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38 先輩の夏休み
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季節は夏。お屋敷には冷風魔道具ってやつが一応設置されているのだが、涼しさのレベルでいうと木陰よりは涼しいなってくらいである。俺、暑がりだから全然足りない。設定温度20℃にしたい。
そんで屋敷にはなぜかプールがある。王族か、金持ちか、そういうのが好きな魔術師の家によくある定番設備。大量の水を使うから、魔術師本人か魔術師に高い金を払ってお願いできる人にだけ許された娯楽設備である。
普通に水を引けばいいが、水圧が足りなくて時間がかかりすぎるからな。金持ちは金で時間を節約するものだ。時は金なり。
そんなに暑い暑いと言うならここで遊んでみればと先輩に引っ張られ、裏の方にあるプールへ早速やってきた。水を引くくらいは出来るから、俺に任せろ! と張り切って。
ボーン!! という轟音が立ち、スパーッと虹が現れたが成功は成功である。『ご近所迷惑だよネオくん』って言われても。俺は制御の類はマジで苦手なんだってば。いいじゃん出来たんだからさあ。終わり良ければ全て良し。
せっかく完成させたのだ。次は流れるプールを作ってみたい。ほんとは波の出るプールにチャレンジしてみたかったが、今はやめとく。ぶっつけ本番でそれをやると、葛飾北斎のあの絵みたいな情景を作ってしまうだろう。シンプルに入れない。死人が出る。
そして干した洗濯物から建物まで、何から何までビショ濡れにしてしまう。そんでメイドさんに叱られるのだ。目に見えている。
「いやいや。もうこれ真ん中から魔獣が出て来る勢いじゃない。しかし水が全く零れてないところだけは素晴らしい」
「一万一千回転させてもコップの水はこぼすなってレイブン先生が……」
俺は流れるプールを作りたかった。それだけなのに、ゴウンゴウンと唸る渦潮が大完成した。この中に入るのは危険すぎる。お洗濯されました、みたいなメルヘンだけじゃ終わらない。やはり死人が出る。棺が要る。
仕方なく魔力をカットしてからしばらく待った。プールの縁で先輩が、流れる水に手を突っ込み『すごーい』と、呑気に楽しんでいる。それを背後から見ていた俺は魔が差した。このまま突き飛ばしたらどうなる。やべえ、めちゃくちゃ面白くない?
無様に落ちて流されてゆく先輩を想像しながら、気配を殺して近づいた。前を向いたまま立ち上がる、何も知らない先輩。よしよし、身体をくの字に曲げて落ちるのもいいだろう。 それもまたオツである。
そして意を決し、先輩の腰の辺りに勢いよく張り手をかましてやった。はずだった。
「えっ…………!! ぶはあ!! ちょ、先輩!! なんでだよ!!」
「バレバレだよネオくん、ははっ、落ちてやんの! ハハハハハ!!」
「くっそー!! なんでわかんだよ!! 妻を落とす夫がいるかよ!!」
「わかるよ。僕を落とそうなんて百年早い、ハハハハ、すっげー流れてる!! お腹痛い!!」
先輩は片足を後ろに引き、振り返ったように見えたからヤベェと思って止まったのに、勢いよく回し蹴りをかまして俺をフッ飛ばしやがったのだ。背中付近への衝撃と共に、くの字になって飛んだのは俺。
死んだと思った。だって突然水面が目に飛び込んできて、気がついたら水中だぜ。てっきり三途の川にインしたかと。青い水面が日の光をギラギラ反射して、眩しいったらないんですけど。
先輩は俺を指差してまだゲラゲラ笑っている。くっそー、隠れ王族イコール、実質的な隠れ大魔術師イコール、王宮騎士団員様恐るべし。体幹のブレなさと、気配を読む能力が半端なさすぎる。
