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コーラス遺跡都市防略
第43話コーラル防略、23/使命/好機/注目
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防壁南門前平原。
晴れて行く灰の嵐、鼻腔から消え去り始めた煤と血の匂い、顕になって行く灰を被った敵兵や戦友達の亡骸とその上に立つ同じく灰を被っている傷だらけの数少ない仲間や敵兵士たちの姿。
右頬に付けられた小さな横一文字の切り傷から滴り落ちようと溢れでた血を拭い、ジャックは立ち上がりながら辺りを見回した。
ジャックを庇い降り注ぐロングソードを一身に浴び、誰かもわからないほどになって死んだ騎兵隊の戦友達と、愛馬達。
「こげんけ死み方…あんまりじゃろ…」
その惨状を目にして、ジャックはサーベルを握る右手に力を込めた。戦場に立つ以上、死は誰にでも訪れる。ただ、彼らに訪れるその死は少し惨すぎた。
そして、ジャックは丘の上方に目を向ける。
___鎖骨の上から脇まで貫通した灰のロングソード。ダラダラとそれを伝って地面へ流れる血は膝の下で水たまりを作って、徐々に大きくなっている。
その跪く流血者は、ロビンだった。
「ロ、ロビン!」
ジャックはロビンに駆け寄り、ぐったりと俯き反応のないロビンの鎖骨の上に突き刺さる灰のロングソードを引き抜こうと、それに触れるが 触れた途端にそれはただの灰となって形を崩し、風に乗り散って行った。
ジャックは屈んで、ロビンの両肩を掴み揺さぶりながらに語りかける。
「ロビン、ロビン!返事をせんか!」
俯いたままロビンはうんともすんとも言わない。ジャックは歯を食いしばりながら右拳を地面に叩きつけた。鈍く拳に響く痛みに、ジャックは歯を食いしばる。
ジャックは、その痛みの余韻に浸りながらゆっくりと立ち上がった。
幼い頃から共に過ごしてきた侵入とも呼べる存在を無くした。ただその事実から来る感情がゆっくりと、じわりと心を満たして行く。
怒りでも、憎しみでも、悲しみでもなんでも無いような、それら全てが合わさったような感情。
「ここで…殺さんな。」
ジャックは、そう呟いた。
~~~
メネの元へ恐れ慄き逃げ仰せた王国兵達は戦慄した。逃げた先、友兵達のすぐ向こうに文字通りの地獄が広がっている。
灰を被り、身体中に穴が空き更には身体の一部を欠損し絶命した友軍達と帝国兵どもの山があったからだ。
メネはその逃げ仰せ、戦慄する王国兵の一人に問う。
「…バーテイル大尉補佐は、どうなったんだい?」
王国兵は息を呑み、ただ一言
「首を…刎ねられ…ました…」
そう言った。
メネはそれを聞く兜を脱ぎ右手で眉間を摘む。
状況は混乱を極めていた。
唐突に現れた3人目の執行騎士、灰刀のジン。
増援に来る気配も、生きているのかも怪しい執行騎士の移し身のドーベル。
ジンによる無差別攻撃と、それに巻き込まれた部下。
多大な損害がでたのか、首を刎ねられ死亡するバーテイルとそれに矛盾する大量の敗走兵。
「もう何がなんだかわからないな。」
そう呟いた。
ともあれ、ひとまずこの状況からの脱却が必須である。トルミアの執行騎士の無差別攻撃がある以上トルミアが友軍というような扱いは今はできない。そして、上からはトルミア下からは帝国というかなりまずい状況となってしまった。
(帝国とやり合っても執行騎士にあとから纏めて片付けられるだろうし、あの執行騎士に現状の戦力じゃ勝てるわけが無いし…)
メネはしばらく考えた後、口を開く。
「総員、左の平野に行軍だ。執行騎士と帝国にやり合ってもらう。」
そうメネが命令すると、王国兵達は平野へ走って行く。メネも同行し平野部へ走る。
(ひとまず帝国があの厄災騎士とやりあって消耗させてくれれば、少なくとも撃破の機会くらいは訪れてくれるはず…!)
