12 / 19
ベネットは引きこもりたい
しおりを挟む翌日の朝。
支度を整えたシルバとアインは学生寮をでる。
今日は授業初日。
不安もあるが、どのような授業なのか期待もあった。
ソフィアやベネットと一緒に行動する約束をしていたアインとシルバは待ち合わせ場所に来ていた。
しかし、一向に姿を見せない彼女たち。
そんな中、移動する生徒の数も少なくなってきた。
「全然来ねぇな。もしかして寝坊してんのか?」
「いやどうだろう......支度に時間が掛かっているのかもしれない」
「なるほどねぇ。あんまりチンタラしてると俺たちまで遅刻しちまうぜ?」
「それはそうだけど......」
授業開始まで残り僅か。
ここで長居をしている場合ではない。
しかし、友人との約束を破るのは些か......
そう言いながら廊下を見つめていると、先の方から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「嫌ですーー! ベネットはずっと寮に引きこもってます!」
「ベネットは一人になって平気なの? 置いていっても良いのかな?」
「それも嫌ですーー!」
「そうだよね。だからっ!」
「ひぃ~~~!」
離れていても聞こえてくるソフィア達の声。
そんな彼女らを振り返りながら通過していく生徒達。
良くみると、ベネットが殻に籠った亀の様に蹲《うずくま》っている。
どうやらソフィアは彼女を連れ出すのに苦労しているようだ。
「なぁアイン。あれどう思う?」
「ベネットを──引っ張ってるね」
「ソフィアは寮からずっと引っ張ってきたのか?」
「......どうだろう」
「だったらすげぇ大変だっただろうな」
「────うん。助けに行った方が良さそうだ」
急いで駆け寄るアイン達。
それに気がついたソフィアは救いを求める様な眼差しをアイン達に向ける。
「──アイン! シルバ! ベネットが言うことを聞いてくれなくて......」
「あれだけ大声で騒いでりゃ誰だって分かるぜ」
「それは......何と言うか、大変だったね」
「寮から引っ張って来たんだけど、ずっとこの調子で......」
頑なにその場を動こうとしないベネット。
その姿勢には並々ならぬ意思を感じる。
「ベネット。ソフィアも困ってるし自分で歩いたらどうだい?」
「い、無理です! ベネットはこの体勢から動けません! だから、今日の魔物学は絶対に出ません!」
駄々をこねる子供の様な事を言うベネット。
緑髪から覗く瞳は完全なる否定の色を表している。
仕方がない。
少々強引だが、あの手を使おう。
「そうか残念だ......時にベネット。魔物が人を襲う優先順位があるのは知っているかい?」
「優先順位......?」
「ベネットはまだ魔物学について知識が浅いから知らなくてもしょうがないね。実は魔物にも知性があって襲う人を選ぶんだ。例を出すと小さい子供や素早く動けない高齢の方を優先的に襲う。でも同じ背丈の人達がいたら何を基準にして狙うと思う?」
「弱そうな人ですか......?」
「そうだね。具体的に言うと、戦意を喪失した者から狙うんだ。武器を投げたした者。背中を向けた者。そして、蹲っている者」
顔を上げるベネット。
彼女の額に一筋の汗が流れる。
「今この場に魔物が来たら誰を優先的に狙うかな? 賢いベネットなら分かるはずだよね?」
「ひ、ひぃ~~~!」
「何だ立てるじゃないか」
アインの言葉を聞き、急いで立ち上がるベネット。
姿勢をピンと伸ばした彼女はソフィアの背中に隠れてしまった。
「アイン......お前結構えげつねぇ事言うんだな」
「そうかい? 駄々をこねる子供に有効な謳い文句だけど」
涼しい顔でそう言いきるアイン。
シルバは肩を上げ降参のポーズを取る。
「これでベネットも自分で歩けるよね? 魔物に対する知識をつける為にも魔物学は受けておいた方が良いはずだよ?」
「そこまで言うなら......」
「よし! じゃあ遅れないように急いで行こ!」
「あわわ......!」
ベネットの手を引っ張って走り出すソフィア。
ベネットを置いていく選択肢もあっただろうが、どうやら面倒見の良い性格らしい。
初日から遅刻をしてしまうと思ったが、それは回避出来そうだ。
友人達の後を追い、アインも走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる