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稲荷様
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紀糸の部屋のドアを開けるとムワッと籠った空気が噴き出て顔に降りかかる。
「うわっ、空気悪いな」
「しょうがないだろ。パ……父さんがよく加湿しておいた方がいいって言うもんだから」
僕が言うとベッドの上に腰を掛けている紀糸が答えた。服装は最低限の身だしなみを整えており緩めのトレーナーを着ている。
「うっす、なんだ元気そうじゃん」
「別に風邪とかそういうのじゃないからなぁ。安静は必要だけと比較的元気だぞ」
「元気そうでなにより! にしても、確かに空気わりぃな。少し換気した方がいいんじゃねえの?」
「たしかにな。ちょっと窓開けるかな」
紀糸がそう言って窓を開けると、流れ込んできた新鮮な空気が溜まった空気をドアから押し出した。
それだけで、だいぶ空気が軽くなった気がする。
新鮮な空気を吸い込み落ち着く。よく見ると加湿器が二つも置いてあった。あんなジメジメした空気になるのも道理である。
「あ、これ授業のプリントな」
能久は溜まった課題プリントを紀糸に手渡した。数日休んだだけなのに小冊子ほどの厚さがある。
「おっ、能久、サンキューな。……ん、全然分からん。ただでさえあんまり授業分からないのに、先が思いやられるなぁ……」
紀糸はプリントの重みを実感しうなだれた。
「まっ、それ見て休みの間に少しでも勉強しなよ。僕も暇なとき教えてあげるから」
「ほんとか!すっごい助かる!」
紀糸の表情がパッと明るくなる。よほど不安だったのだろうか。
「それと、きぃ? そろそろ学校とか来れそうなの?」
「んー。まだかな。もう少し立てばまたきっと行けると思うけど」
「なんか重い病気なの?」
「そんなことないよ。しいて言うならあたしの生まれつき周期的に表れる持病って感じかな」
「うそ、そんなの持ってるの僕知らなかった。本当に大丈夫?」
「だぁーっ! 大丈夫だったら、大丈夫だってのっ! ほんとデリカシーないな! 優希は!」
「?」
心配しているのに何故か怒鳴られた。ついでに紀糸は枕を思いっきり僕に投げつけてきた。とっさのことだったので僕は避けられずにその枕を顔で受け止めてしまう。
しかも、そば殻枕であったため結構いたい。
落ちる前に枕をキャッチしたはものの流石に病人相手に投げ返すようなことはしなかった。
「優希、俺らには分からない女の子の日ってやつだよ」
僕の肩に手をポンと置き能久が言うと、今度は能久の顔に気持ちい音を立てて飛んできたスリッパがぶつかった。
「用が済んだならもう帰れよ……」
さすがの紀糸も呆れ顔である。
「そうだね、ゆっくり休んで」
僕らがそう言って帰ろうとすると再びあの音が耳に入った。
カリッ
カリッ
っと、木材を爪で引っ掻いているような小さく響く音が。
よく聞くとどうやら天井から聞こえてくるようである。
「この音?」
「ん、なんだ?」
「きぃの家って三階とかあったっけ?なんか、天井から音が聞こえるんだけど」
「ああ、屋根裏部屋があるからな。たぶんネズミだろう。最近いるんだ」
「そうなんだ?」
少し疑問を持ちつつも家主が言うなら間違いはないだろう。本人もあまり気にしていないようだし。僕らは紀糸に別れを告げそれぞれ帰宅して行った。
二人を見送った紀糸は再び窓を閉め切り部屋を加湿した。
母親の時も、紀糸自身が幼い時も、同じように世話を焼いてくれた父親の言うことは信じて損はない。
紀糸は優希と能久が居るときは平気を装っていたが実際は体中締め付けられるように痛かった。無意識に、特に締め付けが強い脚をさする。
その時までまだかかりそうだ。
「うわっ、空気悪いな」
「しょうがないだろ。パ……父さんがよく加湿しておいた方がいいって言うもんだから」
僕が言うとベッドの上に腰を掛けている紀糸が答えた。服装は最低限の身だしなみを整えており緩めのトレーナーを着ている。
「うっす、なんだ元気そうじゃん」
「別に風邪とかそういうのじゃないからなぁ。安静は必要だけと比較的元気だぞ」
「元気そうでなにより! にしても、確かに空気わりぃな。少し換気した方がいいんじゃねえの?」
「たしかにな。ちょっと窓開けるかな」
紀糸がそう言って窓を開けると、流れ込んできた新鮮な空気が溜まった空気をドアから押し出した。
それだけで、だいぶ空気が軽くなった気がする。
新鮮な空気を吸い込み落ち着く。よく見ると加湿器が二つも置いてあった。あんなジメジメした空気になるのも道理である。
「あ、これ授業のプリントな」
能久は溜まった課題プリントを紀糸に手渡した。数日休んだだけなのに小冊子ほどの厚さがある。
「おっ、能久、サンキューな。……ん、全然分からん。ただでさえあんまり授業分からないのに、先が思いやられるなぁ……」
紀糸はプリントの重みを実感しうなだれた。
「まっ、それ見て休みの間に少しでも勉強しなよ。僕も暇なとき教えてあげるから」
「ほんとか!すっごい助かる!」
紀糸の表情がパッと明るくなる。よほど不安だったのだろうか。
「それと、きぃ? そろそろ学校とか来れそうなの?」
「んー。まだかな。もう少し立てばまたきっと行けると思うけど」
「なんか重い病気なの?」
「そんなことないよ。しいて言うならあたしの生まれつき周期的に表れる持病って感じかな」
「うそ、そんなの持ってるの僕知らなかった。本当に大丈夫?」
「だぁーっ! 大丈夫だったら、大丈夫だってのっ! ほんとデリカシーないな! 優希は!」
「?」
心配しているのに何故か怒鳴られた。ついでに紀糸は枕を思いっきり僕に投げつけてきた。とっさのことだったので僕は避けられずにその枕を顔で受け止めてしまう。
しかも、そば殻枕であったため結構いたい。
落ちる前に枕をキャッチしたはものの流石に病人相手に投げ返すようなことはしなかった。
「優希、俺らには分からない女の子の日ってやつだよ」
僕の肩に手をポンと置き能久が言うと、今度は能久の顔に気持ちい音を立てて飛んできたスリッパがぶつかった。
「用が済んだならもう帰れよ……」
さすがの紀糸も呆れ顔である。
「そうだね、ゆっくり休んで」
僕らがそう言って帰ろうとすると再びあの音が耳に入った。
カリッ
カリッ
っと、木材を爪で引っ掻いているような小さく響く音が。
よく聞くとどうやら天井から聞こえてくるようである。
「この音?」
「ん、なんだ?」
「きぃの家って三階とかあったっけ?なんか、天井から音が聞こえるんだけど」
「ああ、屋根裏部屋があるからな。たぶんネズミだろう。最近いるんだ」
「そうなんだ?」
少し疑問を持ちつつも家主が言うなら間違いはないだろう。本人もあまり気にしていないようだし。僕らは紀糸に別れを告げそれぞれ帰宅して行った。
二人を見送った紀糸は再び窓を閉め切り部屋を加湿した。
母親の時も、紀糸自身が幼い時も、同じように世話を焼いてくれた父親の言うことは信じて損はない。
紀糸は優希と能久が居るときは平気を装っていたが実際は体中締め付けられるように痛かった。無意識に、特に締め付けが強い脚をさする。
その時までまだかかりそうだ。
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