~~~
ミレス帝国大隊と合流・合併した兵団。
アメリナはその光景を見るとおもわず子供騙しでもを食らったような、情けない声を上げる。
「え?」
目の前にいた3万ほどの王国の軍勢が唐突に一斉に平野へ逃れて行く。
きっと理由があっての行為なのだろう。
アメリナはそう考え後ろに立つ大隊メンバーや兵団員達に
「勝鬨はとっておけ、まだ終わらんぞ。」
と言った。
目の前の平野が空き、兵士も死体もない本来の美しい自然の草原の本来の姿の一部がアメリナ達の目に映るはずだったが、目に見えたのはただの珍しい地獄だった。
灰塗れの帝国、王国兵達の死体。
「何が…一体…」
アメリナの横に立っていたデイビッドはそう思わず呟きにならない呟きを発した。
すると、その草原の向こう。
緩やかに丘のように盛り上がっている草原の頂に立つ一人の執行騎士、ジンの姿が見えた。
ジンは丘の上から仁王立ちでこちらを見つめていた。
ジンは口を開く。
「お前があの竜人か。」
_____________________________________________
あとちょっとでコーラル編終わります
晴れて行く灰の嵐、鼻腔から消え去り始めた煤と血の匂い、顕になって行く灰を被った敵兵や戦友達の亡骸とその上に立つ同じく灰を被っている傷だらけの数少ない仲間や敵兵士たちの姿。
右頬に付けられた小さな横一文字の切り傷から滴り落ちようと溢れでた血を拭い、ジャックは立ち上がりながら辺りを見回した。
ジャックを庇い降り注ぐロングソードを一身に浴び、誰かもわからないほどになって死んだ騎兵隊の戦友達と、愛馬達。
「こげんけ死み方…あんまりじゃろ…」
その惨状を目にして、ジャックはサーベルを握る右手に力を込めた。戦場に立つ以上、死は誰にでも訪れる。ただ、彼らに訪れるその死は少し惨すぎた。
そして、ジャックは丘の上方に目を向ける。
___鎖骨の上から脇まで貫通した灰のロングソード。ダラダラとそれを伝って地面へ流れる血は膝の下で水たまりを作って、徐々に大きくなっている。
その跪く流血者は、ロビンだった。
「ロ、ロビン!」
ジャックはロビンに駆け寄り、ぐったりと俯き反応のないロビンの鎖骨の上に突き刺さる灰のロングソードを引き抜こうと、それに触れるが 触れた途端にそれはただの灰となって形を崩し、風に乗り散って行った。
ジャックは屈んで、ロビンの両肩を掴み揺さぶりながらに語りかける。
「ロビン、ロビン!返事をせんか!」
俯いたままロビンはうんともすんとも言わない。ジャックは歯を食いしばりながら右拳を地面に叩きつけた。鈍く拳に響く痛みに、ジャックは歯を食いしばる。
ジャックは、その痛みの余韻に浸りながらゆっくりと立ち上がった。
幼い頃から共に過ごしてきた侵入とも呼べる存在を無くした。ただその事実から来る感情がゆっくりと、じわりと心を満たして行く。
怒りでも、憎しみでも、悲しみでもなんでも無いような、それら全てが合わさったような感情。
「ここで…殺さんな。」
ジャックは、そう呟いた。
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メネの元へ恐れ慄き逃げ仰せた王国兵達は戦慄した。逃げた先、友兵達のすぐ向こうに文字通りの地獄が広がっている。
灰を被り、身体中に穴が空き更には身体の一部を欠損し絶命した友軍達と帝国兵どもの山があったからだ。
メネはその逃げ仰せ、戦慄する王国兵の一人に問う。
「…バーテイル大尉補佐は、どうなったんだい?」
王国兵は息を呑み、ただ一言
「首を…刎ねられ…ました…」
そう言った。
メネはそれを聞く兜を脱ぎ右手で眉間を摘む。
状況は混乱を極めていた。
唐突に現れた3人目の執行騎士、灰刀のジン。
増援に来る気配も、生きているのかも怪しい執行騎士の移し身のドーベル。
ジンによる無差別攻撃と、それに巻き込まれた部下。
多大な損害がでたのか、首を刎ねられ死亡するバーテイルとそれに矛盾する大量の敗走兵。
「もう何がなんだかわからないな。」
そう呟いた。
ともあれ、ひとまずこの状況からの脱却が必須である。トルミアの執行騎士の無差別攻撃がある以上トルミアが友軍というような扱いは今はできない。そして、上からはトルミア下からは帝国というかなりまずい状況となってしまった。
(帝国とやり合っても執行騎士にあとから纏めて片付けられるだろうし、あの執行騎士に現状の戦力じゃ勝てるわけが無いし…)
メネはしばらく考えた後、口を開く。
「総員、左の平野に行軍だ。執行騎士と帝国にやり合ってもらう。」
そうメネが命令すると、王国兵達は平野へ走って行く。メネも同行し平野部へ走る。
(ひとまず帝国があの厄災騎士とやりあって消耗させてくれれば、少なくとも撃破の機会くらいは訪れてくれるはず…!)
~~~
ミレス帝国大隊と合流・合併した兵団。
アメリナはその光景を見るとおもわず子供騙しでもを食らったような、情けない声を上げる。
「え?」
目の前にいた3万ほどの王国の軍勢が唐突に一斉に平野へ逃れて行く。
きっと理由があっての行為なのだろう。
アメリナはそう考え後ろに立つ大隊メンバーや兵団員達に
「勝鬨はとっておけ、まだ終わらんぞ。」
と言った。
目の前の平野が空き、兵士も死体もない本来の美しい自然の草原の本来の姿の一部がアメリナ達の目に映るはずだったが、目に見えたのはただの珍しい地獄だった。
灰塗れの帝国、王国兵達の死体。
「何が…一体…」
アメリナの横に立っていたデイビッドはそう思わず呟きにならない呟きを発した。
すると、その草原の向こう。
緩やかに丘のように盛り上がっている草原の頂に立つ一人の執行騎士、ジンの姿が見えた。
ジンは丘の上から仁王立ちでこちらを見つめていた。
ジンは口を開く。
「お前があの竜人か。」
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あとちょっとでコーラル編終わります
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