The war of searching

黒縁めがね

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コーラス遺跡都市防略

第40話コーラル防略、20/継承/梃子/門問題/アッシュソード

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コーラル遺跡都市南部防壁下大通り。
デイビッドの肩ほどの柄の上端側に柄の三分の一ほどの三日月状の曲線の刃が取り付けられた戦斧___バルディッシュを包帯で巻かれた左手に持つデイビッドは防壁の下に止まるドラゴ兵団の下へ走る。
そして、手に持つバルディッシュを眺めた。
デイビッドの頭の中には、そのバルディッシュをデイビッドに譲渡したアルチンゲールの言葉が再び浮かび上がる。
『少年とアメリナの…奪われないために死んだ、僕の戦友でもある親友の物なんだ。与えてばかりで奪えない僕には、彼女の意思は継げないからね。』
デイビッドはバルディッシュを握る包帯の下で爛れる左手の力を強め、兵団の元へ駆く足を早めた。



~~~



「消えてくれぇ!」
マイクの馬上から脳天を狙ったツーハンドソードの一撃。兜をも貫通しかねないその一撃をロビンはグレイヴの腹に這わせるように受け流した。
「なっ!」
が、衝撃が凄まじいのかグレイヴの刃に入る亀裂は、分かれた枝の本数を増やしその規模を拡大して行く。あと2撃、3撃も受けるとその刃は散りじりに砕けてしまうだろう。
何か策はないかと思ったその時、ロビンの頭の中には幼少期、棚から取り出した適当な本の中に記されていた"梃子"がよぎる。
___早く、決着をつけなければ。
マイクは再びツーハンドソードを空へ突き立てるように掲げ振り下ろす体制へ入った。
ロビンはそれを見ると、右半身を引きグレイヴの刃を後ろに向けるように、脇を締めて構える。本来であれば剣で行う、防御を無視した構え。
「…!」
マイクはそれを見るとツーハンドソードを即座に振り下ろす。ロビンの取ったその異形の構えに、何かを感じ取ったのだろう。だがそれが悪手だった。
ロビンは、そのツーハンドソードをグレイヴの刃では無く柄の下端部で上段に受ける。途端ロビンはグレイヴを掴むための握力以外の、全ての力を体から抜く。ツーハンドソードのその重い一撃を与えられたグレイヴの下端部を力点。そのグレイヴを握る手を支点。そしてその先、グレイヴの剣刃を作用点としてグレイヴは、梃子のように動き、また加速する。
それに合わせ上半身を左に引く。梃子の力に合わせ体全体の加速のかかった必殺の一撃は、そのまま袈裟斬りのようにマイクの騎乗する馬の右前足の肩へ鎧ごとめり込みそのまま腹へ斬り進んみ、亀裂の入り切ったグレイヴの剣刃は粉々に砕け散った。
自身へ向けられた攻撃では無い物なのか、なぜかギフトの悪寒が発生していなかったためにマイクはそれを避ける事も叶わなかった。
それと同時に馬は右前へ崩れるように臓物と鮮血を右肩と腹から吹き出しながらマイクごと倒れる。
地にマイクは後頭部から打ち付けられた。
「な…んて…不幸___」
ロビンは振り下ろした一撃の勢いのまま、左足を軸に1回転しマイクの頭へグレイヴの石突を叩きつけた。



~~~


防壁南部上昇階段下。
「では、壁の上へ…ん?」
刃こぼれしたクレイモアを地面に突き刺し、仁王立ちするアメリナ団長は、そう言いかけると仲間達の背後、南部防壁下大通りを見る。一つの人影がこちらに走ってきていた。団員と弓兵隊員達はしんと静まりかえり、その人影をただ見つめる。
数秒の沈黙の後、アメリナ団長はそれが誰か分かったようで驚いた顔で小さく呟いた。
「…デ、デイビッド!?」
そう、デイビッドだったのだ。
近づいて行く内に顔がはっきりと、くっきりと見えてくる。流れる風と、走る振動により靡くストロベリーブロンドの髪に緑の瞳。変えられたのか、綺麗な状態で巻かれている左手の包帯、煤まみれの鎧が、見えてくる。
なんとも言えない引き攣った顔のハイミルナンが言う。
「あいつ、あんな大火傷を負ったのに動いて大丈夫なんですか!?」
「…大丈夫な訳が無い。だが、アルチンゲールさんが動いていい、そう判断したまでの事…」
同じく引き攣った顔で、そう語るラーゴ。
ほんの2時間前まで、まるで死に体で倒れていた仲間がいきなり立ち上がり自身の元へ駆け寄ってしまっては、顔を引き攣るのも無理は無いのかもしれない。

デイビッドが本隊メンバーの元へ駆け寄った。
皆、デイビッドを見ている。顔が引き攣っていていた。これは嫌っているのではなく所謂"ドン引き"と言う物だ。
汗だくのデイビッドは、膝に手をつきながら団長に言う。
「すみません、遅れました!」
そう開口一番でそう言うデイビッドにアメリナはどこか「安心した」と言うような顔でただ一言、「そうか。」とだけ言った。
そして、アメリナ団長は腑抜けた顔の兵団員、弓兵隊員達の方を向き口を開く。
「…では、壁の上へ弓兵隊150は移動。指揮はラーゴ、補佐としてレワイド。残り50はドラゴ兵団13と共に、門の外へ移動。
遊撃を行い、ミレス帝国大隊の援護だ。」
アメリナ団長の飛ばした指示に従い兵団とアルドラ弓兵隊は防壁入場扉側と防壁昇降階段側の二手に分かれた。
「行動開始。」
アメリナ団長がそう言うと、ラーゴとレワイドは弓兵隊を連れ防壁の上へ繋がる昇降階段を登って行く。団長はそれを見送ると振り返った。
アメリナ団長は門の前に立つ。すると背後から団長へ声がかかった。
「団長、門はどうやって開けるんですか?」



~~~



「大将、討ち取ったり!」
ロビンはそう勝鬨を上げながらグレイヴを天に掲げた。残り69騎となったロビン騎兵隊はそれを聞くと、同じく勝鬨を上げる。
その光景を見た王国兵達は慄き、一部はそのままロビンや帝国兵を避けるように散りじりとなり、敗走する王国兵がいた。それに釣られて続け様に敗走する王国兵達に、「退くな」と怒号をかけるが、マイク中隊の王国兵達はそれを気にも止めず逃げ仰せて行く。マイクが倒されたこともあってか士気がかなり低いようだった。

敗走する兵士たち。走る大地は南にかけて緩やかな丘となっていて、その丘の頂上には、1人の男が立っている。その男は蛇の紋章が刻み込まれた銀の鎧、青のラインが入る白いマント、灰色の髪をしたら左手にロッホバー・アックスを持つ執行騎士序列5位、灰刀のジンだった。

敗走する兵士達を見ると、ジンは冷たい目をそれらに向けながら呟いた。
「執行騎士灰刀のジン、執行を開始する。」
そう言い、ロッホバーアックスの石突をドンと地面に叩きつけたその時___





___冷たい灰の嵐が吹き荒れる








 
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