しかし、こんなのんびり暮らしをしていていいんだろうか。俺はたまに、どうにもならなさそうな討伐の応援として呼ばれることもあるのだが、基本的には出張サービスとして眠れない人を眠らす仕事を請け負っている。
どんな精神状態であろうが、どんな呪いにかけられていようが必ず眠れるのだと好評だ。だから仕事の数は当初想像していたよりも結構多い。
多いのだが、お客はどいつもこいつも手応えを感じる間もなく一瞬で眠りやがるから仕事がすぐに終わってしまう。俺様お得意の歌う魔術も、サビまで行けた試しがない。
なんなら最初の一節だけでグースカピーと眠ってしまう。のび太かよ。聴いてくれよ俺の歌を。そりゃ感謝は大いにされるけど。
「ねー先輩、俺さあ、ここでいっつものんべんだらりんしてていーのー? 先輩は忙しいのにさあ」
「いいんだよ。家に帰ったら必ずネオくんがいる。帰り甲斐があるってもんだよ」
「えーでもさー、張り合いないっていうか。もっとバリバリ仕事してた方がかっこよくない? 先輩もさあ、たまにはひとりで過ごしたくなんないの?」
「うちにいてよ。だって帰ってもし居なかったらつま……妻を愛してるからなるべく沢山会いたいし」
「今つまんないって言いかけたでしょ。バレてっから。発音が違ぇから」
外ではいい子の仮面を被っているこの男も、先ほど俺をプールへ蹴り飛ばしたように家では好きに遊んでいる。主に俺で。まるで子供である。
寝ている俺の髪を全部三つ編みにして、メイドさんたちとグルになって俺が気づくまで黙ってたり、フリフリが死ぬほどついた夜着を調達して俺が着るまで粘りまくり、着たら着たで喜ぶどころかしこたま大笑いしてから裾をめくって襲い、庭で取った虫を見せてきたと思ったらシレッとポケットに入れてきたり。あんた年上だろうが。一応は。
俺、虫捕りは学園入る前に卒業してきたんだよ。もう履修する気はないんだよ。あのカブトムシを拡大したみたいなやつ、マジで怖かった。ポケット魔術書くらいはあった。なんか飛ぶし。ギチギチ鳴くし。五本ある角が服に引っかかってなかなか取れてくれなかったし。
このあと適当に脱ぎ散らかし、ゆるく流れるプールを二人で楽しんだ。主に追いかけっこだが。水中で脚を引っ張るのはやめてほしい。ホラー映画の冒頭みたいでめっちゃ怖い。
──────
「ちょ、ちょっとっ、アナタ……、真っ昼間からっ」
「いいじゃない。疲れたら昼寝すれば」
──そういうことをしたいならもっと前もって実行してくれ。着替えた意味。
家に帰れば先輩は食う、寝る、遊ぶ、ヤるの四本立てで過ごしている。まあ好きにしたらいい。そこそこの規模な討伐遠征とやらが終わって間もないし。
「ところでさあ、いつ名前で呼んでくれるの。このままじゃ僕、子供に先輩って呼ばれることになっちゃうよ」
「そうなったらパパでいいじゃん。いいじゃんパパ。だってなんか、今更恥ずかし……あ、耳舐めないでっ、噛むのもダメっ」
「えー、でもさあ。ママはパパを先輩って呼ぶんだよ。自分もそうしようって思うじゃない。子供は親の真似をする。そのたびにパパだよーって訂正するのはだる……ダメだと思うなー」
「今だるいって言いかけたでしょ、この隠れ不良めっ……ストップストップ! 魔力が多い! はっ……! 頭クラクラしてきた……!」
そう、まだ早いと思うがこの子を育ててみないかという打診がすでに来ているのだ。魔力量はそこそこにあるだろうという見立てをされた赤ん坊。しかしまだお腹の中で泳いでいる。
とある中堅どころの家格のお家の奥様が、旦那様との相性がやたら良すぎて子供ができすぎちゃったし、まだ子供がいないなら是非、とのこと。
最近まで知らなかった。魔力の多い者がまだ兆候などが出る前段階の子供と、家族として世話をしながら触れたり一緒に過ごすことで、魔力の機構やら回路やらが変質してゆくことを。
