濡れた瞳を復讐の色に変えて ~紅き魔眼の魔剣使いは魔術学院にて全てを蹂躙する~

岡田リメイ

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ベネットは引きこもりたい

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 翌日の朝。
 支度を整えたシルバとアインは学生寮をでる。

 今日は授業初日。
 不安もあるが、どのような授業なのか期待もあった。

 ソフィアやベネットと一緒に行動する約束をしていたアインとシルバは待ち合わせ場所に来ていた。
 しかし、一向に姿を見せない彼女たち。
 そんな中、移動する生徒の数も少なくなってきた。

「全然来ねぇな。もしかして寝坊してんのか?」

「いやどうだろう......支度に時間が掛かっているのかもしれない」

「なるほどねぇ。あんまりチンタラしてると俺たちまで遅刻しちまうぜ?」

「それはそうだけど......」

 授業開始まで残り僅か。
 ここで長居をしている場合ではない。
 しかし、友人との約束を破るのは些か......

 そう言いながら廊下を見つめていると、先の方から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

「嫌ですーー!  ベネットはずっと寮に引きこもってます!」

「ベネットは一人になって平気なの?  置いていっても良いのかな?」

「それも嫌ですーー!」

「そうだよね。だからっ!」

「ひぃ~~~!」

 離れていても聞こえてくるソフィア達の声。
 そんな彼女らを振り返りながら通過していく生徒達。
 良くみると、ベネットが殻に籠った亀の様に蹲《うずくま》っている。
 どうやらソフィアは彼女を連れ出すのに苦労しているようだ。

「なぁアイン。あれどう思う?」

「ベネットを──引っ張ってるね」

「ソフィアは寮からずっと引っ張ってきたのか?」

「......どうだろう」

「だったらすげぇ大変だっただろうな」

「────うん。助けに行った方が良さそうだ」

 急いで駆け寄るアイン達。
 それに気がついたソフィアは救いを求める様な眼差しをアイン達に向ける。

「──アイン!   シルバ!   ベネットが言うことを聞いてくれなくて......」

「あれだけ大声で騒いでりゃ誰だって分かるぜ」

「それは......何と言うか、大変だったね」

「寮から引っ張って来たんだけど、ずっとこの調子で......」

 頑なにその場を動こうとしないベネット。
 その姿勢には並々ならぬ意思を感じる。

「ベネット。ソフィアも困ってるし自分で歩いたらどうだい?」

「い、無理です!   ベネットはこの体勢から動けません!  だから、今日の魔物学は絶対に出ません!」

 駄々をこねる子供の様な事を言うベネット。
 緑髪から覗く瞳は完全なる否定の色を表している。

 仕方がない。
 少々強引だが、あの手を使おう。

「そうか残念だ......時にベネット。魔物が人を襲う優先順位があるのは知っているかい?」

「優先順位......?」

「ベネットはまだ魔物学について知識が浅いから知らなくてもしょうがないね。実は魔物にも知性があって襲う人を選ぶんだ。例を出すと小さい子供や素早く動けない高齢の方を優先的に襲う。でも同じ背丈の人達がいたら何を基準にして狙うと思う?」

「弱そうな人ですか......?」

「そうだね。具体的に言うと、戦意を喪失した者から狙うんだ。武器を投げたした者。背中を向けた者。そして、

 顔を上げるベネット。
 彼女の額に一筋の汗が流れる。

「今この場に魔物が来たら誰を優先的に狙うかな?   賢いベネットなら分かるはずだよね?」

「ひ、ひぃ~~~!」

「何だ立てるじゃないか」

 アインの言葉を聞き、急いで立ち上がるベネット。
 姿勢をピンと伸ばした彼女はソフィアの背中に隠れてしまった。

「アイン......お前結構えげつねぇ事言うんだな」

「そうかい?   駄々をこねる子供に有効な謳い文句だけど」

 涼しい顔でそう言いきるアイン。
 シルバは肩を上げ降参のポーズを取る。

「これでベネットも自分で歩けるよね?   魔物に対する知識をつける為にも魔物学は受けておいた方が良いはずだよ?」

「そこまで言うなら......」

「よし!   じゃあ遅れないように急いで行こ!」

「あわわ......!」

 ベネットの手を引っ張って走り出すソフィア。
 ベネットを置いていく選択肢もあっただろうが、どうやら面倒見の良い性格らしい。

 初日から遅刻をしてしまうと思ったが、それは回避出来そうだ。
 友人達の後を追い、アインも走り出した。

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