蜂蜜とストーカー~本の虫である僕の結婚相手は元迷惑ファンだった~

清田いい鳥

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14 心を開く、を通り越す

 氷付けになったカーティス先輩を、僕は以前と同じように引っ張ってみた。やはり重い。

「試すだけですって、大丈夫ですよ、怖くないです。先輩は痛いとか苦しいとか、ないですよ。多分」
「いやちょっと! 心の準備が!  心の準備が!」

「いつでも先輩から襲いかかってきてたじゃないですか。僕はいいって言ってるんですよ!」
「ねえちょっと、俺そんなイメージ?  もっと優しい感じじゃなかった??」

『おかしいな、やり方が悪かったかな』『いい感じだと思ってたのに青天の霹靂』とブツブツ言い続ける彼を、僕はズルズルと引きずり続けた。

 抵抗がなくなった、と思ったら逆にベッドに押し倒されていた。彼の表情が変わった。

「いいよ。シよう。でも、その前に約束して欲しいことがある。俺と婚約してくれる?」
「いいでしょう。受けて立ちましょう」

『返事がおかしくない…?』と言いながら彼は夜着を脱ぎ始めたので、僕も、と思い釦に手をかけると止められた。『俺にやらせて』と。

 彼の指が僕の胸を滑る。思った通り、前と同じように触られた箇所をムズムズした何かが、指の軌跡を追うように発生する。
 触れるところの全てから熱い蒸気のような形のないものが波紋のように広がり、体内に溜まってゆく。

「あ。遮音魔道具のスイッチ入れてない」
「いいですそんなの」

 こうすればいいと思い、彼の首に両手をかけて口づけた。それはたちまち激しくなり、僕の口蓋や舌が彼に犯される。

「はぁ……、もう、どこで覚えてきたの。悪い本でも読んじゃったかなこの子は」
「は……、本にっ、良いも悪いもありませっ……んん!」

 何だか今日はおかしい。前よりもっと気持ちがいい。どういうことだろう。息を切らしながら正直にそう話すと、やめてよ暴発しそうになるじゃん、と言いながら手は止めない彼は続けた。

「多分、決心がついて安心したんじゃないかな。俺に心を開いてくれたわけだよ君は。幸せだなあ。俺明日死ぬのかもしれない」

 ──何故、死ぬことに繋がる。おかしいだろう。

 それは置いといて、そうなのだろうか。心を開いているのだろうか。心を開いてない、本当の気持ちを教えて、とは散々言われてきた。他人に。

 でもそれは今現在の状態がそのままの僕であるはずなのに、何か隠していると疑われているようで少々気分が悪かった。

 確かにカーティス先輩には特に隠し事などはない。言ってはいけないことはあるが、あれは国家機密といえるもので──。

 口を抑えて声を我慢し、増えてゆくムズムズとした熱いものを堪えていると、何か後ろに違和感がある。何かいい香りがして、身体の中、お尻の辺りに何かあるような。

「少しでも痛かったら言ってね。多分今日は無理だと思うけど、できるだけやってみるから」
「これ、指ですか?  言われてみれば、痛いような…?  えっ!?  あっ!!  あっ!!」

 彼は僕の後孔に指を入れたまま何かを探り、おもむろに僕の下腹部を掌で軽く押した。

 それが突如、パニックを起こしかけるほどの性感を呼び、腰を痙攣させ、あっさりと達してしまったのだ。

「今日はいけるところまでいくから。せっかく誘ってくれたからね……」

 鋭い目つきをしたその奥、緑の濃くなった瞳には、早くもぐったりした僕の姿が映っていた。



「ん……!ん……!はっ、まだですか…っ」
「痛いのは嫌でしょう。痛くするのも嫌だから、もうちょっと」

 鍛えているのだろう。骨格のしっかりした腕には、普通の魔術師には無縁の筋肉がしっかりついているのが見える。それを見ていると、何だか安心感が胸に広がる。

 さっきからずっと後孔を弄られ続けているが、おそらく魔術薬の何かを使われている。少し魔力の気配を感じる。

 ゆっくり、優しく陰茎を撫でるように扱かれるとゾクゾクと熱いものが込み上げてきて、後ろの違和感はたちまちなくなった。
  
 そっちこそ、どこでこんなことを覚えてきたのだ。聞いてはいないが多分、経験があるのだろう。僕じゃない誰かとの。

 表情が変わっていたのか、彼が『痛い?』と小さな声で尋ねてきた。 

「先輩は…、他の人と…っ、こういうことをしてきたんだろうなと、思って、なんかイライラしました」



 それは突然だった。

 ビリッ!! と、一本のごく細い稲妻のような衝撃が後孔から頭の天辺まで走り抜け、呼吸が一瞬止まったのだ。

 ハッ、と忘れていた息を吸い、まさかこれが、あの?  と内心激しく動揺し、感動したのも一瞬だった。 彼が僕の脚を掴み上げ、後孔に彼のものをねじ込んだのだ。

 その途端、身体の中で膨らみくすぶり続けていたあの熱い蒸気が、今度は急速に暴れ回り始めた。

「もう…!!  ずっと我慢してたのに、とんでもないこと言うからさあ…!!」

 僕は、魔力の量自体は多くも少なくもない。

 しかし、制御はクラスで一番上手いと言われている。自分で言うのも何だが、気配に敏い。だから分かる。彼の魔力が少しずつ、速度を上げて混ざり込んでいる。

 その見えない気体のような、液体のような熱いものが僕の体内魔力の間を縫って進み、絡んで這うたびに、這ったところがゾクゾクと気持ちよくなっていく。

「はっ……、どんな感じ……?」
「あ……!!きもちいい…!きもちいい…! おか、おかしいっ、こわいっ、こわいっ……!」

「約束…、したからね…。俺と、婚約してもらうよ…、明日にでも……」

 魔力と魔力の境目がもう追えなくなってきた。どっちがどっちのものなのか、もうまるで分からない。

 突如身体が痙攣し、また達したのだと気づいた瞬間、僕の意識は飛んだらしい。

 もう次の日の早朝になっていた。


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