濡れた瞳を復讐の色に変えて ~紅き魔眼の魔剣使いは魔術学院にて全てを蹂躙する~

岡田リメイ

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ベネット・ホルダーソン

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 式典が終わった。
 蜘蛛の子を散らすように移動を開始する生徒達。
 各々が指定された学生寮の部屋へと向かっている。
 女子寮と男性寮は分かれており、何もなければソフィアとはここで解散だろう。
 そんな中ソフィアが口を開く。

「アイン。足首を怪我してたあの子どうなったのかな?」

 アインはソフィアの言葉で式典前の事を思い出す。
 緑髪の少女。
 酷い怪我ではないが気になる事は確かだ。

「確かに心配だ。少し様子を見に行ってみよう」

「あの子ってのは誰だ?」

 事情を知らないシルバが不思議そうに尋ねてきた。
 あの子とは言うが名前は聞いていない。
 アインとソフィアはお互いに顔を合わせる。
 先に口を開いたのはアインだった。

「あの時シルバは居なかったのか。実はケルベロスの一件で怪我をした生徒がいてね。式典前に医務室に運ばれたんだ」

「まじかよ!  その子は無事なのか?」

「あぁ。足首を少し痛めた程度だったから大丈夫だと思うよ」

「そうかぁ。てっきりケルベロスに噛まれちまったのかと思ったぜ」

「そうならなかったのはソフィアのお陰だね」

 頬をかき照れ臭そうにするソフィア。

「と、とにかく様子を見に行ってみよう。式典に出られなくて落ち込んでるかも知れないし。そう言う時は声を掛けに行った方がいいでしょ?」

「そうだね」

「そうかもな」

 意気投合したアイン達は医務室に移動した。



「失礼します」

 ノックを三回叩き、室内からの返事を確認し扉を開く。

「君たちか」

 出迎えたのはグレー髪のオールバックに纏めた男。
 グレイル・ラージハルトの姿があった。
 椅子から立ち上がったグレイルがアイン達に近づいて来る。

「そこの君は初めてだろう。私はグレイル・ラージハルト。教師をやっている」

「シルバ・ゴルディドールっす。よろしくっすグレイル先生」

「ふむ。先ほど君達には迷惑を掛けたな」

「いえいえ、それより足首を怪我した子は大丈夫ですか?  私達心配で様子を見に来たんです」

「そうだったのか。足首の怪我の方は大丈夫だ。魔法で完治している。しかしだな......」

「何かあったんですか?」

「ふむ......」

 難しい顔をするグレイル。
 顎に手を置いて何かを考えている。
 その顔は式典前よりも心なしか疲れているように感じた。

「どうやら精神的なダメージの方が大きかったようで、中々この場から離れようとしないのだ。本来なら式典にも途中参加出来たはずなのだが、本人が嫌がってな」

 グレイルが溜め息を吐く。

「初日早々ケルベロスに襲われたんです。怯えるのも無理はないでしょう。僕達で良かったらお話させて頂けませんか?」

「そうだな。君たちに頼んでみるとしよう」

 そう言って医務室の奥に移動するグレイル。
 アイン達もその後に続いた。
 そして一番隅のベッド。
 そのカーテンをゆっくりと捲る。

「ひ、ひぃ~~~ま、また魔物!?  ってグレイル先生じゃないですか」

 そこにはベッドに腰かける緑髪の少女。
 悲鳴を上げたかと思えばグレイルの顔を見て安心する。

「魔物が入ってくる事はない。お前が俺に医務室の門番をやらせているだろう」

「そ、そうでしたね!   そちらの方は......あっ」

 ソフィアの顔を見てハッとする少女。
 目線があったかと思うと何度も頭を下げお礼の言葉を並べ始めた。

「ありがとうございます。ベネットは貴方に助けられました。貴方が来てくれてすごく安心しました。貴方が居なければベネットは今頃ケルベロスのお腹の中。入学初日で魔物に食べられる。死んでも家族に笑われてしまう所でした。貴方はベネットの恩人です。貴方の剣技は素晴らしい。貴方の............」

 怒涛の勢いで話始める少女。
 そんな彼女に圧倒され、苦笑いのソフィア。
 心配していたがどうやら元気そうだ。

「う、うん。お礼はもう十分伝わったから大丈夫。それよりまだあなたの名前を聞いてない。私はソフィア・エスカトル。あなたは?」

「エ、エスカトル!?  通りで強い訳です。私はベネット・ホルダーソン。ベネットとお呼びください」

 名前を聞き驚くベネット。
 やはりエスカトルの名は有名なのだろう。

「僕も自己紹介をしておこう。アイン・フォーデン。アインと呼んでくれ。それと、こっちの少年が......」

「俺はシルバ・ゴルディドール。シルバで良いぜ」

「アインさんにシルバさん。よろしくお願いします。アインさんとシルバさんはソフィアさんのお友達ですか?」

「あぁ、今日会ったばかりだけど旧友のような感じさえするよ」

「そうですか......。是非ベネットとも仲良くして欲しいです」

「勿論。ベネットも僕達の友達だ」

 ソフィアに対する怒涛の語りかけには驚いたが、基本的には大人しい性格のように感じる。
 彼女とも仲良くなりたいものだ。

「皆、自己紹介が済んだね。今、式典も終わって皆学生寮に移動してる所なの。ずっとここに居るのも退屈だろうし、ベネットも一緒に移動しない?」

 ソフィアが優しく語り掛ける。
 ソフィアが来て嬉しそうにしていたのだ。
 きっとこれで彼女を医務室から連れ出す事が出来るはず。
 そう思っていたのだが......

「嫌です!」

 まさかの否定だった。
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