子は親に似るが、それだけではない。夫婦などの元他人ですら長く共に暮らすうちに、兄妹のように顔や雰囲気が似てくるあの不思議な現象。これらは魔力のことにも適用されるそうなのだ。
つまり、養子に頓着のないこの国の民であり、せっかく産むなら英才教育を施すレールに子を乗せてみたい親御さんと、逆立ちしても子は作れないが、能力だけはとにかく阿呆ほどでかい俺らとの利害が一致したお話なのである。
「産まれてすぐ引き離すなんてわけにはいかないからね……、まだ時間はあるけどさあ、そんなのあっという間だよ。どんな子になるかなあ。制御は上手くなるといいなあ……」
「あ、あ、まってまって、いきなり、深すぎ……っ、……脱がすならちゃんと脱がしてよ、中途半端なっ……! チカン! 変態!」
「汚しちゃえ汚しちゃえ。誰にどうされてどんな風に汚しちゃったのか洗濯場でちゃんと言うんだよ。できるできる。口が達者だから」
「嫌だよそんなん、恥ずかしい……! あ、脱ぐから待ってよ、ダメだって、あっ、んっ…! だめ、やだあ、ブルーノ!!」
突然我に返ったように止まったぞと思ったら、激しい動きの代わりに無言になった先輩に追い詰められたし責め立てられた。腕を巻きつけられて身動きが取れず思いっきり達してしまい、抵抗虚しく洗いたてだったはずの服はシワが寄ってくしゃくしゃだし、べっとべとに濡れてしまい、可哀想なことになった。また洗濯場へ直行である。使用人さんの仕事を増やすな。
「はあっ……、もう、何なの急に……、溜まってたの? 昨日もしたじゃん」
「はー……、君ねえ、突然呼ぶのはずるいよー。ああ興奮した。じゃ、続きしよっか」
「え!? まだヤるの!? 俺もう休みた……あ、やだっ、そうやって半端に前触んないでよ、やるなら最後までやってよお」
「やだなー。しっかり擦っちゃったら出し切っちゃうじゃん。つまんない。勝手に空になるまで頑張れよ」
このあとも先輩はしつこく俺で遊び続け、自動でブラックアウトするまで構い倒された。ほんとは冷風魔道具の風を最大にして、部屋でゴロゴロしながらゆっくり寝たかったのに。せっかく拭いてサラサラになった身体が、また汗をかいてベトべトである。そんで暑いし。
たっぷりと注がれる魔力に比例し、ぼやけてゆく夢と現実との境界線を感じつつ、『誰にこうされてるか言ってみな。先輩って誰のことぉ? ほら言ってみなって、聞こえなーい。ほら、はっきり言えよ。……はは、毎度毎度いい声してんな』と、言葉責めに忙しい先輩の愉しそうな声を耳に通しながらも意識は途切れた。
ず──っと言ってたもんね。名前で呼んでくれって。でも俺はさあ、運動部歴が長いから。学年が上がって上の立場になったとしても、かつての先輩に会ったら即後輩に戻っちゃうのが魂に刻み込まれてるわけですよ。
まあこれからは意識して呼んであげようかな。なんか怖いし、ほんと恥ずかしいけど。早くパパー、と呼んでごまかしたい。
それにしてもさあ、あちーよこの部屋。サウナじゃん。魔道具全然効いてねえ。かき氷とか食いてーなー。料理人さんに言ったら『ハァ!?』とか文句言いながらも結局作ってくれるだろうけど。
俺が作るとキッチン凍っちゃうからな。三分で出来る業務用冷凍庫。一回やっちゃったから俺だけキッチン出禁。遺憾である。
先輩にお願……いや、やめとこ。また食ったらヤるパターンになる。そしてまた暑くなるに決まっているのだ。
────────────────────
読んでくれてありがとう美しいお嬢さん!
現在はカクヨムのサポーター限定で、先行公開してる連載がございます。タイトルは「温容な前科持ちさんと犯罪者の冤罪くん」。さあ、もっと近くへ来ておくれ。君の可愛い声を聞くために。
ケモ耳つけてなにやってんだお前、と思ったお嬢さんは星とブックマークお願いしまーす!
↓あなたの恋人、清田のマイページはこちら!
https://kakuyomu.jp/users/kiyotaiitori
そんで屋敷にはなぜかプールがある。王族か、金持ちか、そういうのが好きな魔術師の家によくある定番設備。大量の水を使うから、魔術師本人か魔術師に高い金を払ってお願いできる人にだけ許された娯楽設備である。
普通に水を引けばいいが、水圧が足りなくて時間がかかりすぎるからな。金持ちは金で時間を節約するものだ。時は金なり。
そんなに暑い暑いと言うならここで遊んでみればと先輩に引っ張られ、裏の方にあるプールへ早速やってきた。水を引くくらいは出来るから、俺に任せろ! と張り切って。
ボーン!! という轟音が立ち、スパーッと虹が現れたが成功は成功である。『ご近所迷惑だよネオくん』って言われても。俺は制御の類はマジで苦手なんだってば。いいじゃん出来たんだからさあ。終わり良ければ全て良し。
せっかく完成させたのだ。次は流れるプールを作ってみたい。ほんとは波の出るプールにチャレンジしてみたかったが、今はやめとく。ぶっつけ本番でそれをやると、葛飾北斎のあの絵みたいな情景を作ってしまうだろう。シンプルに入れない。死人が出る。
そして干した洗濯物から建物まで、何から何までビショ濡れにしてしまう。そんでメイドさんに叱られるのだ。目に見えている。
「いやいや。もうこれ真ん中から魔獣が出て来る勢いじゃない。しかし水が全く零れてないところだけは素晴らしい」
「一万一千回転させてもコップの水はこぼすなってレイブン先生が……」
俺は流れるプールを作りたかった。それだけなのに、ゴウンゴウンと唸る渦潮が大完成した。この中に入るのは危険すぎる。お洗濯されました、みたいなメルヘンだけじゃ終わらない。やはり死人が出る。棺が要る。
仕方なく魔力をカットしてからしばらく待った。プールの縁で先輩が、流れる水に手を突っ込み『すごーい』と、呑気に楽しんでいる。それを背後から見ていた俺は魔が差した。このまま突き飛ばしたらどうなる。やべえ、めちゃくちゃ面白くない?
無様に落ちて流されてゆく先輩を想像しながら、気配を殺して近づいた。前を向いたまま立ち上がる、何も知らない先輩。よしよし、身体をくの字に曲げて落ちるのもいいだろう。 それもまたオツである。
そして意を決し、先輩の腰の辺りに勢いよく張り手をかましてやった。はずだった。
「えっ…………!! ぶはあ!! ちょ、先輩!! なんでだよ!!」
「バレバレだよネオくん、ははっ、落ちてやんの! ハハハハハ!!」
「くっそー!! なんでわかんだよ!! 妻を落とす夫がいるかよ!!」
「わかるよ。僕を落とそうなんて百年早い、ハハハハ、すっげー流れてる!! お腹痛い!!」
先輩は片足を後ろに引き、振り返ったように見えたからヤベェと思って止まったのに、勢いよく回し蹴りをかまして俺をフッ飛ばしやがったのだ。背中付近への衝撃と共に、くの字になって飛んだのは俺。
死んだと思った。だって突然水面が目に飛び込んできて、気がついたら水中だぜ。てっきり三途の川にインしたかと。青い水面が日の光をギラギラ反射して、眩しいったらないんですけど。
先輩は俺を指差してまだゲラゲラ笑っている。くっそー、隠れ王族イコール、実質的な隠れ大魔術師イコール、王宮騎士団員様恐るべし。体幹のブレなさと、気配を読む能力が半端なさすぎる。
しかし、こんなのんびり暮らしをしていていいんだろうか。俺はたまに、どうにもならなさそうな討伐の応援として呼ばれることもあるのだが、基本的には出張サービスとして眠れない人を眠らす仕事を請け負っている。
どんな精神状態であろうが、どんな呪いにかけられていようが必ず眠れるのだと好評だ。だから仕事の数は当初想像していたよりも結構多い。
多いのだが、お客はどいつもこいつも手応えを感じる間もなく一瞬で眠りやがるから仕事がすぐに終わってしまう。俺様お得意の歌う魔術も、サビまで行けた試しがない。
