての守り神も見る影がねぇな」
他者をあざ笑うかのようなその声は丈のながい草むらにむかって投げられる。
「何もいない? 私にも見える?」
少女がつまらなそうにぼやいた。
「ああ、見えるさ。だけどももうちょっと真剣さを出したらどうだ? お前に勉強してもらうために連れて来たんだ」
「ん、精進する」
少女は無気力気に言った。
『キツネ……キツネか……?』
茂みから人ならざる物の声が響く。渋く空洞を響かせ出された音は怪しく木霊していた。
『セイをクレ……ワタシがイキかえるセイを……』
「契約破ったのは貴様じゃねぇか。ぬけぬけと。細々と俺の霊力だけで生きながらえてれば良いものを…欲を出しやがって」
『ワ私は、この守りガミだ……』
「もう、てめぇはただの悪霊だよ。じゃあな、先輩っと」
白狐は尻尾の先から小さな火を放つと草むらが一気に燃え広がる。
『オオオオオオオオオオ…オオオオオオオオオオオオォ………オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…』
複数の声が重なったような断末魔が響き渡る。
まるで罪人が地獄の業火に身を焼かれているかのような。
「そんなことしていいの?」
「かまわんさ、ここの住人もとっくに殺されてるしな。さぁ、帰るぞ」
「あ、もういんだ。私が来る必要なかった」
「ぐだぐだ言うな。それも勉強だ。神である俺様に使える巫女としてな」
「うん。でも、結局何かわからなかった……」
「あれは、御神木様だったものだ。今は切り株にもなれてねぇものだがな。以前は御神木と讃えられてたが倒木の危険があるやら、道の邪魔やらで結局切り倒されたんだ。しまいにゃこの通り、家を上にたてられる始末さ。まぁ、その家人を呪い殺したときに俺がいさめて霊力を分けてやってんだがな。隠れて人を喰ってたらしい」
白狐はそう言うと、天を仰いで周囲の匂いを嗅いだ。
「む、それ以外の物の怪の匂いが微かに……近くにはもういねぇようだが」
「なんか言った」
「いや……、とりあえず引き上げるぞ」
燃え盛る家屋を跡にして二つの影は闇に消えて行ったのだった。
僕は騙されたのだ。
「ククッ、クァッハハハ。優希よ、貴様はどこまでお人よしなのだ? こんな簡単な手に騙されおって!」
ガーシャはお腹を抱えひたすらに爆笑している。
「最後のは全部嘘じゃ」
僕の感謝の気持ちを返して頂きたい。
「クヒヒ! そう怒るな、怒るな! 妾が助けたことには変わりないだろう?」
「その通りだけど、納得が……」
「妾もな、こういうお馴染みのものをやってみたかったのじゃ。だがなぁ、こんなにも簡単に騙されてくれるとはなぁ。クックク」
ガーシャの笑いは止まらない。
僕が不服そうな表情のまま、ガーシャを睨んでいるとガーシャは外を指さし。
「まぁ、どちらにせよ長居は良くないことは確かじゃぞ。さぁ、帰るぞ」
僕はその言葉にため息を付くと「うん」と呟き、この怪しき道を出た。
草木も眠る丑三つ時。
とある、家の前に立つ二つの影があった。
そして、なんの躊躇もなく光の無いあばら家の敷地に入って行く。
草が生い茂り、木は好き勝手伸びるその敷地はこのような住宅地なら苦情が来てもおかしく無いような風貌であった。
しかし、不思議とその家に苦情を唱える者は今までいなかったのである。
二つの影はその敷地の草を分けつつ家屋の裏に回った。
影の一つは長い黒髪をもち、ラフなパーカーに身を包んでいる少女。
そして、もう一つの影は三つの尻尾を携える狼に見間違えるほどの大きさの白狐であった。
その一つの影、狐は言った。
「この街のかつての守り神も見る影がねぇな」
他者をあざ笑うかのようなその声は丈のながい草むらにむかって投げられる。
「何もいない? 私にも見える?」
少女がつまらなそうにぼやいた。
「ああ、見えるさ。だけどももうちょっと真剣さを出したらどうだ? お前に勉強してもらうために連れて来たんだ」
「ん、精進する」
少女は無気力気に言った。
『キツネ……キツネか……?』
茂みから人ならざる物の声が響く。渋く空洞を響かせ出された音は怪しく木霊していた。
『セイをクレ……ワタシがイキかえるセイを……』
「契約破ったのは貴様じゃねぇか。ぬけぬけと。細々と俺の霊力だけで生きながらえてれば良いものを…欲を出しやがって」
『ワ私は、この守りガミだ……』
「もう、てめぇはただの悪霊だよ。じゃあな、先輩っと」
白狐は尻尾の先から小さな火を放つと草むらが一気に燃え広がる。
『オオオオオオオオオオ…オオオオオオオオオオオオォ………オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…』
複数の声が重なったような断末魔が響き渡る。
まるで罪人が地獄の業火に身を焼かれているかのような。
「そんなことしていいの?」
「かまわんさ、ここの住人もとっくに殺されてるしな。さぁ、帰るぞ」
「あ、もういんだ。私が来る必要なかった」
「ぐだぐだ言うな。それも勉強だ。神である俺様に使える巫女としてな」
「うん。でも、結局何かわからなかった……」
「あれは、御神木様だったものだ。今は切り株にもなれてねぇものだがな。以前は御神木と讃えられてたが倒木の危険があるやら、道の邪魔やらで結局切り倒されたんだ。しまいにゃこの通り、家を上にたてられる始末さ。まぁ、その家人を呪い殺したときに俺がいさめて霊力を分けてやってんだがな。隠れて人を喰ってたらしい」
白狐はそう言うと、天を仰いで周囲の匂いを嗅いだ。
「む、それ以外の物の怪の匂いが微かに……近くにはもういねぇようだが」
「なんか言った」
「いや……、とりあえず引き上げるぞ」
燃え盛る家屋を跡にして二つの影は闇に消えて行ったのだった。
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