The war of searching

黒縁めがね

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コーラス遺跡都市防略

第26話コーラル防略、⑤/夕焼けの始まり/突き刺す号哭

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『___起動します』
サムライは手に持つ紅の刀を見る。
炎を吹き出したかと思えば、今度は訳の分からないことを喋るこの刀。
サムライは固唾を飲んだ。本来無いはずの心の中の高揚感。それに比例するように、突き刺された腹の痛みも矢が掠めた右目の痛みもどんどんと引いて行った。まるでこの刀が纏う炎に癒されるが如く。

「く、くそ、死ねぇええええ!」
「おいまて!」
新しく来た警備兵の1人がサムライの左側頭部から頭を前後にかち割ろうとハルバードを冗談に構え、その斧刃を振り下ろさんと迫った。
___血炎が、舞う。
サムライがその警備兵の腹に向かって右から左へ斬った。斬られた警備兵の腹からは血と炎が混じり舞った。
「あ"、あ"づ"、あ"づ"い"い"い"い"ぃ"!」
そう叫びながらその警備兵は血に伏した。
そして、腹から炎が全身へ回って行く。
その間も警備兵は叫び続けたが、それも3秒で止む。サムライは振ったその刃を反対に返し、下からもう1人の警備兵を斬った。警備兵は咄嗟にハルバードの柄でそれを防御しようとする。
「ぐ"が"ば"ッ!」
が、そのハルバードごと警備兵は左腰から右肩にかけてバッサリと斬られ、またしても全身が炎に包まれた。
サムライは刀の刃を見る。斬った時についた血が人の油が、徐々にその刀身に纏う刃の炎がそれを蒸発させる。
その光景にサムライは恍惚とした目を向けた。
「くそ、こんなの夢だ、夢なら早く醒めろよ!」
ヤケクソにそう叫んだレグ。
残りは3人、サムライはその3人に目を向け刀を構えた。警備兵についた炎が地面へ燃え移り
目の高さまで上がる。サムライはその炎に背後から照らされ、逆光のように顔が暗く、昏く映る。刀の炎に照らされ燦くその黒の左瞳と黒の前髪。レグ、ラグ、そしてアルドラにはその姿が黒い、黒い、悪魔に見えた。

10人ほどの足音がする。
崩壊した壁と背後の遺産武器庫のドアからは警備兵達がぞろぞろと沢山入って来た。
サムライは、あまりにも強烈な高揚感からかその状況をまるで好機と捉えていた。
「さァ、続きをしましょうカッ!」



___もっとこの刀の試し斬りができる、と



~~~



「砕けろ人でなし!」
アメリナはそう叫びながらクレイモアを上段に構え、自身へ飛びかかる人形へ兜割を見舞う。人形はそれを左回転しながら左へ小さく飛び躱す。そのまま右手をアメリナの顔に叩き込まんとビンタの要領で振るったが、アメリナ団長はその右手を自身の左手でを掴み、背後へ腕を力いっぱいに振り抜き手を離す。人形はそれに従って投げとばされた縫いぐるみのように中を舞い他の二体の人形を巻き込みながら砕け散る。
「アメリナ団長!ギフトは使わないんですかッ!」
人形の頭部をロングソードの横振りで破壊しながらアメリナにデイビッドは叫んだ。
アメリナは左から首を折らんと自身へ走り迫る人形を左手でクレイモアの鍔元…刃の無いリカッソを掴み槍のように突き刺した。
突き刺されえも尚アメリナの首をへし折らんと動く人形に右フックで頭部を殴り飛ばした。
飛ばされた頭部は弧を小さく描きながら壁の下へ落ちていく。
「だめだ、味方も焼き殺してしまう!」
辺りには首をへし折られた団員や、体の部位を欠損した人形達が散らばっていた。残りのドラゴ兵団の数は60人ほど。対してドーベルの人形はまだまだ数があった。数の不利さは致命的で、みるみるうちにドラゴ兵団は壊滅へ追い込まれて行くだろう。
両手でクレイモアのリカッソを持つとさらに右から迫り来る人形の頭をバットを振るように弾き飛ばし、力無く倒れたその人形の胴体を踏み壊す。傍ら他の団員メンバーを見る。
「え"え"あ"ぁ"ぁ"!」
戦闘狂じみた雄叫びをあげながら人形の腹にパルチザンを突き刺しそのまま壁の外へ投げるハイミルナン。
「おらよっ!」
「ふんっ」
ラーゴと背を合わせながら迫り来る人形を次々と破壊するヨースト。
「ッ!」
頭の無い人形の胴体を掴み、盾のように使いながら他の人形を破壊して行くデイビッド。
その背後を守るように迫り来る人形を斬り伏せるレワイド。
そして負けじと戦う残りの兵団員達___
皆一様に奮闘してはいるが、このままでは全滅が残当。人形達もいずれこのままコーラルの街を王国と共に荒らして回るのも時間の問題だろう。
「ならば狙うのはただ一点…」
"ドーベルの首を刈るのみ"、そう続け様に心の中でアメリナは呟き、壁の下のドーベルを睨みつけた。ドーベルもそれに気づいたようで、アメリナを見つめる。アメリナは目線を外し、防壁の外側の表面を見る。
新たな人形達が続々と防壁の上へ登らんと壁をよじ登ってきた。アメリナは塀を超えて、その人形の1体に飛び移る。人形はアメリナの重量と衝撃に耐えきれない故、壁面から手を離してしまう。
アメリナはすかさず防壁の傷ついた隙間を左手で掴み、右手に持つクレイモアを壁に突き刺し、両足をなんとか人形から壁面に移した。
突き刺したクレイモアを両手で持ち下を見る。
壁をよじ登る人形達。股から、落ちた人形のパーツが地面で蟻のように小さく目に映る。
自分のすぐ下の壁面に飛び移るために素早くクレイモアを引き抜き、少し飾った所でまた壁に突き刺し、飛び移った。
すると左側にいる壁を登る人形がアメリナに飛びかかってきた。
「クソッ!」
アメリナはそれを左足で蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた人形は糸の切れた人形のように地面へ落ちて行った。
アメリナは再度クレイモアを抜き、また下の壁面へ飛び移ろうとするが、今度は右下から人形がアメリナに飛びかかった。
「なっ!」
アメリナの右足へ飛びついた人形はアメリナの首をへし折らんと足から胴体をよじ登るように掴む。空中で掴まれたアメリナはクレイモアを壁へ刺す事もできず、人形の頭を右手に持つクレイモアの柄頭や左手でただひたすらに叩く。
「離せろくでなしッ!」
会心の左逆アッパーにより頭が凹み、人形は力無くアメリナから手を離した。アメリナは再度壁にクレイモアを突き立てようとするが、微妙に壁から離れているせいか剣先が掠り火花を激しく上げるだけで突き刺さらない。
地面からは訳60m。このままでは間違いなく地面に叩きつけられ、即死がいいところだろう。
アメリナは必死になって右腕を伸ばしクレイモアを壁に押し付けた。
「刺"さ"れ"え"え"え"え"え"っ!」
だが、刺さることはなく地面はすぐそこまで迫ってきた。



___瞬間、炎が舞う。
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