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崖少女
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紀糸は帰宅後、溜息交じりに制服への着替えを済ませていた。
そして、着換えの最後に私服のポケットから丁寧に折った「雑に書かれたお札」を忘れず制服のスカートに移す。
「これでよし」
一応鏡で自分の姿を確認しつつ、呟く。
いつもと変わらない姿だが、時折この自分の姿が嫌になる。
紀糸はそんな気分を変えるように制服についていた毛玉を取り除いて気を紛らわした。
その後、毛玉取を投げ捨てるように置くと窓際に設置した机に座り外をぼんやりと眺める。
すっかり日は登り、辺りは活気付きつつある。
まるで起床時とは別世界のようだ。
「はぁー。今日学校が終わったら山に行けとか」
紀糸はおでこを抑えながらぼやいていた。
相変わらず悩み多き少女である。
そんな紀糸が悶々としていると、隣の家から「いってきます」聞き慣れた声が聞こえてきた。
「はっ、優希! あーっ、もうこんな時間かっ!」
紀糸は鞄を掴み取り、階段を駆け降りる。そして、ゆっくり朝食を取っていた父親に挨拶を済ませると玄関から慌ただしく駆け出して行ったのだった。
これが紀糸の日課にもなっていた。登校時間が安定をしていない優希と登校を行うために付けた彼女なりの知恵である。
優希が見えるくらいまで駆けて追いつき、それからは呼吸を整えつつ早歩きで彼に並ぶのである。
「きぃ、おはよ」
「おはよ、優希」
少し近づくと優希は気付いたようで挨拶をしてくれた。
彼女はこの挨拶を交わすだけでなんだか嬉しくなってくる。紀糸がそんな感情を顔に出さないように必死に堪えていると、優希も今日は何だか落ち着きがない様子である。
「なあ、優希? なんか今日はソワソワしてないか?」
「えっ……。そんなことないよ」
「いや、分かりやすいぐらい動揺してるぞ。明らかに」
紀糸は訝し気に優希の顔を覗き込む。
彼女は優希が嘘がそこまで得意ではないことは知っていた。内容までは分からないにしろ、何か隠し事があるくらいは分かるつもりだ。
最近の優希は時折、余所余所しさを出す時がある。
それは、同じく隠し事をしている紀糸自身にも当てはまることだが、優希は今までそのようなことが無かっただけに少し心配であった。
紀糸がそんな思考を巡らせていると、優希が言いにくそうに口を開いた。
「いやぁ、今日の放課後の事なんだけどね……」
「あっ、あー……」
逆に紀糸がバツの悪そうに言葉を詰まらせた。
早めに切り出さなきゃならない話題と思いつつも言うタイミングを見計らっていた話題だからだ。
「ハハハ……。あたしもさぁ、今日のオカ研の川に行く話の事なんだけど……」
誤魔化すような乾いた笑いを浮かべながら紀糸は、
「ごめんっ! 今日は急用が出来て行けなくなったっ!」
パンッ!と手を拝むように構えつつ優希に謝った。
急な立場の逆転に優希は驚いたような反応を示していた。
「えっ? なんで急に?」
「家庭の事情ってやつ……かな? とりあえず、すまん! 古川さんに謝っといて欲しい!」
「そんなの、自分で言ってよ!」
「ホント、すまん! 頼む!」
「ちょっとっ! きぃっ?」
なぜか、紀糸は優希に押し付けるように言い捨て駆け出してしまった。
今日、行けなくなって優希に申し訳ないと思う反面と古川が少し苦手という所もあったのかもしれない。
それに、優希はこっちの人間ではないしそれを知られてしまうのが怖くもあったからだ。
そして、着換えの最後に私服のポケットから丁寧に折った「雑に書かれたお札」を忘れず制服のスカートに移す。
「これでよし」
一応鏡で自分の姿を確認しつつ、呟く。
いつもと変わらない姿だが、時折この自分の姿が嫌になる。
紀糸はそんな気分を変えるように制服についていた毛玉を取り除いて気を紛らわした。
その後、毛玉取を投げ捨てるように置くと窓際に設置した机に座り外をぼんやりと眺める。
すっかり日は登り、辺りは活気付きつつある。
まるで起床時とは別世界のようだ。
「はぁー。今日学校が終わったら山に行けとか」
紀糸はおでこを抑えながらぼやいていた。
相変わらず悩み多き少女である。
そんな紀糸が悶々としていると、隣の家から「いってきます」聞き慣れた声が聞こえてきた。
「はっ、優希! あーっ、もうこんな時間かっ!」
紀糸は鞄を掴み取り、階段を駆け降りる。そして、ゆっくり朝食を取っていた父親に挨拶を済ませると玄関から慌ただしく駆け出して行ったのだった。
これが紀糸の日課にもなっていた。登校時間が安定をしていない優希と登校を行うために付けた彼女なりの知恵である。
優希が見えるくらいまで駆けて追いつき、それからは呼吸を整えつつ早歩きで彼に並ぶのである。
「きぃ、おはよ」
「おはよ、優希」
少し近づくと優希は気付いたようで挨拶をしてくれた。
彼女はこの挨拶を交わすだけでなんだか嬉しくなってくる。紀糸がそんな感情を顔に出さないように必死に堪えていると、優希も今日は何だか落ち着きがない様子である。
「なあ、優希? なんか今日はソワソワしてないか?」
「えっ……。そんなことないよ」
「いや、分かりやすいぐらい動揺してるぞ。明らかに」
紀糸は訝し気に優希の顔を覗き込む。
彼女は優希が嘘がそこまで得意ではないことは知っていた。内容までは分からないにしろ、何か隠し事があるくらいは分かるつもりだ。
最近の優希は時折、余所余所しさを出す時がある。
それは、同じく隠し事をしている紀糸自身にも当てはまることだが、優希は今までそのようなことが無かっただけに少し心配であった。
紀糸がそんな思考を巡らせていると、優希が言いにくそうに口を開いた。
「いやぁ、今日の放課後の事なんだけどね……」
「あっ、あー……」
逆に紀糸がバツの悪そうに言葉を詰まらせた。
早めに切り出さなきゃならない話題と思いつつも言うタイミングを見計らっていた話題だからだ。
「ハハハ……。あたしもさぁ、今日のオカ研の川に行く話の事なんだけど……」
誤魔化すような乾いた笑いを浮かべながら紀糸は、
「ごめんっ! 今日は急用が出来て行けなくなったっ!」
パンッ!と手を拝むように構えつつ優希に謝った。
急な立場の逆転に優希は驚いたような反応を示していた。
「えっ? なんで急に?」
「家庭の事情ってやつ……かな? とりあえず、すまん! 古川さんに謝っといて欲しい!」
「そんなの、自分で言ってよ!」
「ホント、すまん! 頼む!」
「ちょっとっ! きぃっ?」
なぜか、紀糸は優希に押し付けるように言い捨て駆け出してしまった。
今日、行けなくなって優希に申し訳ないと思う反面と古川が少し苦手という所もあったのかもしれない。
それに、優希はこっちの人間ではないしそれを知られてしまうのが怖くもあったからだ。
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