なんなら最初の一節だけでグースカピーと眠ってしまう。のび太かよ。聴いてくれよ俺の歌を。そりゃ感謝は大いにされるけど。
「ねー先輩、俺さあ、ここでいっつものんべんだらりんしてていーのー? 先輩は忙しいのにさあ」
「いいんだよ。家に帰ったら必ずネオくんがいる。帰り甲斐があるってもんだよ」
「えーでもさー、張り合いないっていうか。もっとバリバリ仕事してた方がかっこよくない? 先輩もさあ、たまにはひとりで過ごしたくなんないの?」
「うちにいてよ。だって帰ってもし居なかったらつま……妻を愛してるからなるべく沢山会いたいし」
「今つまんないって言いかけたでしょ。バレてっから。発音が違ぇから」
外ではいい子の仮面を被っているこの男も、先ほど俺をプールへ蹴り飛ばしたように家では好きに遊んでいる。主に俺で。まるで子供である。
寝ている俺の髪を全部三つ編みにして、メイドさんたちとグルになって俺が気づくまで黙ってたり、フリフリが死ぬほどついた夜着を調達して俺が着るまで粘りまくり、着たら着たで喜ぶどころかしこたま大笑いしてから裾をめくって襲い、庭で取った虫を見せてきたと思ったらシレッとポケットに入れてきたり。あんた年上だろうが。一応は。
俺、虫捕りは学園入る前に卒業してきたんだよ。もう履修する気はないんだよ。あのカブトムシを拡大したみたいなやつ、マジで怖かった。ポケット魔術書くらいはあった。なんか飛ぶし。ギチギチ鳴くし。五本ある角が服に引っかかってなかなか取れてくれなかったし。
このあと適当に脱ぎ散らかし、ゆるく流れるプールを二人で楽しんだ。主に追いかけっこだが。水中で脚を引っ張るのはやめてほしい。ホラー映画の冒頭みたいでめっちゃ怖い。
──────
「ちょ、ちょっとっ、アナタ……、真っ昼間からっ」
「いいじゃない。疲れたら昼寝すれば」
──そういうことをしたいならもっと前もって実行してくれ。着替えた意味。
家に帰れば先輩は食う、寝る、遊ぶ、ヤるの四本立てで過ごしている。まあ好きにしたらいい。そこそこの規模な討伐遠征とやらが終わって間もないし。
「ところでさあ、いつ名前で呼んでくれるの。このままじゃ僕、子供に先輩って呼ばれることになっちゃうよ」
「そうなったらパパでいいじゃん。いいじゃんパパ。だってなんか、今更恥ずかし……あ、耳舐めないでっ、噛むのもダメっ」
「えー、でもさあ。ママはパパを先輩って呼ぶんだよ。自分もそうしようって思うじゃない。子供は親の真似をする。そのたびにパパだよーって訂正するのはだる……ダメだと思うなー」
「今だるいって言いかけたでしょ、この隠れ不良めっ……ストップストップ! 魔力が多い! はっ……! 頭クラクラしてきた……!」
そう、まだ早いと思うがこの子を育ててみないかという打診がすでに来ているのだ。魔力量はそこそこにあるだろうという見立てをされた赤ん坊。しかしまだお腹の中で泳いでいる。
とある中堅どころの家格のお家の奥様が、旦那様との相性がやたら良すぎて子供ができすぎちゃったし、まだ子供がいないなら是非、とのこと。
最近まで知らなかった。魔力の多い者がまだ兆候などが出る前段階の子供と、家族として世話をしながら触れたり一緒に過ごすことで、魔力の機構やら回路やらが変質してゆくことを。
子は親に似るが、それだけではない。夫婦などの元他人ですら長く共に暮らすうちに、兄妹のように顔や雰囲気が似てくるあの不思議な現象。これらは魔力のことにも適用されるそうなのだ。
つまり、養子に頓着のないこの国の民であり、せっかく産むなら英才教育を施すレールに子を乗せてみたい親御さんと、逆立ちしても子は作れないが、能力だけはとにかく阿呆ほどでかい俺らとの利害が一致したお話なのである。
