11 / 19
月明かりに照らされて
しおりを挟む「あ、あぁ、少し夜風に当たりたくて散歩をしていたんだ」
「ふ~ん。良かったら少し話さない?」
自分の隣をトントンと叩く少女。
アインは導かれる様に近づき腰を下ろした。
「で、アインは何を悩んでたの?」
「僕は別になにも......」
「嘘だね。自分の顔、鏡で見た方が良いよ」
そう言われ顔を急いで手で隠す。
どうやら酷い顔をしていたようだ。
「そんな顔してたら誰でも気がついちゃうじゃん」
彼女は空を見上げて呟いた。
空気の澄んだ夜空。
今日は月が一段と綺麗に見える。
「......何があったのか深く聞かないのかい?」
「うん、だって聞いて欲しくなさそうだもの。アインとはもっと仲良くなりたいから。親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ」
「そうだね......今はその方が助かるよ」
そこで会話が止まる。
草原に響き渡るは虫の声。
少女は何も言わず唯々月を見つめている。
「ソフィアこそ何をしていたんだい? ベネットが寂しがっているかもしれないよ?」
「ベネット......ベネット......ベネットは寝ちゃったから大丈夫」
「どうしたの? もしかしてベネットの事を忘れていたとか?」
アインは軽い冗談のつもりで言葉を吐いた。
しんみりした空気を変えたかったから。
しかし、ソフィアは少しうつむきながら、陰のある表情で呟いた。
「ううん、忘れない。──忘れないよ、アインもシルバもベネットの事も」
何度も。
それは僕たちの名前を自分に刻み込む。
そんな風に何度も。
「......」
アインは黙った。
それは友人が初めて見せた表情だったから。
彼女にだって何かある。
僕にも言えないことがあるように。
何があったのかはまだ聞けない。
きっと時間を共有するなかで、新たな発見があって、少しずつお互いを理解して、そんな時間を大切にしたいから。
永遠にも、刹那にも感じる時間の中でソフィアが口を開く。
「私、元々こんな髪の色じゃなかったんだ」
ソフィアがふと自分の髪に触れた。
肩まで伸びた白銀の長い髪。
彼女の手から流れる髪が月明かりに反射し白く輝く。
「6歳の頃。先祖返りって言うのかな? 突然髪が白くなったの。その日から私の魔力が嘘みたいに高くなって、がむしゃらに剣を振るう毎日に変わって、気づいたら『月光姫』って呼ばれる様になってた」
「納得した。あの異次元の強さは努力だけじゃなくて才能も必要だと思っていたからね」
「うん。でもそのせいで、今まで同年代の子と話したことなくてさ。だから、この学院でアイン達と友達に慣れて良かった~」
彼女は髪から手を放し、にししと笑った。
そんな彼女の手から溢れ落ちた白銀の髪は闇夜に溶け、キラキラと光った。
「僕もソフィア達と出会えて嬉しかった。これから楽しい学院生活を過ごしていく。そう考えるだけでもわくわくするよ」
初めての経験、体験。
重ねていく思い出。
その側に、ソフィア、シルバ、ベネットがいたらどんなに楽しいことか。
ソフィア達だけじゃない。色々な人と関わって、色々な時間を過ごしていく。
きっと充実した時間になる。
たとえ、それが目的を達成するまでであっても。
「そうだよね。だから忘れたくないんだ~。この瞬間も、これからの大事な時間も」
「大丈夫。忘れないよ。少なくとも僕は忘れない」
「ふふふ、ありがとうアイン。私は今を全力で楽しむって決めたからね! アイン達にも全力で付き合ってもらうよ? それにさ......」
「それに?」
「たとえどんなに辛い過去や出来事があったとしても、今を楽しむのが一番大事でしょ? だから、明日からもよろしくねアイン」
その時、彼女の言葉がアインの何かに触れた。
それはアイン自身も分からない何か。
ソフィアの目が、顔が分からなくなるほどに動揺した。
きっとあの日に置いてきた何かだろうとは予想がつく。
「......もちろん! いい学院生活にしよう」
アインはそう言った。
なるべく動揺を表に出さずに。
ソフィアは笑った。
屈託のない笑顔で。
だからアインも笑って、手を振った。
ソフィアが見えなくなるまで。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる