The war of searching

黒縁めがね

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コーラス遺跡都市防略

第24話コーラル防略、③/どっすん/もの寂しげな人形達/よく似た感触

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サムライの笹傘へ刺さった矢はそのまま背後へ笹傘を貫通しながら通り抜けて行く。
右目がまるでなくなったような痛みが頭の中を駆け巡る。視界の右半分は深淵に飲み込まれ、目であろう所から何か生暖かいモノが流れ出てきていた。笹傘を外し左手で右目を押さえながら右手の刀をアルドラ達に構える。
手についたのは血、真っ赤な鮮血。だが量は少なく、傷は浅いようだった。時が経てばきっとまた開くだろう。
「…グ…右目ニ、掠りましたカ…」
アルドラはサムライの様子を見ると、ゴミを見るような目で言う。
「中々落ちないですね、今回のチンカスは。」
「口より手を動かしたらどうですカッ!」
そう強がりを言い放ちながら、ラグに斬りかかる。ラグはサムライの刀を柄を使い左に流して切断を回避するが、ハルバードの柄に僅かに切れ込みが入った。サムライは大きく後ろに下がる。アルドラはすかさず一矢放つがサムライはさらに右に大きく飛びそれを躱すサムライへさらに近づきでレグがサムライに冗談から兜割を狙い上段から振り下ろすがサムライはそれを受け、鍔迫り合いへ洒落込む。
「流石ニ、読まれておりましたカ。」
どうやらハルバードの切断を狙っていたようだ。力量に差があるのか、サムライは鍔迫り合いのまま2歩、3歩と後ろへ下がる。
「アンタの獲物、ドンドン刃こぼれしてるけどォ!?」
そう言いレグは刀を右に払いのけながら後ろへ下がり、そこへアルドラが隙を消すように再び矢を放つ。
「ナっ!」
矢はまっすぐサムライの心臓へ向かう。サムライは体を右に逸らすことで躱そうとするが、躱しきれず左二の腕の肌を服ごと抉っていく。
ラグは隙を与える事なく姿勢を下げながら突撃するようにハルバードを突き出す。
「ISSを舐めるなッ!」
「がハっ!」
そのままハルバードはサムライの左横腹に突き刺さり、そのまま引き抜くことなくサムライを押し出すように走った。サムライは血を吐きながら背後へ押されて行く。
「離せえええええええええエっ!…ナッ!」
「死ねえええええ!」
刀を逆さに持ち突き立てようとするが、アルドラがそこへ矢を放ち突き立てようとしているサムライの刀に命中させる。刀は右へ弾かれサムライは手を離す。
レグは呪詛を吐き捨てながら、その足を早める。サムライは両手を握りしめながらレグを叩くがびくともしない。凄まじいスピードでそのまま背後の壁へ叩きつけられた。


~~~


北西防壁、到達したドラゴ兵団は遺跡省での出来事に気づく事なくただ壁の向こうの脅威、王国兵に備えていた。兵団は本隊が荒野を見張る傾塔を中心に、左右に薄く広がり同じく荒野を監視していた。王国兵の気配も何も無く、ただ時がすぎるのを飽きたのか兵団達は"少しでも緊張感をほぐし、咄嗟に動けるようになるのでは"と建前を作り雑談をしていた。
団長も流石に飽きたのか、初めは否定的だったが徐々にその雑談に入るようになってしまった。
「そういえば、遺産って格分けされてますけど、どの格から合法にで売れるんですかねェ?」
鞘に収められたクレイモアを背負い腕を組みながら団長はレワイドの質問に応える。
「下から二番目のエメラルド級までだな、あの聖書の遺産はそれより下のサファイヤ級。
よく発掘されるに中に希少な金属や歴史的な何かがある訳では無いし何より中の聖書の解読ができている訳でもない。」
それを聞くとレイワドは哀れむように言う。
「まぁ、聖書っていうのも憶測ですしねぇ。
先祖が林檎と同じ値段で売られてるって知ったらなぁんて顔、するんでしょう。」
「泣くんじゃ___」
団長はそこまで言うと、視線を荒野に向け、背負うクレイモアを下ろし、その鞘を抜く。
本隊員一同はいきなりの団長の行動に驚くが団長の視線の先にその行いの正体が立ち、こちらを見ていた。
「人形…?」
デイビッドは呟く。その呟きの通り、荒野の中に立つ1体の木製の何も纏わぬ人形。目がないがはっきりとわかる。

______こちらを、もの寂しそうに見ていると。

「総員、武器を抜けェ!」
顔に冷や汗を垂らしながらそう団長は叫んだ。
一同はその叫びの通り武器を抜く。荒野の中にただ立つ人形。
「何なの、アレ…」
パルチザンを構え、人形を見つめながら言うハイミルナン。
「ギフトって奴なんじゃないか…」
ハイミルナンに同じく、武器を構えそれを見つめながら言うヨースト。
すると、荒野に自生するわずかな植物達が揺れ動き始める。一部からは土埃が上がり、何かが這い出てくるようにも見える。
だがその見え方は真実のようで地面から10体、100体、1000体___1万を超える人形達が姿を続々と表した。その中で1つ、銀に輝く鎧を身に纏い、青のラインが入るマント、ハットを被るかなり大柄の人間の姿が見える。
アメリナは言う。
「まさか、奴1人のギフトの能力だと言うのか…」
デイビッドはそのもの寂しそうにこちらを見る人形達を見て言った。
「これじゃあまるで___







___まるで、これからあの人形達に全部奪われるみたいじゃないですか。」


~~~


崩壊した壁、その壁から差し込む光。どうやらサムライはあのまま壁を突き破り、他の部屋らしきところへ埃出されたらしい。崩れる壁が体に当たった痛み、腹に突き刺さる何かが抜けた痛み、地面に叩きつけられた衝撃と痛み。
それらが仰向けに倒れるサムライを襲う。
「ク、クソ…」
「これでお終いだな。」
そう言いこちらに近づくラグを見ると、仰向けのまま上体を起こし後ろに下がるサムライ。
「ラグ、確実に殺れよ。」
「わかってるさ、ラグ。」
ハルバードを上段にして構え、こちらに近づき、サムライの腹を踏む。踏まれた衝撃と鈍痛がさらに体を襲った。サムライは何かしら獲物が無いか手をあちこちに伸ばす。
「さぁ、死ね。」
「!」
そう言い、振り下ろしその斧刃でサムライの頭を砕き割ろうとした時。刀によく似た感触の棒を確かにサムライは掴んだ。
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