「産まれてすぐ引き離すなんてわけにはいかないからね……、まだ時間はあるけどさあ、そんなのあっという間だよ。どんな子になるかなあ。制御は上手くなるといいなあ……」
「あ、あ、まってまって、いきなり、深すぎ……っ、……脱がすならちゃんと脱がしてよ、中途半端なっ……! チカン! 変態!」
「汚しちゃえ汚しちゃえ。誰にどうされてどんな風に汚しちゃったのか洗濯場でちゃんと言うんだよ。できるできる。口が達者だから」
「嫌だよそんなん、恥ずかしい……! あ、脱ぐから待ってよ、ダメだって、あっ、んっ…! だめ、やだあ、ブルーノ!!」
突然我に返ったように止まったぞと思ったら、激しい動きの代わりに無言になった先輩に追い詰められたし責め立てられた。腕を巻きつけられて身動きが取れず思いっきり達してしまい、抵抗虚しく洗いたてだったはずの服はシワが寄ってくしゃくしゃだし、べっとべとに濡れてしまい、可哀想なことになった。また洗濯場へ直行である。使用人さんの仕事を増やすな。
「はあっ……、もう、何なの急に……、溜まってたの? 昨日もしたじゃん」
「はー……、君ねえ、突然呼ぶのはずるいよー。ああ興奮した。じゃ、続きしよっか」
「え!? まだヤるの!? 俺もう休みた……あ、やだっ、そうやって半端に前触んないでよ、やるなら最後までやってよお」
「やだなー。しっかり擦っちゃったら出し切っちゃうじゃん。つまんない。勝手に空になるまで頑張れよ」
このあとも先輩はしつこく俺で遊び続け、自動でブラックアウトするまで構い倒された。ほんとは冷風魔道具の風を最大にして、部屋でゴロゴロしながらゆっくり寝たかったのに。せっかく拭いてサラサラになった身体が、また汗をかいてベトべトである。そんで暑いし。
たっぷりと注がれる魔力に比例し、ぼやけてゆく夢と現実との境界線を感じつつ、『誰にこうされてるか言ってみな。先輩って誰のことぉ? ほら言ってみなって、聞こえなーい。ほら、はっきり言えよ。……はは、毎度毎度いい声してんな』と、言葉責めに忙しい先輩の愉しそうな声を耳に通しながらも意識は途切れた。
ず──っと言ってたもんね。名前で呼んでくれって。でも俺はさあ、運動部歴が長いから。学年が上がって上の立場になったとしても、かつての先輩に会ったら即後輩に戻っちゃうのが魂に刻み込まれてるわけですよ。
まあこれからは意識して呼んであげようかな。なんか怖いし、ほんと恥ずかしいけど。早くパパー、と呼んでごまかしたい。
それにしてもさあ、あちーよこの部屋。サウナじゃん。魔道具全然効いてねえ。かき氷とか食いてーなー。料理人さんに言ったら『ハァ!?』とか文句言いながらも結局作ってくれるだろうけど。
俺が作るとキッチン凍っちゃうからな。三分で出来る業務用冷凍庫。一回やっちゃったから俺だけキッチン出禁。遺憾である。
先輩にお願……いや、やめとこ。また食ったらヤるパターンになる。そしてまた暑くなるに決まっているのだ。
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読んでくれてありがとう美しいお嬢さん!
現在はカクヨムのサポーター限定で、先行公開してる連載がございます。タイトルは「温容な前科持ちさんと犯罪者の冤罪くん」。さあ、もっと近くへ来ておくれ。君の可愛い声を聞くために。
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軽妙洒脱で勢いのある筆致が内容に合っていて、腹抱えながら読ませていただきました。
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ありがとう美しいお嬢さん!あなたの笑顔のために私は存在するからね!!ドォン(胸強打音)
「軽妙洒脱」ってかっこいいね。どっかで使お。
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