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崖少女
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しおりを挟む紀糸たちは三十分ほどで『小湧山林公園』にたどり着いた。
紀糸は自転車が乗れないため、七緒が自転車に乗って先行しているのを駆けて追いかけたので息を切らしている。
「きぃちゃん、大丈夫?」
七緒が駐輪所に自転車を止めて、首だけを曲げて此方を見て言った。
紀糸は切らした息を整えている。
「あ、うん。平気。あたし、体力には自信あるからね」
額に薄っすら浮かんだ汗を手で拭いながら言った。
「じゃ、山登り」
「七緒は耽々と容赦ねぇなぁ……」
紀糸は今のでどっと疲れたかのように肩を落としぼやく。
そして、これから自分たちが昇るであろう道を眺めた。道は森林公園と言われているだけあって木々に囲まれた登り道は綺麗にアスファルトで舗装されている。
所々に電灯もついているため多少日が沈んでも困らなそうな場所で現在は犬の散歩やランニングをしている人も何人か目についた。
「あんな事件があってもそこまで寂れてないな」
「そうだね、たぶんみんな実感わかないんだよ」
「んー、そうだなぁ。あたしも稲荷に話を聞く前にあのニュース見てたけど、気にも止めなかったもんな。実際、テレビの中の事とかは他人事だよ。最終的に目で見たことだけが真実として認識するもんなんだよ」
「そだね」
「そっけなっ! 今、あたし結構深いこと言ったつもりなんだけど」
「大丈夫、私。きぃちゃんのこと、ちゃんと見てるよ」
「そう言うことじゃなくてなぁ。ああ、もういいや。さっさと登って仕事終わらせような」
紀糸はそう言って、山道へ足を進めだした。その少し後ろを七緒も付いていく。
山道は少しでも斜面が緩やかになるように曲がりくねった道が続いていた。
紀糸はすれ違う人に軽い会釈をしながら歩みを進める。
入り口で見た人は帰路に着いた人ばかりだったらしく実際のところ山を下ってくる人が大半である。
すれ違う人たちの顔はどちらかと言えば健康的でそんなに霊的なものを感じるような雰囲気ではないし、辺りも差し込む日差しで明るく木々の香りが心地よく気分も良くなる。
そこまでマイナスのイメージもない。本当にハイキングに来ただけなのではないかと勘違いしてしまうほど、時間はかかったものの簡単に頂上に着いてしまった。
「なんだ、なにもないじゃん」
「行きははよいよい?」
七緒は首を傾げつつ紀糸に聞いたが、
「なにそれ?」
「じゃあいい」
「?」
知識が乏しい紀糸には話が通じなかった。
せっかく頂上に来たので辺りを見回すと傾きかけた日差しが少し下に見える街を赤く染め始めていた。
そこまで高くはない山とはいえ、周りにそこまで高い建物がないため遠くまで見渡せる。
「あそこらへん、うちの神社」
「あ、ほんとだ。じゃあ、あたしんちはあの辺かな」
「うん」
そう頷き、顔を上げた七緒は一点に視線を寄せる。
紀糸もそれにつられるようにそちらを見た。
そこには登ってきた道とは違う道があった。
登ってきた道同様、舗装され申し訳程度の電灯が設備されている。
先ほどの道と違うのは、登ってきた道の半分程度しか幅が無い階段となっていることだった。二人並んで降りて行ったら道を塞いでしまうほどの幅である。
「きぃちゃん」
七緒がその道に近づき、つんつんと指さした先には錆びや汚れで見にくくなっているが『ショートカットコース』と書かれている。
どうやら、この道は斜面は急であるが登りで来た道のように曲がりくねってなく、まっすぐに上り下りできるようである。
看板に記載された登山目安時間も先ほどの道の半分の時間が記載されていた。
「ちょうどいいや、帰りはこっちから降りてみるか」
「そうだね」
二人はもうしばらく景色を楽しんだ後に帰路としてその道を選択することにした。
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