The war of searching

黒縁めがね

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コーラス遺跡都市防略

第49話コーラル防略、28/百足/中止/帰還者

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___大地が揺れる。
ヨーストの指示通りデイビッド達は団長を連れて逃げていた。
デイビッドは団長の両足を両脇に抱えて、ハイミルナンは両腕を両脇に抱えてコーラル都市へ走る。突如揺れた大地にデイビッド達はただひたすらに困惑し驚愕し恐怖していた。
「や、やばい、デイビッド走って!」
「もう走ってるよ!」
すると、大地に少しずつ亀裂が入り始めた。その異常事態に二人は声を荒げ、足を早める。コーラル遺跡都市の門まではあと500mと言った所。すると後方から二つ、声が聞こえた。
「で、デイビッドぉ!ハイミルナン!助けてぇぇ!」
「口より足を動かしやんせ!」
戦斧を右手に持ったヨーストとシミターと長槍を握るジャックだった。
走りながら情けない声をあげるヨーストと激励を飛ばすジャックの構図にこんな状況でありながら口が緩みかけるがデイビッドは前に向きなおしさらに足を早める。コーラル遺跡都市まで残り350m
と言った所で、地面に入っていた亀裂は崩壊し震源地の草原の中心から地中の底へ落ちて行く。草原のど真ん中には大きな穴が空いていた。
すると___
「なんじゃあれぇ!?」


___巨大な鉄の百足が、その姿を表した。

~~~

「これ、夢でしょ…?」
メネはその光景に思わずそう呟く。
茜色に焼ける空にその巨体の端を穿ち、哭する鉄の甲殻を持つ百足。メネの周りにいた王国兵たちもまた、その化け物の姿に方や恐怖し、方や恐怖していた。
メネは落ち着きを取り戻すべく深呼吸を1度すると、考え込んだ。

(どうしよう!?どうやって逃げよう!?どうやって生き残ればいいの!?こんな化け物居たなんて聞いてない!?やっぱり夢だよね、コレェ!?)
どうやら深呼吸の意味は無かったようだ。
顔にこそ出していないが、メネはとんでもない程の恐怖と絶望をその鉄の百足に抱いていた。
周りの兵士達は思わず恐れ慄き少しずつ敗走し始めている。鉄の百足はゆっくりとその体を左右に揺らしながらメネはのいる場所とは反対側の雑木林の中へゆっくりと倒れた。百足は体を前へくねらせ地面へその巨体を地面の中へ潜り込ませている。その巨体の通った後には、何も残らなかった。戦友達の亡骸も、灰に塗れた肉塊も、何もかも。姿を消した百足の体形に沿った抉られた方をした大地、そして草原の中央に空いた大穴がメネの目には映る。
「山崩しは、中止かなぁ…」
声を震わせ半泣きになりながらメネはそう呟いた。

~~~

コーラル遺跡都市南門斜塔。
「…何が、起きてるんだ…!」
ラーゴは先程の鉄の百足の出現と消失の連続に思わずそう呟いた。
横にいるレワイドもまた、固唾を飲み状況を理解しようと努力していた。
たが、全くと言っていいほど理解はできない。
唐突に現れた灰の翼、消失した兵団の生き残りとミレス軍大隊の兵士達…
そして再び現れ、消失した灰の翼、そして煙幕。その後に現れた鉄の百足。どれも人智を越えた超常現象。とてもじゃないが、現実とは思えない。
「一先ず、街のやつらを遺跡省宿舎に避難させてくる!」
レワイドはそう言いながら駆け足で防壁を降りていった。ラーゴはレワイドの方へ振り返る事なくその言葉に頷き、ただ唖然として荒れた草原を見つめていた。

「お…さん…ラー…先輩…」
「…!、な、なんだ?」
ラーゴは薄っすらと何処からか聞こえる声に気がついたようで、辺りを見回す。が、何処にも姿はなかった。
「こ…で…こ…!」
ラーゴはそれを聞くと防壁南門下を見下ろすと、負傷したであろうアメリナ団長を地面に寝かせながらこちらに手を振るデイビッドとその横で地面にへたり込みながらジャックと話し合うハイミルナンとヨーストの姿が見える。するとラーゴは斜塔の中を見回した。
「…縄が…ない。」
縄がないことに気がつくと、ラーゴは振り返り防壁内側の斜塔の塀に近づきまだ駆け降りている最中のレワイドに声を掛ける。
「…レワイド、アルチンゲールさん達も呼んできてくれないか!ルーキーズと団長と…あとなんか知らない人が生き残っていた!」
「おうまじか!」
予想外の帰還者達に少し明るくなった二人。
ラーゴは踵を返し斜塔の中の門のハンドルを左に回す。すると門が軋むような音を立ててゆっくりと開き始めた。
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